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リトリビューション  作者: セスラ
【二章】許された幸せ
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当たり前に気づけ

「あの・・すみませんでした」

「いいよ、それより何があったの?」



やってしまった。

高校生にもなって大泣きだなんて。

しかも女性の胸を借りて泣くなんて。


それから俺は、アキさんに事の諸諸(モロモロ)を説明した。


父親がいないこと。

母が仕事をクビになったこと。

バイトの相談も無意味だったこと。



「そっか、大変ね。私は当事者じゃないから知ったことは言えないけれど。きっと君には相当ツラい事だったのね。」


上手だな。

俺が逆上しないような言葉だ。


「はい…。とてもツラかったです」

「私にはわからないことかな。お母さんいないし。お父さんにも、ずっと会ってないし」


そういえばアキさんの父は生きてるんだよな。

それなのにずっと会ってないんだっけ。


「すみません、なんか自分の事ばかり」

「ち、違うよ!不幸自慢じゃないの!ただ、ちょっとだけ羨ましいって思っちゃって。私こそごめんね」



そうだよな。

この痛みも、家族がいるから感じられるんだよな。


贅沢な悩み、だったのかな。


「アハハッ!そうですね。そうでした」

「何が?」

「いえ、俺の個人的な事です」


知っていたはずなのに。

忘れていた。



「ありがとうございます。話したら楽になりました」

「そう。なら、よかった」


「また、送って行きましょうか?」

「そうね。お願いするわ」



まだ俺は、前を向いていられそうだ。



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