感情の容量
翌日、朝からバイトへ向かう。
気分が沈む。
出来れば行きたくなかった。
昨夜の演算で結果は知っている。
それでも店長にシフトの件を相談してみた。
「んー…なるべく考慮してみるよ」
「よろしくお願いします」
やはりダメだ。
大人は誤魔化すのだけは上手い。
嘘をつくのは下手なくせに。
なんでだ。
何でなんだ。
未来は分かっているのに。
なんで俺は、何も出来ないんだ・・・。
バイトを終え、ふらふらした足取りで家に向かう。
途中にある公園がふと目に入った。
ここに入ったら、『また』救いがあるだろうか。
そんな期待をしても仕方がないのに。
アキさんと出会ったブランコに向かう。
ここで俺は、淡い希望を拾ったんだよな。
「くそ・・・」
様々な感情が沸き上がる。
怒り、悲しみ、羞恥心が。
「クソがッ!!!」
「どうしたの…?」
振り返ると、そこにはアキさんが立っていた。
驚いた顔で俺を見ている。
混乱で言葉が出ない。
いくら演算の適応外と言っても、これは予測できないだろう。
「いえ、その・・・」
何と言えばいいのかわからない。
「何でも、ないです」
弱虫。何でもない訳ないのに。
「なら、なんで泣いてるの?」
言われて気づいた。
俺の頬を伝い、涙が流れている。
その瞬間、抑えていた感情が溢れ出した。
泣いた。ただひたすらに泣いた。
子どもの様に泣いた。
その間、アキさんは俺を抱きしめ、ずっと「大丈夫よ」と、声をかけ続けてくれた。




