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リトリビューション  作者: セスラ
【三章】終りの始まり
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変化の代償


翌日、店長にシフトを増やしてもらえた。

やはり昨日の影響で未来が変わったらしい。



未来は変えられる。

それだけでも、俺にとっては希望になった。


あの頃のような、あの時のような。

あんな思いは、もうしたくない。





これがズレの始まりだったのかもしれないね―――。

一日先ではなく、全て、死ぬまでの未来を―――。

君は演算するべきだったんだよ―――。



――――――――――――――――――――


 (3日後)

母はあれから無気力気味だ。

影を感じる表情しか見なくなった。


俺が支えてあげなきゃ。

今までの分、俺が。



その為に今日もバイトに向かう。

昼からなので午前は空いている。


「また来てしまった」

病院に向かって呟く。

泣きじゃくってから、アキさんに会っていない。

どんな顔をして会えばいいのかわからない。


それでも彼女に会いたい、そう思った。



受付を通り、病室へ向かう。

途中看護師と簡単な挨拶を交わした。

そして扉を開けた先に、退屈そうな彼女が居た。


何故独りの時だけ、あんな顔でいるのだろう。

今にも消えてしまいそうな、弱々しい姿で。


「また来ちゃいました」

「あ!セラくん!」

一転して明るくなる。

もしかして無理に笑っているのだろうか。


「先日はありがとうございました」

「いいのいいの、元気そうで何より」

嬉しそうな顔。本心に思えるが、その裏を俺は知らない。

知ってはいけない。そんな気がした。


座るよう促されたので、ベッドの横に座る。

何気ない会話。

病院食が不味いとか、中庭は日向ぼっこに最適とか。

こんなやりとりが楽しかった。



「アキさんって強いですよね、とても」

思っていた事をぶつけてみた。

「え?そうかな?」

俺から見たアキさんはとても強い。

現実を知り尚、生きているのだから。


「でも握力20も無いよ?」

「それ本当ですか・・・?」

そうじゃない、そうじゃないけれど、非力ってレベルじゃないだろう。

小学生くらいじゃないか。


「それは・・弱いですね」

「そ!私はか弱いの」


「それでも、強いんです」

「えぇ?よくわかんないよ~」

首を傾げる仕草をする。

幼げな雰囲気も感じられる。


「俺はそれに助けられたんですよ」

「そうなの?なら、また助けてあげる」

「その時は是非お願いします」

お姉さんに任せなさい。と言わんばかりのドヤ顔だ。

どこまでも不思議な人だな。


「そろそろバイトなんで、行きますね」

「そう、頑張ってね」

寂しそうに別れを告げる。

許されるのなら、もう少しだけ・・・。




外はセミが現実を知らせる如く鳴いている。

それが暑さに拍車をかけているようだ。



―――カチッ。

またか、未来が変わった。

今度は何が変わっ・・・。



『原みのるが足に大怪我を負う』



え・・・?

みのるが、怪我?あの部活馬鹿が?

何でだ。原因は。


『不良に絡まれ喧嘩が起こる』


何だよそれ・・・。

じ、時間は。何処で。


『本日12時14分、商店街のゲームセンター裏』


只今11時46分。

ダメだ。病院からじゃ30分はかかる。

間に合わない。

それに、バイトが。



「ふざけんな・・・」


友人とバイトを天秤にかけている。

そんな必要もないだろう。


どっちが大切かなんて分かっているだろう。




走れ、全力で。

間に合わないかもしれない。


でも、走るんだ。



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