これが彼の日常
Q.あなたは未来を知ることができたら、知りますか?
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温かい。春の日差しとはここまで気持ちのよいものだっただろうか。
しかし、同時に非常に欝だ。春ということはクラス替え。また一から人間関係を築いていかなければならない。
「わかってても、やっぱ面倒だよな」
俺は日野 瀬良。ごく平凡な高校2年男子だ。
「そんな毎日も案外気に入ってるんだけど」
今日のスケジュールはわかっている。
近所の野良猫は今日は駄菓子屋の前で朝日を浴びている。
公園ではゲートボールを嗜む老人会がいて、今回は森じいさんが1位を取る。
そして昼休みにふざけ合った男たちが勢い余って窓ガラスを割り、体育科の教師に見つかりお叱りを受ける。
わかりきった日常、そんなわかりきった日々が流れていく。
そんな毎日が繰り返される。
「そう、いつも通りだ」
退屈しのぎについ口から漏れてしまった。
「何がいつも通りなんだ?」
「なんでもねぇよ」
後ろから走ってきた友人に聞かれてしまったらしい。
「相変わらず退屈そうな顔してんなぁ、暇なら部活でもしろよ」
「やだよ面倒くさい」
こいつは原 みのる(ハラ ミノル)。同い年のサッカー部エース。
「熱血、温かいが暑いに変わりそうだ」
「んだとー、情熱は大切だぜ!」
「そういうところが暑苦しいんだよ」
これもいつも通り。
そのまま猫を見つけ、昼休みにガラスが割れ、下校中に森じいさんにゲートボールで1位を取ったと嬉しそうに自慢された。
全部、予定通りに今日が終わった。




