19/26
後遺症
「今日は来てくれてありがとね」
心なしか寂しそうにアキさんが言った。
「いえ、俺も楽しかったですよ」
「また…来てくれる?」
今度は本当に寂しそうに見えた。
「まぁ、気が向いたら」
まだ素直にはなれないな。
「そう言って来てくれたじゃない」
悪戯に笑ってみせる。
「・・・」
アキさんは俺の心を見透かされているようだ。
やっぱり敵わないな。
それから短く言葉を交わし、病室を後にする。
途中案内してくれた看護婦に遭遇した。
「あら、お帰り?また来てあげてね」
「はい、また来ます」
どうやらアキさんのお見舞いに来る人は全くいないようだ。
「結構遅くなっちゃったな」
昼過ぎに来たはずなのに、もう日が沈みかけている。
随分と長居してしまったようだ。
『―――――』
あれ?
まだ演算が働いていない。
彼女といた時間が長かったからか?
「まぁいいか」
時間が経てば戻るだろう。
それに今は演算をする気分じゃない。
次はいつ会おうか。
確か明後日はバイトの無い日だったな。




