表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】竜殺しのリザードマン 〜竜に支配された世界で自分だけ“竜殺し”の力を手に入れて“劣等竜リザードマン”になった男の逆襲物語〜  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第3章 帝王竜ファフニール編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/216

第86話 帝王竜対紅鷲団

 ファフニール帝国から(はる)か東にある紅鷲(あかわし)団ブラッドイーグルの隠れ家。団員達は地下で火を囲んで談笑していた。


「ダイニンさん上手くやってるかなぁ」


「大丈夫だろ。アイツは世渡り上手だからな」


「関係あるんすかそれ」


「息子の側に居てやりたいだろうに、立派だよヤツは」


「『竜を倒すことが息子を守る近道』ですもんね。いずれ団長になりそうです」


「ああ、ダイニンなら任せられるな」


 そう最後に言ったのは副団長だ。


「またまたぁ、副団長が団長の座を狙ってたりするんじゃないですか?」


「いや、私には向いてないよ。補佐(ほさ)があってる。まぁ、あの人も向いていないといえばそうだが」


 平和に雑談が続いていたその時だった。突如として地鳴りが起きる。団員達は素早く立ち上がり身構えた。


「大きいな。お前ら頭上に気をつけろよ」


 気を張ってはいるが、すぐに収まるだろうとその場の誰もが楽観視していた。


 しかし、地鳴りが収まる気配はなく、それどころかますます大きくなり、隠れ家の四方八方がひび割れていく。


「く、くそどうなってる!?」


 ついには天井がめくれ、日光が紅鷲達を照らす。


「な、天井が!?」


 上を見上げた彼らの目に飛び込んできたのは、光を背に六枚の翼を広げる竜——帝王竜ファフニールだった。


『虫は暗闇が好きなようだな』


 ファフニールは虫けらを見下ろし、あざ笑う。


「ファフニール様! その不逞(ふてい)(やから)に神の裁きをお与えください!!」


 帝王竜の右腕に握られている竜教教祖ウーノが嬉々(きき)として答えた。


 その様子を見ながら副団長は剣を抜く。


「当たりを引くとはツイてるな。……全員(おく)するな。衛竜が王竜に変わっただけだ。首を取った者は副団長でも団長でもなっていいぞ」


「そいつはありがたいっすねぇ」

給金(きゅうきん)が上がって美味い飯が食える!」

「酒も飲み放題!」

「女も抱き放題!」


 うおお、と雄叫(おたけ)びを上げる団員達。王竜を前にしても士気は落ちない。今までも死地を乗り越えてきたのだ。当然と言えた。


『少しは楽しめそうだな』


 帝王竜は目を細め、左手を前方へ差し出して五指それぞれの先から石礫(せきれき)程度の黒い球体を顕現(けんげん)させた。


 固有能力“重力魔法”だ。当たれば圧縮され、この世から消える。


「気を付けろ追尾性能があるぞ」


 帝王竜の能力は全団員把握している。五年前、ルーマ帝国に現れた時にも使っており、知らない兵士は少ないのだ。


『さぁ、遊ぼうか』


 刹那(せつな)、重力玉が放たれる。


 矢のように早いそれを紅鷲達は各々(おのおの)回避する——が、玉の一つが直角に曲がり団員の一人に直撃、球体に吸い込まれると圧縮され、(ちり)一つ残さず消えた。


「おいおい、追尾性能高すぎだろ」


 悪態をつきながら地上に出た残りの団員達。


 すかさずクロスボウで矢を敵に飛ばす。が、羽ばたき一回で突風が吹いて全て落とされる。


 ファフニールは、教祖ウーノと共に右手に握っている通訳のマタマタ二号に何やら吹き込む。


「つまらんぞ、と申しております」


「遠くから石を投げるだけの奴がいきがるなよ」


 紅鷲の返答に帝王竜はニヤリと笑うと地上に降りた。


「どうやら手を抜いてくれるようだな。お礼に苦しまないように首を落としてやろう」


 そう言った副団長が、すぐに()ける。後に続く団員達。連携は完璧だ。


 帝王竜は、両手を前に出して再び重力玉を放つ。


「がはっ!」

「いてぇ!」

「た、助けっ——」


 次々に命を落としていく団員達。


 それでも生き残った者の士気は落ちず、残り数歩の距離まで近づいた時だった。ぱん、と破裂音が響き、団員の一人の頭が泡のように弾けた。


 尻尾による打擲(ちょうちゃく)攻撃だ。徒竜の素材で作られた竜鎧(りゅうがい)など王竜にとっては布切れと同じ。簡単に破壊されてしまう。


「死になクソッタレ」


 そう言い放ったのは、密かに真下の地下に移動していた紅鷲団員。手には竜器“爆竜砲(ばくりゅうほう)”を(たずさ)えていた。筒状の武器で、小型の蟻蟲(ありむし)竜の魔臓(まぞう)を使い、その爆発力で弾丸を飛ばす代物だ。


 団員が引き金を引くと地面を吹き飛ばし、高速の弾丸が王竜に直撃した。


『ククッ、どうしてくれる、体が汚れたではないか』


「な!? 効いていない!?」


 無傷の帝王竜は足先から重力波を放ち、真下の団員を消した。


「瞳だけはいただくぞ」


 まだ消えぬ爆煙の中、副団長は帝王竜の真横に移動していた。剣を真紅(しんく)の瞳に突き立てる。


「っ!」


 が、剣は枝をへし折るかのごとく容易(ようい)に砕けてしまう。もちろん瞳には傷一つない。


「んじゃ、口ん中はどうだぁん?」


 他の団員が敵の口先で爆竜砲を構えていた。思い切り引き金を引くと弾が射出され大爆発を起こす。


(ぬる)いな』


 帝王竜は何事もなかったように煙を吐き出す。口には火傷一つなかった。


「うっそだろ、口内すら——」


 言い終わる前に尻尾で頭が弾け飛んだ。


「おのれっ!」


 残った副団長は、距離を取ろうと王竜の体を蹴って足場にした。しかし。


「なっ!?」


 黒い沼のようになったファフニールの体に足が埋まる。直後、圧縮されて千切れた。


「ぐぁ、くそっ!」


 咄嗟(とっさ)に残った足で距離を取ろうとするが、尻尾で捕縛(ほばく)されてしまう。煙が晴れ、副団長が当たりを見回すと、そこには——誰一人生存者はいなかった。


『中々楽しかったぞ人間。眷属として側に置いてやろうか』


「断る。意志なき傀儡(くぐつ)などごめんだな」


 死にかけながらも笑みを崩さない副団長。


『ククッ、(いさぎよ)い。()け』


 直後、彼は魔法で押し潰され、この世から消え去った。


『これで最後か?』


「は、はい! ファフニール様のお陰ですべての紅鷲を殲滅(せんめつ)に成功しました! さすがでございます!」


『少々、物足りないが少しは運動になったか。これで“ラグナロク”までまた暇になるな』


 天を(あお)ぎ、退屈そうに息を吐いた。


『帰るぞ』


 飛翔(ひしょう)。紅鷲の拠点を潰したファフニールは、帝国へと帰還した。


 空を()け、雲を割り、自由を謳歌(おうか)した後、数多(あまた)の生物の骨で作られた白い中央塔に降り立った。そこに猛毒蛇(もうどくじゃ)爬竜キンクーブラが緊張した面持ちで近寄る。


『ファフニール様、申し訳ありません。何者かに帝国を荒らされ、ギュスタブとレザバクが殺されてしまいました』


『ほう、この短時間でか……いやまさか、あり得るか?』


 何かを考え込む帝王竜。


『敵は帝国地下一帯に作られた楽園と呼ばれる場所に隠れている可能性が高いです。くれぐれもお気をつけください』


『そうか。ならば——少し(えぐ)るか』


 その言葉と同時、ウーノとマタマタをその辺に投げ飛ばす。


「あーれぇー!」


 ウーノは地面に叩きつけられるが竜衣により軽傷で済んだ。


 ファフニールが右腕を天に(かか)げる。


 手のひらの先、黒い豆粒のような球体が現れたかと思うと、見る見るうちに大きくなり、ついには“黒い月”と見紛(みまが)うほどの巨大な漆黒の球体となった。


 そして、それを躊躇(ちゅうちょ)なく、帝国北側へ“落とした”。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ