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リトリビューション  作者: セスラ
【二章】許された幸せ
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思考を放棄して


「君が余計な事言うから~」

疲れ果てた声で俺にあたってきた。


「すみません・・・」

「まぁいつもの事だけどね」

穏やかに笑顔を浮かべる。


「えと、あきさん、でしたっけ」

「あれ?名前言ったっけ?」

不思議そうに俺を見つめてくる。

とても綺麗で、澄んだ目だ。


「ここに来る途中に聞きました」

「そっか、君の名前、聞いてもいい?」


「瀬良です。日野、セラ」

「セラ君か、かっこいい名前ね」


確かに珍しいかもしれない。

ただカッコイイと言われたのは初めてだ。


「私は宮本あき、アキって呼んで」

「じゃあ・・・アキさん」

「アキって呼んで!」


呼び捨てにしろって言うのか。

人懐っこいのだろうか。


「いや、たぶん自分の方が年下なんで・・」

「あれ?そうなのかな?」


アキさんは現在17歳。俺の一つ上だ。

もう何年も入院し続けているらしい。


「なのでアキさんで」

「えぇー、呼び捨てでいいのに」


不満そうな顔をしている。

やはり幼いのか、大人びているのかわからない。


「でも本当に来てくれるなんて思わなかったよ」

「迷惑、でしたか?」


胸が少し痛い。

自分の我がままで迷惑したのだろうか。


「え、嬉しかったよ?」


ずっと一人で退屈していた。

病気のせいで学校もロクに行けなかった。

そんな中、自分に会いに来てくれるのは嬉しいらしい。


他愛のない会話。

とても死ぬ人との会話とは思えない。



彼女との会話は予測できない。

しかし恐怖心はそれほどない。


俺は未来を捨てた人を見下しているのだろうか。

それで安心感を覚えているのだろうか。



今は何でもいい。

未来に恐怖しないでいられる事が嬉しい。


いつか、誰とでもこんな風に話せるのだろうか。



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