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【完結】竜殺しのリザードマン 〜竜に支配された世界で自分だけ“竜殺し”の力を手に入れて“劣等竜リザードマン”になった男の逆襲物語〜  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第3章 帝王竜ファフニール編

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第80話 犯人捜し1・考察

 リンドウ達はドラテオン神殿へ移動し、聖女ドゥエの下に到着した。


 彼女は、体に巻きついているペット(?)であるカメレオン型の避役(ひえき)爬竜“メカ”に餌を与えていた。コロを見て、瞳を輝かせる。


「おお、コロ殿! 生きていたか!」


 なぜか名前を知っている彼女は、コロに抱きついていた。コロ(いわ)く、食料を貰う時に教えたらしい。


「して、今度は何用ですかな?」


 通訳のマタマタ三号を(かい)して要件を述べた。ちなみに通訳の見た目は、髪がなく白い髭を生やしたおじいさんだ。


「ふむ、殺された者の死体の状況を知りたいと」


 ドゥエは椅子に腰掛けて語り出した。


「我々で死体を検分(けんぶん)して見たところ、おかしなところが三つ程ありましてな。まず、体の大きさが違ったため、いつもの老紳士風の変身ではなく、違う人物に変身していたこと。次に内臓が引き()り出されていたものの、欠損(けっそん)している臓器がなかったこと。最後に気道が焼けていないことから顔が焼かれたのは死後だということなどですな」


 コロは、人間用の椅子には尻尾が邪魔で座れないので立ち聞きしている。そんなところもカワイイと思うドゥエ。顔には出さない。


『なるほど、さっぱり分からんべ。リンドウはどうだべ?』


 コロは信号をリンドウだけに飛ばした。


『内臓が引きずり出されていたのは竜の仕業に見せかけるためかもな。だとしたら人間が犯人だが、撹乱(かくらん)の可能性もある。あと、全体的に処理が雑なのも気になるな』


 なんにせよ人間の仕業だろうとリンドウは当たりをつけていた。竜ならわざわざ頭部を焼かなくても食いちぎれば良い。


 こんな小細工を思いつくのは人間だけだろう。ということで、考えていた策を予定通り行うようコロに目配せした。


 それを見てコロは信号をマタマタに飛ばす。


『竜教信徒の名簿が欲しいべ』


「まさか、犯人捜しを?」


『当然だべ。徒竜は竜巣(りゅうそう)を守るのが役目だべよ』


「真面目……!」


 下町を守る衛兵のような心構えにドゥエは胸を打たれる。彼女は上機嫌で名簿を取りに奥へ消えた。


(さて、人数によっては面倒だろうな)


 そう考えるリンドウだが、ある程度、楽観視していた。怪しいものを直接尋問し、嘘を見抜ける【蛇眼(じゃがん)】を使えば一発で分かるからだ。


 すでにドゥエに使ってみたがコロと喋る時以外、動揺は見られなかった。おそらく犯人ではないのだろう。この調子で怪しい信者を見ていけば良い。


 それに犯人捜しをしていると犯人に伝われば、なんらかの動きを見せるはず。そうなれば捕まえやすくなるだろう。


 あれこれ思案していると、ドゥエが重そうな本を持ってきた。


「お待たせしました。こちら竜教信者百人分の名簿ですぞ」


 本や資料を読むのが好きではないリンドウは、内心大きなため息をついた。


(百人分の名簿か……予想はしていたが多いな)


 一人一人当たるには時間がかかり過ぎる。モタモタしていたら右腕探しに奔走(ほんそう)しているレザバクに勘付かれてしまう。


『リンドウ、これ見るべ』


 コロは呑気(のんき)に部屋の脇に置かれていた鏡を見ていた。


『オイラってやっぱかっこいいべな。他の竜とは違う唯一無二の丸い造形。()()れするべ』


『…………』


 リンドウは(あき)れていたが、思考に何かが引っかかった。


(鏡……)


 ――我々で死体を検分して見たところ、おかしなところがいくつかありましてな。


 ――体の大きさが違ったためいつもの老紳士風の変身ではなく、違う人物に変身していたこと。


 もしかしたら殺される間際、“犯人の姿”を模倣(もほう)したのではないか。だとしたら死後に顔が焼かれていたのも納得がいく。そのまま死体を放置すれば顔バレしてしまうからだ。そして内臓を引き()り出して竜に容疑がかかるように仕向けたのだろう。


『おい、通訳。名簿から死体と同じ身長の人間を探してくれと伝えろ。おそらく死の間際、犯人に変身したはずだ』


 マタマタ三号は、(うやうや)しく了解するとドゥエに話した。


(他に何かないか……?)


 信者達の綺麗な服を見て、そういえばと気付く。返り血を浴びたであろう服はどうしたのか。


 思考に(ふけ)っていると、ドゥエが戻ってきた。


「お待たせしました」


 名簿から身長がほぼ同じである数名の容疑者の名前を見繕(みつくろ)ったものを広げる。そこにはリンドウの知っている人間の名があった。


『分かったぞ犯人は――』

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