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2 話紙ヒコーキ

俺のクラスでは紙ヒコーキがブームになっている。

高3の夏に何やってんだって他クラスの友達は言うけど、息抜きも必要だと俺達は止めない。

休み時間や放課後になるといつも誰からか飛ばし始める。そのうち男女交ざって競争したり、より遠くまで飛ぶ折り方を研究したり……結構盛り上がった。


その日の昼休み、俺が飛ばした紙ヒコーキが変な方向へ飛んで行き、開いていた窓から外へ出ていってしまった。

「へたくそー。」

クラスの奴らが笑うなか、渋々下まで取りに行った。

本当のところ、俺は紙ヒコーキが楽しいとは思っていなかった。ただ、クラスの全員がやっていて逃げられなかったから俺も交ざっていただけ。だから紙ヒコーキが外へ出て、あの場から抜け出せたのはよかった。

中庭に出て探していると、ベンチに座っていた女子生徒が俺の紙ヒコーキを持っていた。

近づいて見てみると、俺が密かに気になっている隣のクラスの子だった。凛といていて、可愛いというよりは綺麗って言葉の方が近い、そんな子。


「ごめん。それ、俺の。」

ガキみてぇ、とか思われたらどうしよう…。

その子は俺と目を合わせようとはせずに紙ヒコーキを返してくれた。

それを受けとって立ち去ろうとすると突然声をかけられた。


「そんなに無理しなくていいんじゃない?」


「え……?」

思わず振り返るとさっきは合わなかった目がしっかりと合っている。

「クラスの人達に合わせて無理、してたでしょ?」

「なん…で……?」

「見てたから。あなたのこと。」

見てた?

俺を?

何も返さない俺に彼女はもう1度言った。


「無理しなくていいよ。」


俺はその言葉を誰かから言われるのを待っていたのかもしれない。

それほど彼女の言葉は俺の中にすとん、と落ちてきた。


それから俺は毎日のように紙ヒコーキを外に飛ばし、拾いに行く振りをして彼女に会うようになった。

彼女はそんな俺を温かく迎えてくれる。


まだこの想いは言えないけど、いつか言う時のために今彼女との距離を少しでも縮めておこう。



俺は今日も紙ヒコーキを飛ばす。

俺の想いも届くように――――


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