愛、故に
「こんな時間まで何やってたの!!」
帰宅するなり怒鳴られた。
「バイトでちょっと・・」
見知らぬ女に菓子パン買ってました。何て言えない。
それに嘘はついていない。
「それならそれで連絡しなさい!」
説教されているのに、心が温かい。
俺を想ってくれる人。
そんな人、母さんくらいだ。
「何笑ってるの!」
顔に出てしまったか。
火に油を注ぐつもりはなかったけど。
「俺を想ってくれてるのが、なんだか嬉しくて」
素直にぶつかる。それが吉だ。
「何言ってんのこの子は・・・」
「疲れた」
母の説教は1時間近く続いた。
もう明日の演算をする気力がない。
最低限だけ暗算してしまおう。
『自宅にて平凡な一日を過ごす』
明日はバイトも休みだ。
計算する必要もなかったかな。
「そっか、明日はやることもないのか」
もう寝よう、疲労が限界に達した。
翌朝、説教の疲れを消し去るほどによく眠れた。
一日オフは久しぶりだな。二度寝でもしようか。
「いや、流石にもったいないな」
簡単な朝食を済ませ、一息つき終わった。
今日は家でゆっくりしよう。そう思ったが。
(私、ここの405号室にいるの)
昨日の彼女の言葉が頭をよぎる。
―――カチッ。
『不確定』
「また変わった」
彼女を通した未来はやはり不確定。
わからない未来が怖い。
それなのに今は、あの人にもう一度会いたい。
俺の人生は俺が決めたい。
彼女はその鍵になるかもしれない。
どうせ無理だ―――。
そうかもしれない。
あの女も死ぬ―――。
そうかもしれない。
また、終わるのか―――。
そうかもしれない。
でも、俺はもう一度、俺の人生と向き合いたいんだ。
好きにしなよー――。




