第01話 エルフさん、お姉さんは何才ですか?
王宮学者の息子アレクセイ君(8才)は、街でお菓子を買うのが大好きでした。
アレク君のお気に入りのお店は、何といってもエルフのハチミツを使った甘い甘いクッキーです。レンなんとか、と書いてありましたがアレク君は、まだエルフ文字がよく読めないのです。
アレク君の、もう一つのお気に入りは、店員のエルフのお姉さん。優しくて、黒色の髪がキラキラしていて、なんだかいい匂いがするのです。
アルウェなんとかさんという名前らしいのですが、アレク君はもっぱら「アルお姉さん」と呼んでいます。
でも、今日のアレク君は違いました。
小さな胸に、強い決意を秘めて「アルお姉さん」の元を訪ねたのです。
「アルお姉さん!」アル君は、小さな花束を持って訪ねてきました。
「あら、今日は随分とお洒落さんね、アレク君」
「あの、あの、ええと、アルお姉さん!ぼくと結婚してください!!」
「あら」
アルお姉さんは、嬉しそうにほほ笑んで、言いました。
「ありがとう、アル君。でも、お姉さんとはちょっと年が違うでしょ?もっと大きくなったら、もう一回言ってね?」
「でも、でも・・・」アレク君は焦っていました。今、結婚しないとアルお姉さんは、きっと別の人と結婚してしまう。だって、こんなに綺麗なんだもの。
「うん・・・わかった!大きくなったら、アルお姉さん結婚してね!ぼく、あと7年したら、ぼくも大人だから!」
「ええ、そうね。大人になるのを待ってるわね」
ここで終わっていれば、子供時代の心温まる初恋のお話で終わったことでしょう。
ああ、でも、アレク君は、まだ本当に子どもだったのです。
まだ、女の人の本当の気持ちなど、わかろうとしたことがなかったのです。
アレク君は、なにげなく、本当に素直な気持ちで聞いてしまったのです。
「あと7年したら、お姉さんは何才になるの?」
その後のことを、アレク君はよく憶えていません。
エルフのお姉さんの魔法で、お店から叩き出されて道を転げ、通りの反対の家の壁にぶつかって目を回してしまったからです。
確かなのは、エルフに年齢を聞いてはいけない、ということと、アルお姉さんには完璧に振られてしまったらしい、ということでした。
何となく思いついた話。あんまり長く続きません。感想もらえると嬉しいです