第02話 もっといっぱいいっぱいお勉強しないと!
アレク君は思いました。いったいなにがいけなかったんだろう?
泥だらけになって、すっかりしょげて帰ってきたアレク君は、メイドの人に聞きました。
「あのね、ぼく、今日ふられちゃったんだ」
「あら、ぼっちゃん、それはそれは」
メイドの人は、もう貫禄のでてきた中年の女性でしたが、アレク君を本当に息子のように可愛がっていたので、お話を聞いてあげることにしました。
「まあ、ぼっちゃん、そのエルフの女性に年齢を聞いたのですか?」
「うん。だって、ぼくが大人になったときに、お姉さんが何才か知りたかったんだもん」
メイドの人は、きちんとアレク君に教えてあげました。
「ぼっちゃん、女の人に年齢を聞いてはいけませんよ」
なるほど。エルフの人に年齢を聞いてはいけないのか。
アレク君は、小さな胸にしっかりと教訓を刻みこみました。
もう失敗しないぞ。
アレク君は、とても好奇心旺盛な性格だったので、お父さんに聞いてみることにしました。お父さんはエルフではないから、聞いてもいいはずです。
「お父さん、エルフの人って何才ぐらいなの?」
お父さんは王宮学者だったので、子供の質問にいい加減な答えを返したりはしません。正確でない事実は答えたくなかったのです。
「正確にはわかっておらん。200年程度という説もあれば、永遠という説もある。何しろエルフは大陸全土に散らばっておるのでな、調査もままならんのじゃ」
「永遠!えいえん、ってずっと、ってこと?」
「そう。太陽が燃え尽き、神々の恩恵がこの大地から消えるまで、ずっと、だ」
アレク君は衝撃を受けました。
あのアルお姉さんも、きっと父上よりもお祖母上よりも、ずっと、ずっと年上だといいうことが小さな頭でもわかったからです。
もう二度と、こんな思いをするものか。
そのためには、いっぱい、いっぱいお勉強しなきゃ。
王きゅう学しゃさんのお父さんよりも、ずっとずっとお勉強するんだ。
アレク君は、小さな胸に大きな決意を固めるのでした。
そして、この決意が後の科学的エルフ年齢測定法である「アレクスケール」を生む切欠となるのです。
アレク君は、以降、試行錯誤してエルフさんの年齢を測ろうとすることになります。