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不良少女の生きた道 菊の花のしおり

11話です。

有り難うございます。

何かがキレる音と共に雷が落ちた。

家内の光も街灯も信号も全ての光が消え失せた。

走っていた車までもゆっくりと止まり始め動かなくなり。

次々とライトの光が消えた。


そして辺り一面は暗闇になり。

辺りからは暗闇の恐怖で悲鳴があがっていた。



「「「「「「うわぁっーーー!?」」」」」」


「「「「「「きゃぁっーーー!?」」」」」」


「な、何も見えないーー!?」


「何かキレる音したけど!?停電かっーー!?」


「車のライト消えたぞ可笑しいだろ!?」


「おかあさん怖いよーー!?なにも見えないよーー!?」


「離れたらダメよ!?危ないからっ!?」


辺りがそんな悲鳴で埋め尽くされている中。

少女を抱き上げていた変態君は・・・。


「うほおおぉぉ暗闇!?悲鳴やばすーーー!?せ、世界滅ぶのかな!?だ、だとしたら・・・ゴクリ。世紀末キタこれーーー!?ロリを好き放題できる!?うほおぉーー!?」


変態君は暗闇で邪な考えを思い付き。

戯言を口走っていた。


「くんか!?くんか!?して良い!?

暗いからナニしても良いよね!?良いよね!?するよ?!するよ?!ぶひひ!?」


そして変態君は抱き上げていた少女の体に顔を戻し。

暗闇の中で腕に伝わってくる柔らかい感触を頼りに。

眼前にある少女の体に顔を近付けて行く。


「・・・1」


(ああ・・・神様・・・どうしてこんな。吐き気がする奴らばかりが居る、世界を作ったんだ……)



「ぶひ?、はあ、はあ、いち?、何の数?あっ」


変態君は少女が口に出した数が気になり。

少女の体に接近して行く顔を止め少女の顔を見上げる。


変態君は少女が「2秒以内に私を離せ」言った言葉を聞いてはいなかった・・・。


そして同時にカウントが終る。


「・・・2、お前の顔が潰れるカウントだ。潰れて無くなれ、ブタヤロウ」


(なあ・・・神様・・・私がこの腐った世界に生まれ落ちてからというもの、私にとってはこの世界は常に最悪で、地獄だったよ)



カウントが終わった瞬間。

少女の片方の碧眼が暗闇の中でも分かる位、ギラギラと光りだし。

その光は一筋の蒼い線を描き揺れ動き始めた。


「その目、何処かでみっぎゃぴひっ!?ひっ!?、あひっ!?、ぶっぴ!?、ひっぶっぎひっ!?」


そして突然変態君の顔に小さい何かが突き刺さり。

頭がまるで携帯のバイブの様にブレた。

蒼い一筋の線が右左に揺れ動く度に、変態君の頭が揺れまくる。



「ブブヒっぶぶ!?ブッっ!?ひブれ!?ブゴゴっ!?」


「・・・・」


(それとも・・・そんな世界を招いたのが、私の甘さ、結果だと言うのならそんな甘さは捨ててやる)


その小さい何かは少女の拳だった。

少女は小さな拳を振り上げ。

変態君の顔にトンでもない速さで、何度も何度も振り落としていた。

その落とされた拳は変態君の顔面に、めり込む程の勢いで突き刺さり血が飛びはね。

少女を赤く赤く染めていく・・・。


(・・・・私が虐めに対して無関心でいなければ。あいつらを無視していなければ、きっと子犬は連れて行かれる事はなかったんだ)


「・・・・」


「むごぶっ!?」


拳を変態君の顔にまた一段と強く殴りつける。



「・・・・だから捨ててやる、その甘さをしゃぶり捨てて、これからは誰であろうが。私にとっての最悪な奴ら、邪魔な奴らはこの私がぶっ潰してやるよ」



何かが切れた音と共に。少女の胸の奥底に眠っていた芽に花が咲いていた。


其は真っ赤な真っ赤な深紅の花、その花の花言葉は怒りだった。


周りの考え無しの優しさが雑音が少女を傷付けた。悪意が有る者達が優しい少女を傷付けた。亡き親が親戚が家庭が学校が先生が同級生が、知らない誰かが。有りとあらゆる事が出来事が矛盾が少女の限界だった心を傷付けた。この腐った素晴らしき世界が少女を傷付けた。


そして、表に出て来た感情の花はそれに怒り狂い咲き乱れ。少女を・・・ブチ切れさせた。


少女は初めての怒りを感情を、拳に変え、変態君の顔に。目で追えない速さで拳を叩き込む。


「むっご!ひぃぶっ!?ぎゃいっ!?はぶぶっ!?ああひぃっ!?」


「・・・その臭い口で喚くな、耳障りな雑音を囀ずるな。離せとこの私は言ったぞ?離さなかった邪魔をした貴様が悪いよなあぁ?。今の私にとっての最悪はお前で、お前が私に招いた最悪だ。だから、潰れろ、何処までも何処までもぶっ潰れろ。」



少女は怒りながら、そう冷たく罵り。

変態君の顔を殴り続けて行く。



そして、次第に変態君は、生命本能が働いたのか。命の危機を感じ手を離し、両膝を地面に突く。


「・・・潰れろ潰れろ潰れろ潰れろ潰れろ何処までも潰れろ潰れろ潰れろ潰れろ潰れろ潰っ・・・」


そこで少女の怒りの拳が止まる。


「げっぶぅっ!?、そ、そど目・・・ドSど女王様・・・ぶっふぅうっ・・」


変態君は顔を血だらけにしながらも、何処か恍惚とさせ。

その顔を自ら、地面に叩き付け失神する。


「・・・私に触れるからだ戯けが・・・」


少女は潰した変態君を睨み、そう言葉を吐き捨て。

残りの燻った怒りを、落ち着かせる様に夜空を見上げる。


「空暗いな……もうあの子犬は……ころさっ!」


言い掛けた言葉を飲み込み、顔を前に戻し、暗闇の先を見据える。


「そんなこと無い、きっと……大丈夫……」


少女は自分自身に言い聞かせる様に呟き。

暗闇の中をまた足を引きずり、フラフラと歩き出す。

歩き出したその後は、信号無視で轢かれそうになる様な、事も無く。

邪魔が入る事も無く、目的地にスムーズに歩んで行った。

まるで神様が少女の為に、信号も車も止めていたかの様に。


そして少女がこの場から居なくなり目的地にたどり着く頃に。

停電していた電気は戻り、止まっていた車も動き出し、全ての光が戻って行った。



そして凄くどうでも良い事だが。

失神し倒れていた変態君はと言うと。

光が戻った後に。

通行人が変態君を見て跳び驚き携帯で救急を呼び。

変態君は速やかに担架に乗せられ、病院に連れて行かれた。

その後、誰に顔面を・・元々崩壊していたが・・

崩壊するまで、殴られたのかと聞かれたが。

変態君は「ロリの女王様!?」と叫び狂い。

「あっ・・こいつヤバい」と思った親族に、精神病院に連れて行かれた。



そして・・・



保健所センター更衣室内では。

仕事が終わった作業員達が、服を着替え家に帰ろうとしていた。


「皆さん、お疲れ様でした、お先に失礼します」


「「「「「「「お疲れ様」」」」」」」


「ああ、お疲れ様でした。

・・・あっ、そうだ外で少し、待っててくれないか?」


「えっ?、何か仕事の用事でも、ありましたか?」


「嫌なに、仕事とかでは無いんだ、帰りに酒でも飲みに行かないか?。私が奢るからどうだね?」


「そんな・・・良いんですか・・・?」


「ああ、良いとも。たまには若者と、酒を飲むのも良い物だからな」


「……分かりましたそれでは外の街灯がある入口で待ってます、有難うございます班長」



若いお兄さんは、そうお礼を言い。

更衣室を後にした。


そして、若いお兄さんは、

仕事場の入り口に在る、街灯の下で年輩のおじさんを待っていた。


「・・・さっきまで雨と雷で凄かったけど止んだな。ううっ!、寒い寒い!、それにしても寒いな、天候変だし雪でも降るのかな?」



夜空を見上げる、若いお兄さん。


「あっ、本当に雪が・・・・んっ?」


若いお兄さんが、ふと目線を戻し、前を向くと。人影が見えた、その人影は歩いて、お兄さんの方へ近付いて来た。


「誰だ?、子供?金髪だな。外国人かな?」


ゆっくり近付いてくる、人影に目を凝らすお兄さん。


「・・・子犬・・・」


「え・・?」


「……子犬……いま……せんか……」


「日本語……?ゴメンよく聞こえなっ!?」


子供は、お兄さんの目の前にたどり着き。

街灯の光がその姿を、ハッキリと、お兄さんに見せる。泥と血だらけになった、片目を瞑った、少女アスカの姿を。


「・・・子犬いませんか・・・」


「こ、子犬?、って!?、そんな事より君!?、凄い怪我してるじゃないか!?」


「っ!?、そんな事じゃない!!、ふざけるな!?」


子犬を嫌・・家族をそんな事、呼ばわりされた事で。

思わずアスカは、お兄さんを睨み怒鳴る。


「うっ・・・ご、ごめん、でも、き、君、凄い怪我だよ?。その・・・血だらけだし、心配して言ったつもりなんだけど・・・?」


アスカの整った口からでた怒気と冷やかな目に気圧されながらも。お兄さんは、アスカのボロボロの姿を見て、心配をしての言葉を言い切る。


「怪我……?」


アスカはここに来て初めて、傷と血まみれになった自分の体に気付いた。


「……こんな怪我は大した事無い、明日には治ってる……それよりも答えて、ここに昨日、公園から、連れて来られた子犬いるよね?」


「大したこと無いって・・・」


「……私を余りイライラさせるな。早く子犬の事を答えろ・・・」


段々とお兄さんを睨む眼が、変態君を睨んだ時の物に代わらせ、その眼でお兄さんの次の言葉を急かすアスカ。


「こ、子犬?、こ、公園……子犬。あっ!?」


「っ!!、いるんだな!?、知ってるんだな?!、

私は、その子犬を、家族を迎えに来たんだ」


お兄さんに詰め寄り、足下から、お兄さんの顔を見上げるアスカ。


「うっ!?あっ、ああ、知ってる。だ、だけど・・・」


言葉に詰まる、若いお兄さん。



「待ちなさい、そこからは私が話そう」


年輩のおじさんが、お兄さんの肩に手を置いた。



「あっ、班長、聞いてたんですか・・・?」


「ああ、大体だが、聞かせてもらったよ」


「おじさんも、ここの人・・・?」



アスカは年輩のおじさんに、向き会い。おじさんの瞳を、強く睨み見る。


おじさんは少しギョッと驚くが、アスカの右眼を真っ直ぐに見据える。



「・・・・そうだよ、お嬢ちゃん、私はここの人でね。この建物内で班長を勤めている人だよ。それでお嬢ちゃんは此所に何しに来たのかな?。此所は、連れて来られて来た犬猫達を、保護して上げた後に。里親を探して送り出して上げる場所なんだけどね?」


優しい言葉で丁寧に、アスカに答えるおじさん。


「……そう、分かった。それなら、おじさんに聞くけど、昨日、公園から連れてこられた子犬……白い大きな犬知ってる?。中に保護して居るんだよね?。……逢わせてほしい。私はその子と一緒に家に帰りたいんだ」



ここで前に、アスカの感情に触れた話の続きと、アスカの体質を語ろう・・・


アスカは今まで会話と言う物を、録に出来ずに育って来た。

普通の家庭であれば、感情と言葉を覚えさせる為に。

親が愛情を持って子に語りかけ、会話を聞かせ覚えさせて行くが。

アスカにはその経験が無かった。


親戚は世間体を気にし、嫌々、仕方無く病院から、退院したアスカを引き取ったのだが、その後。親戚はアスカを家の一室に閉じ込めていたからだ。


アスカの親戚は仕事が多忙で、年単位で時折でしか、家に帰らない時もあった。

それで親戚は、家で住み込みで働いている世話係にアスカの世話を全て任せていた。


だが、その世話係は悪質な世話係だった。

世話係は親戚がめったに、家に帰らない事を良い事に、アスカを虐待していた。

泣けば口に布を巻き付け、足を掴み逆さにし。

乱暴にベビーベットに放り投げ黙らせた。


またある時は、親戚に小言を言われた世話係が。

己のストレスを発散をさせるために。

足でアスカを踏みつけ蹴飛ばした。

食事も時折与えもしなかった。


そんな虐待を毎日繰り返されていた、ある時、アスカに大怪我を負わせてしまった世話係は、アスカの、ある体質に気づいてしまう。

その体質を利用し虐待はもっと酷く、エグイ物えと変わった。


虐待は5年間、毎日飽きずに続いた。


その5年間は地獄だった。


アスカが1歳の時のある日常。

叩かれ蹴飛ばされた後は、今までは泣き叫ぶだけだった。

だが、今日は。アスカが入る部屋に。

世話係がチキチキと音を鳴らしながらカッターナイフを持ってきた。

世話係はアスカの腕を掴み、切り刻みながら。「痛い?」とアスカに聞いた。

「いだい」と生まれて初めて言葉がアスカの口から出た。

世話係はニッコリ笑った。そしてまたアスカは泣き叫んだ。


アスカが2歳の時のある日常。

アスカは閉じ込められていた、部屋から出て。

テレビを観ていた世話係に。

微々たる言葉でかすれた声で、「お・・なか・・すいた・・」と言葉を出した。

すると世話係は「出てくるな」と言い、煙草をアスカの背中に押し付けた。

そしてまた今日も、虐待が始まり口から、大量な血を吐き出した。


アスカが3歳の時のある日常。

閉じ込められている部屋でテレビを、ぼー、と眺めていたアスカ。

そのアスカの金髪を世話係が、背後から鷲掴み。

アスカの体を持ち上げ宙吊りにした。


「本当にあんたの、この髪も、不思議な髪だよね・・・?

ショート位まで切って1ヶ月位かな?、なのに、また腰まで伸びて・・・」


世話係はそう言い。髪をハサミで首筋辺りから大雑把に切った。

首からは血が滴り落ちた。


アスカが4歳の時のある日常。

時折家に帰ってくる親戚が、晩に家に帰って来た。

親戚は一度、自室に戻り。

物置から大きなダンボール出しを其を持って、アスカが入る部屋に入って来た。

そして親戚はダンボールを床に置き。

床で本を開き見ていた、アスカの目の前に座り。

ダンボールを開きながら親戚は喋りだした。


「・・・・」


「・・・・俺はな、・・・・元々お前の様な人殺しの子など。

引き取りたくは無かったんだ。だがな、

マスコミがお前を人殺しの母親から生まれた子、身寄りのない悲劇の子と、

騒ぎ立てた。それをニュースでも報道した、あのバカ共は・・・。

・・・それで親戚の俺に話が来た・・・。

身寄りがない子を引き取らないんですか・・・?とな・・・。ふさげた話だ・・・。殺された父親の親族にでも断られたなら。

諦めて、孤児施設にでも連れて行けば良いものを。

・・・それで、身寄りのないお前を親戚の俺が引き取るはめになった。

断れば俺の評判が落ちるのは目に見えていたからな。

・・・それからなお前の母親はー・・・・」


親戚は引き取った理由を、まだ4歳のアスカに話。

その後に、アスカの母親が人を殺めた事を聞かせた。

それから、ダンボールの中からスカジャンを掴み、アスカに投げ渡し。

親戚はそのスカジャンに、アスカが包まれていた事も話し聞かせた。


「・・・・・」


「・・・・こんな話を4歳のお前に話しても理解出来るわけが無いか・・・。

俺もどうかしてたな・・・」


親戚はそう言うが。この時、アスカは聞かされた話の内容を全てでは無いが。

少なからず理解した。そして誰に知られる事も無く。

アスカの心は、また深い傷を負った。


そして、その傷は、渡されたスカジャンをアスカにぎゅっと握らせた。


親戚は床から立ち上がり。

また仕事の用で家を出るために玄関に向かう。

アスカはスカジャンを握ったまま、その親戚の後ろに付いて歩いて行き。

玄関の前でアスカは、口を開いた。


「おじ・・さん・・いつ・・・・また・・・・く・・るの・・・?

わたし・・・いたい・・こ・・・むぐっ・・」


アスカは親戚に言葉とは言えない言葉で、いつまた帰るのかと聞き、そして世話係に痛い事をされているのだと言おうとしたが。

いつの間にかアスカの後に立っていた人物に口を手で塞がれた。


「ダメですよー、お嬢様。うふふ・・・まだ上手く喋れないんですからー。行儀悪い口で喋ったら旦那様に怒られますよ。」


「何だと・・・?、4歳でまだ喋れないのか・・・?。おい!?、お前は何を世話してた!?、人形でも世話してたのか!?」


親切はアスカの後に立っていた世話係に怒りを露わに怒鳴った。



世話係は、まさか旦那様がこんなに怒るとは考えてもいなかった。アスカの親戚はアスカを遠ざけ口も自分の都合が良い時にしか聞かず。普段はアスカを無視している事を、世話係は知っているのだが、娘の教育はしっかりしろと、言わんばかりに怒鳴り散らしたのだから、世話係は驚きである。


アスカに家や外でうろちょろされるのも邪魔だと言い、部屋から余りだすな、閉じ込めておけ。と指示したのも旦那様なのにだ。



「すっ、すいません!!旦那様!?でっ、ですがあのその・・・お嬢様はその、そう。何かと知恵が・・少しー・・・」


嘘を並べ己を弁解する言葉を、次々と喋る世話係。


「・・・そんなに頭が悪いのか?……まぁいい、俺の子供でも無いからな。だが、アスカが必要とした物は、俺に連絡しろ届けさせる。・・・それと前にも言った筈だか部屋からは余り出すなよ。外にでも出られたら。俺の評判が落ちるかも知れないからな。・・・まったく、人殺しの子など邪魔なだけだな」


そう言い親戚は玄関のドアノブに手をかけ開く。


「はい、分かりました。旦那様。いってらしゃいませ・・・」


親戚は玄関から出てゆっくりと、ドアを閉めて行き。パタンという軽い音を響かせ仕事に出掛けた。


それと同時に世話係はアスカの口から手をどけ。

アスカの肩に両手を置き次第に指に力を込めていく。


「・・・あんた私の事、アイツにチクろうとしたでしょ・・・?」


「・・・いたい・・・」


「・・・嘘をおっしゃい。余り痛くは無いでしょ?あんたの事は、私が一番よく知ってるんだから………もうアイツに、チクろうとするなよクソガキ。さてと……どうしましょうか?。今日はアイツが帰るって連絡してたから。まだ何もしてないよね?うふふ。あら?お嬢様ちょっと爪が伸びたんじゃない?。また、切ろうか?」


爪と言う部分を無くなるまで切られるのを分かっているのに、あえて頷くデキた子供は全国探してもいないだろう。



「・・・のびて・・な・・い・・・・きる・・な・・」


「・・・切るな・・・?舐めた口聞くわね4歳のガキが・・・。前々から不思議に思ってたけどお嬢様、誰に言葉教わったの?誰も教えても無いのに?外にもまだこの屋敷にきてから片手で数えれるしか出た事がないのに。それとも私とアイツの言葉を覚えたのかしら?

でも、口調が何か違う様な変な感じがするのよねー・・・・・。まあ、どうでも良いわね。あんたの体変だものね。あ、そうだ、今日はあんたの舌、切り刻もうか!?そうしましょう!?うふふ。ついてきなクソガキ・・・」


世話係はそう言いパンと手の平を打ち鳴らし、片手でアスカの髪を鷲掴み。

アスカの体をズルズルと引きずりながら、アスカの部屋へと連れて行く。


そして部屋からは。

カッターナイフのチキチキとなる音が聞こえ。

声にならない、泣き叫ぶ声が聞こえた。


「・・・また明日ね・・・お休み。お嬢様・・・」


世話係は明日の事を考え顔を歪めながら、部屋から出て行った。


「・・・・・・あ・・う・・あ・・さ・・ん・・・・」


この日は12月25日でアスカの誕生日だった。

誰も祝ってはくれない誕生日。悲しくて寂しい誕生日・・・。

アスカは体を引きずり、母の形見のスカジャンに触れ。

お母さんと一言口にし、瞼を閉じる。

そして睡魔が、母がいる夢へとアスカを連れて行った。


アスカが5歳の時のある日常

世話係は雇い主の親戚が家に居る時は虐待を控えていたのだが。

偶然、連絡もなしに家に戻って来た旦那様に世話係は虐待の最中を目撃された。


沸騰させたパチパチと跳ねる油を世話係が風呂場でアスカに浴びせていたうえにアスカを蹴り回していたのだ。


アスカの背中の皮はズルズルに剥けピンクの赤い繊維が見えていた。


それを見た、親戚は怒り狂い、世話係をしこたまぶちのめし警察に突きだした。


そこで5年間の家での。暴力の虐待は止まった。


だが5年間も虐待を受けていたのだが何故かアスカの体には傷が1つも見当たらなかった。

親戚は確かに、世話係がアスカに対して一生消えないアザや傷を付けている所を見たはずなのだが。入院させた次の日にはまるでなかった様にアザや傷がアスカの体から綺麗に消えていたのだ。


親戚はそれを不思議に思いアスカを連れ海外に行き。

ある場所に連れて行き、特別な研究所に預け数ヶ月調べてもらった。

そして全て分かった訳ではないが、研究者達が興奮覚めやまぬ様子で結果を親戚に伝えた。

アスカの体の構造は人間と一緒ではあるのだが。

人の人知を越えた何か別の構造で出来ていた。

人であって人ではない者と研究者達は親戚にそう言う。

アスカのアザや傷が消えたのは驚異的な治癒力で消えた事が分かった。

大、小とで、また異なるが、小さな傷程度なら丸一日か半日、その日に大体治るようだ。


そして分かった事は驚異的な治癒力だけはでなく。


まだ5歳のアスカの身体能力が化け物じみていた事が分かった。


最初は興味本意で研究者はアスカに小さな特別製のゴムボールを持たせてから。

カタコトの日本語で遊んでみてと頼んだ。

アスカは遊びと言うものを知らなかった。

だから、思いっきり握った、そして絶対に割れないゴムボールが破裂し小さな手から消えた・・・

それを見た研究者達は目を見開き驚いた・・・。


それからは、研究者達はアスカに色々と遊びと言い好きな様にやらせてみた。

遊びと言わないと言う事を聞いてくれない様になったからだ。


そして次第に実験はエスカレートして行った。


そしてまた親戚に伝えた結果の内容は、ほんの一部だが以下の通りの物だった。


バランスボールで遊ばせてみた一度もボールの上から落ちず一日中ボールの上で生活した・・・。

バランス測定不能、バランスボールを操り移動含む全行動を確認。

追記、トイレだけは降りていた事を女性研究員から確認それは仕方無いと判断。


プールで遊ばせ水中に潜ってもらった水面に上がってこない・・・。

肺活量測定不能、だが、苦しかったのか息切れを確認。

追記、何をやるかでまた違うが、疲れるものと判断。

声量にも影響を与える肺活量でオペラを教え。その綺麗な声帯で歌って貰おうとしたが。

声が上手く出ない事を思いだし教える前に断念。


遊びで我々とアスカでIQを試すテストをしてみた。どの誰よりもIQが高かった・・・。

IQは高かったが興味が無い物は記憶しないと確認。

追記。我々の言語を少しだが覚えていた事を確認。


研究とは違ったが、この時期は暑く、アスカが暑そうにしていた為。

我々の言語で髪を切るか?と聞けば。上手く声が出せていない様だが、我々の言語で短く切って、と答えた。

カットの経験がある女性研究員が、アスカの髪を、外ハネショートヘアにすると言い、髪を切った。

1ヶ月が経った頃には髪が臀部辺りまで伸び毛先が太股に触れていた。

これはアスカの治癒能力の影響だと推測する。不思議な不明な点が多く残った、が、そう判断した。

追記、そこからどう変化するか待ったが、髪はそこから何故か止まり伸びず。諦め切る事にした。


鉄の板を触らせてみた粘土の様にこねくりまわした・・・。

握力測定不能、だが手の平にその日に治る程度の裂傷を確認。

追記、自信の握力で傷付いたと思われたが、鉄の板が手の平を傷付けていたと確認。

また追記、アスカに頬っぺたを触る許可を貰い、触ったところ皮膚は。

触った事がない程のすべすべした柔らかい肌だと確認。

女性研究員、全ての者がその肌を羨ましがり研究しようとした程の物だった。

実際、研究室は荒れに荒れた。


人形ロボットとアスカで。

腕相撲、足相撲をさせてみたロボットの腕、足がアスカの腕、足を倒した・・・。

腕力、脚力共にロボットが勝ると判断する。

追記、今回の研究はまだ5歳のアスカの成長でどうなるかは解らない為。

この結果は誤りとだと判断する、アスカが遊び感覚でそのロボットを拳を降り叩き。

ロボットにヒビが入ったからだ。アスカが成長した時が楽しみで我々は仕方がない。


特別製の銃を使い、極細、極小の弾を最速で発射。

その針よりも小さく細い弾をアスカは指で摘まんだ・・・。

視力、動体視力共に測定不能、空間把握能力も確認。

追記、片眼しかないのが残念だ、左眼が有れば更なる研究が出来ただろう。


遠く離れた場所での声と匂いを当てさせてみた・・・。

聴力、嗅覚は意外にも一般的な聴力、嗅覚だが、地球上に入るどの人物よりも優秀と判断。

追記、この結果はアスカの成長で変わるかは不明。



結果のまとめを追記、

治癒、IQ、聴力、嗅覚のこれらの能力は、アスカの成長で変わるかは不明。

治癒、IQ、聴力、嗅覚以外の物は5歳になった時点で、目覚めたものと我々は推測する。

そして、その目覚めた、身体能力は極々とゆっくりとだが、いまだ成長していると思われる。



トラブルが発生・・・。

アスカが研究と言う名の遊びに、飽き出し言う事を聞いてくれなくなった。

研究を一時止め、我々研究者一同でアスカを気晴らしに、動物園に連れて行った。

熊、虎、狼、獰猛な動物達がいる場所にアスカが向かい、ガラス越しで対面した。

アスカがガラスに触れ近寄ると動物達が近寄って来た。

驚いた事にどの動物も服従のポーズをし、アスカに甘えだした。

またトラブルが発生・・・アスカがガラスを握り潰し砕いた。

ガラスを割り狼がいるエリアにアスカが入った。

狼の背に跨がりそのまま走り回り、次々とガラスを砕いて行った。

動物達を一ヶ所に集めアスカは動物達と戯れだし遊び始めた。

暫くして、アスカは遊び尽くしたのか、満足したのか解らないが我々研究者達の所え戻って来た。

それと同時に動物達も誰を襲うこともなく、元いた場所に戻って行った。

我々研究者達は唖然とし何が起きたのか、見ているだけだった・・・。


追記、アスカは話に聞く動物達と対話する聖人か何かの生まれ変わりなのだろうか・・・。

調べても調べても未知な部分が有りすぎる。我々は研究者は頭を抱えるばかりだ。


そして研究は終わった。

と、研究者達は親戚にはこの様な結果の極々の一部を見せ伝えたが。

裏では動物園の後にアスカに対して命に関わる酷い虐待紛いな実験を始めたが。

研究者達は親戚には伝えず黙り隠した。


その様な事をしてもまだ研究者達は、研究をさせてくれと親戚に頼み込むが。

親戚はその話を断り眉根を寄せ、無言でアスカを連れ飛行機に乗り家に帰った。


その後、親戚は化け物じみた体質のアスカを気味悪がった。


元々、親戚はアスカを無視したり会話をする事も自分の都合が良い時でしか余り無かったが。

アスカの親戚はますます話さなくなり。

アスカがつたない言葉で親戚と話そうと近付いてくれば、眉間に皺を作り無視をし部屋にまた閉じ込めた。


そして、

6歳になり小学校に入学した頃には。

アスカは言葉も知らない、喜怒哀楽を知らない、感情が無い人形の様になっていた。


だがしかし。

アスカは年を重ね、成長するにつれて。

その虐待の数々の中でも言葉を感情を少なからず知り覚えていた。

感情や言葉をもっと多く知る為に、覚える為に見本にした物がテレビや本であり。

または、家の中でアスカ以外と会話する親戚。あるいは、あの悪質な世話係を。

言語が違うがあの研究者達を。

アスカはそれらの見本を使い、自分自身にあった言葉や口調を魂の本能で選び覚え成長してきた。

だが覚えたのは良いが数々の虐待の弊害で、感情や言葉が上手く表に出せないでいた。


そして、そのまま11歳になった今現在。

今までは、その害で感情や言葉が上手く表に出せていなかったが。

アスカが、ぶちキレた出来事が切っ掛けで、徐々に芽生えて来ていた感情の芽を急速に成長させた。

その成長した感情が言葉を素の形で表に出させた。

昔から慣れ親しんだ様に、次々と感情と共に言葉がアスカの口から出て来ていた・・・。

それらの言葉は口調は色々なものが混ざり少し違和感を与える様なへんな口調ではあったが・・・。


そして、

おじさんの言葉を待つアスカ。

アスカは強く強く手を握り締める。

血が出る程に。


アスカは薄々と分かっていた、子犬がもうこの世に居ない事に。だが。

諦めきれなかった、信じたくなかった、だから全力で走った家族の為に。


おじさんはアスカの強く握る手をチラリと見て、眉根ピクリと動かし少し驚く。


[・・・・本当に言いづらい事だけどね、あの子犬は、もう此所にはいないんだよ。

私が里親を見つけてね。・・・私の判断で遠い国にいる、里親になってくれる方に送って上げたんだよ。

・・・少し遅かったんだ・・・・・申し訳なかった]



おじさんは矛盾した言い方で優しい嘘を付き。

謝りながら頭を下げる。


そう話を聞いた瞬間。

アスカの体が金縛りにあったかの様に硬直した。

そして、そのまま顔を下に向ける。


[・・・・・・そう・・・里親に拾われたんだ・・・・]


アスカは地面を見つめたまま、そう喋り。

スカジャンのポケットから手探りで有る物を取り出すが。

雨の水を吸い込みボロボロになっていた。


アスカは押し花のしおりを血と泥がついた手の平で押し広げ伸ばし。

其をおじさんの前に付きだし見せ渡す。


「ん?・・・これは・・・?」


「・・・菊の花で作ったしおり・・・それをあの子犬に・・・

此所で亡くなった子達が・・・迷わず逝けるように供養して欲しい」


アスカは顔を下に向けたままそう答える。


「・・・・・供養・・・?私は里親に送ったんだよ供養なっ・・・」


おじさんはまた優しい言葉でアスカを傷付けまいと嘘で誤魔化そうとしたが。

言葉が途中から出なかった、アスカが顔を上げ、涙を流していたからだ。

その顔の右眼からは涙が溢れ。

頬を伝い地面に、ぽたぽたと落ち吸い込まれていく。

そしてアスカはその顔で、複雑そうに笑っていた。


「あはは・・・おじさんはそうやって誤魔化すんだな。私を・・・優しい嘘で・・・・

・・・私は嫌いだ・・・お前の様な矛盾した嘘を付く汚い奴も・・・・」


アスカはそう言いながら徐々に笑った顔が冷やかな顔になる。

おじさんは、そう言われ、また驚き、驚きを隠せそうにない顔のまま固まる。

それを見ていた、お兄さんまでも固まっていた。


「・・・聞いてるのか・・・?、二度は言わないぞ・・それ・・頼んだからな・・・」


指を指しておじさんにアスカが聞くと。

おじさんは悟ったように答える。


「・・・・あ、ああ・・・わ、分かった。ま、任せなさい・・・約束する・・・」


そして其を聞いたアスカは一度こくりと頷き。

二人に背を向け何処かへ行こうとした。


「あっ・・・!?、お、お嬢ちゃん待ちなさい。い、今から何処に行くのかな・・・?

凄い怪我だし病院連れていこうか・・・?。それか親御さん電話で呼ぼうか・・・?

それともー・・・」


「・・・・あんたには関係ない・・・・」


おじさんが心配してアスカに聞くが。

素っ気なく冷たい言葉を返しながら、潰されたいか?。と言う様な眼で睨んだ後。

その場所からふらふらと消えて行く。



「・・・・・あの子凄かったですね、いろんな意味でですけど・・・。

あと、あの子、本当に大丈夫何でしょうか?。怪我も、心配ですけど。もう晩で暗いんですよ?

僕はロリコンじゃないですけど、あの子は、その・・・見た事が無い程の美少女でしたし。

変な奴に連れて行かれないか凄く心配なんですけど・・・・あ、あの?班長聞いてますか・・・?」


お兄さんは心配の言葉を喋って行くが。

おじさんはショックで呆けていた。


「・・・・・あっ、ああ、そうだな。・・・だが、あの子ならきっと大丈夫だろう・・・。

片方は何故か瞑ってたが、私の目を睨み付けて威嚇する様な感じのあの目。

あの目に強い意識を感じた。・・・嫌、あの子に言われた様にもう誤魔化す様な言い方は止めよう。

正直に言う、私は娘ほど歳が離れているあの子に。あんたには関係無い、と言われた時・・・。

私は寒々とした恐怖を感じたよ。それにあの眼。アレは・・・

人がして良い様な眼じゃない獣の眼だった。だが・・・、

此所で私達が処分した子達の為に流したあの子の涙は・・・本物の人の涙だったよ。

私はあの涙を一生涯忘れずに墓場まで覚えていようと思う・・・。

・・・雪が大分降ってきたな・・・・屋台で酒でも飲んで帰ろうとしたが止めにしよう。

待たせて置いてすまないが、君はもう帰りなさい・・・」


「班長はどうするんですか・・・?」


「私は約束どうり・・・この菊のしおりを供養場に御供えして供養するつもりだ・・・」


「それなら僕も付き合いますよ。終わったら飲みに行きましょう!?」


「・・・君は本当に純粋な良い若者だな、あの子より君の方が心配になるよ。だが有り難う」


外に在る供養場で御線香の煙が上がる。

その煙は天から降る雪に触れながら昇って行く。

眼では見えないが魂はきっと。

神様の元へ辿り着き神様と暫く遊び幸せを感じただろう。




ちょっとしたお話。

犬、猫達は嫌、地球上の全て動物達の魂が。

何故かその供養のおかげで。その日に神様の元へ辿り着いた。


「ギャーーーたっけてーーーーー!?一匹!?一頭!?遊ぶのはあああーーー遊んであげるから順番に!?順番に!?並んでーーーー!?並んでーーーー!?追いかけるのなしーーーーー!?ギャーーーあっ!!転けたーーーー!?うっぷす!?乗っかるなーーーー定員オーバーーー!?」


地球上の全ての動物達に追いかけ回されて、転ける神様。

このように動物達は神様で遊んだ。

勿論あの子犬も・・・


「ハッハッワン!」


「ギャーーーーー!?おしり噛むのもなしーーーーー!?」


・・・頑張れ神様・・・


「頑張れるかーーーーーー!?あっ!?こらそこ!?私で爪を研ぐなっふっぎゃーーーーー!?」


・・・本当頑張れ・・・

11話終わりです。

お疲れ様でした。

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