疑念
息が切れてきた。
足が熱い。
道行く者が何事かと俺を見ている。
あれ?
何で俺、走ってるんだっけ?
【未来演算】で出した未来は、変えられない。
今までだってそうだった。
そう、だった・・・っけ?
一瞬、足が止まった。
思考が止まる。瞬きも出来ない。
『どうせ無理だ』
演算をした訳でもないのに、勝手に決め付ける。
今はそんな暇はない!
ハッと我に返る。
今はただ走るしかない!
―――――――――――――――
やっと着いた。
もう走れない。せめて学校の体育だけでも真面目に取り組むべきだった。
ゲームセンターは・・・この通り沿いだ。
ふと、あの日の猫を思い出した。
臓物を撒き散らしていたあの光景を、それを埋めた日を。
「み、みのる・・・」
息を切らしながら店の裏路地へ入る。
「あぁ…ああぁぁあぁ!!」
どんな感情の元に叫んだのだろう。
そこには壁にもたれる様に倒れるみのるがいた。
顔に酷い痣。破られた服。
そして足があらぬ方向に曲がっている。
「みのる!!」
側へ駆け寄る。
ボロボロの彼に。
「あ?あぁ、セラか…」
「大丈夫、じゃ、無いよな」
何があった、とは聞けなかった。
理由を知っている俺には、かける言葉が無い。
「あぁ、救急を呼んでくれると、助かる」
「わ、わかった!待ってろ!」
俺は携帯で救急車を呼んだ。
その際後ろで、みのるが鼻をすする音を、俺は聞き逃さなかった。
わかってただろ―――?
・・・。
違うな、従ったんだろ―――?
・・・。
だから、足を止めたんだろ―――?
・・・っ!!
――――――――――――
「ち、違う!!」
病室で叫んだ。
そこには疑うように、恨むように。
俺を睨むみのるがいた。




