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名門学園の音楽発表会が150kmの魔球とボコボコのホルンにより無事崩壊した件について

作者: 朝霧おもち
掲載日:2026/05/24

ここは名門、聖エトワール魔法公爵学園の大講堂。


今日は年に一度の音楽発表会だ。

客席にはお上品な貴族の令嬢や、厳格な教師陣がずらりと並んでいる。


プログラム第4番。

ステージに上がったのは、学園一の変人として名高い少年、アレンだった。


「あいつの楽器……おかしくね?」


最前列に腰掛ける生徒会長が、隣に座る副会長に囁く。


「えぇ。ハープでもフルートでもなく……あっ、ホルンでしょうか?」


「原形を留めていないがな。馬車の下敷きにでもなったのだろうか」


アレンは、ぐにゃぐにゃに変形してもはや単なる鈍器と化したホルンを、野球のバットのように肩に担いだ。


そしてマイクの前に立ち、ダルそうに口を開く。


「えー、今から始めまーす」


すると、観客席から一人の男が立ち上がり、舞台の上に上がる。


「相方のジョンでーす」


歓声と戸惑いが入り混じった声が上がる。


「おい待て、何が始まるんだ。音楽発表会だぞここは」


客席の生徒会長の額から冷汗が伝う。


アレンはホルンを分解し、一本の棒に様にする。


「は?」


生徒会長の戸惑いをよそに、アレンは叫ぶ。


「ジョン!来い!」


「おうよ!新曲『プレイボール』だ!」


ジョンがその右手から放った推定150kmのストレート。


「ピッチャー第一球投げたー!!じゃなくて!!音楽をしろよ!!なんでステージの上でガチのバッティングが始まってんだよ!!」


生徒会長のツッコミが響く中、アレンはボコボコのホルンを豪快に振り抜いた。


キィィィィィィィン!!!!!


講堂全体に、鼓膜が裂けるような金属音が炸裂する。


「ぎゃあああああああ!」


どこかの令嬢の悲鳴が聞こえる。


打たれたボールは、凄まじい魔力を帯びて客席の天井へ直撃。


ドガァン! と派手な音を立てて天井のシャンデリアが粉砕される。


観客たちがパニックに陥る。


まさに阿鼻叫喚の地獄絵図。


「天井が死んだ!!防御結界を張れ!!」


ステージの上の二人は、客席の阿鼻叫喚などどこ吹く風。完全に二人の世界だった。


青春の悲鳴が講堂に響き渡る。


「アレン、次は変化球だ。感情を揺さぶるぞ」


「おし、かかってこい」


ジョンが放った速度の緩急に、アレンは体勢を崩されながらも、ボコボコのホルンを片手で合わせる。


カツン、、、


「あ、ゴロ。じゃなくて!!」


「おい!その音で”わびさび”を表現しようとするな!音楽の授業をナメるな!」


音楽教室の雄叫びが聞こえたような気がした。


アレンはボテボテの打球を見送りながら、ボコボコのホルンを口元に当て、


「……プー」


と、情けない音を一度だけ鳴らした。


「吹いた!!! 吹けるんだそれ!!!」


「ラスト一級!魂(ソウル)を震わせろ!」


ジョンが魔力を最大出力でボールに注ぎ込む。


「これが俺の!漆黒の翼(ダーク・ウィング)だぁぁぁぁぁぁ!」


「おおおおお!!」


アレンがボコボコのホルンを渾身の力でフルスイング。


ゴォォォォォォォォォォン!!!!!


凄まじい衝撃波。打球は講堂のパイプオルガンへ直撃し、パイプオルガンが「ドミソーーー!!!」と爆音で鳴り響きながら大破した。


「ホームラン!!! じゃなくて大損害だよ!!!!」


学長は泡を吹いて倒れかけ、教頭がそれを介抱している。


ステージの上で、アレンとジョンは無言でガッチリと握手を交わした。


二人の背後では、粉砕されたパイプオルガンから煙が上がっている。


アレンはマイクに向かって、ボソッと言った。


「……あざした」


講堂から、まばらな拍手が上がる。


そしてそれはやがて、講堂全体を飲み込む大拍手となる。


「……素晴らしい。あれが、前衛的スポーツ音楽」


「ちょっ、生徒会長!?いつの間にかなんで飲み込まれてるんですか!?」


こうして、高貴(?)な音楽発表会は幕を閉じた。



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