表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】竜殺しのリザードマン 〜竜に支配された世界で自分だけ“竜殺し”の力を手に入れて“劣等竜リザードマン”になった男の逆襲物語〜  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第3章 帝王竜ファフニール編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/216

第76話 潜伏

 ファフニール帝国北北東にある広場。(えい)竜の長亀(おさがめ)爬竜レザバクは、帝王竜より頼まれた“些事(さじ)”を解決しようとしていた。


 しかし、その途中、巨蛇(きょじゃ)爬竜アナコンより“楽園”のことを聞いて方針転換を(はか)り、先に楽園潰しを行うことにした。


 広場に竜と竜教教徒を集め終えたレザバクがヒゲをさすりながら壇上に立つ。


『ふむ、そこそこ集まったようじゃの。すでに聞いておると思うが、帝国地下全域に楽園と呼ばれるドブネズミの吹き溜まりが見つかった』


 竜教徒に向けて人型の竜が同時通訳する。


『これは由々(ゆゆ)しき事態である。ファフニール様がお戻りになられる前に(うみ)をすべて取り除かねばならん。よって刻下(こっか)より楽園潰しを行う』


 ざわつく群衆。このような大規模な異変はファフニール帝国ができて以来であり、動揺、期待、不安など様々な感情が場を支配していた。


 喧騒(けんそう)の中、一頭の水宝玉(すいほうぎょく)色の瞳を持つ竜——リンドウが前に出た。レザバクの元に(すっぽん)爬竜の首を投げる。


土産(みやげ)だ。こいつは、楽園の守護者でかなりの手練れだった。おかげでこちら側の竜が何頭かやられた』


 もちろん嘘である。信頼を得るためのペテンだ。レザバクは目を細め、まじまじとリンドウを観察する。


『お主は?』


『ただの名もなき竜だ。俺も楽園潰しに参加させろ』


『ほう、とんだ野心家が居たものよのぅ。望みは?』


『存在を認知してもらいたい。ここでは生きるだけでも苦労するからな。アンタに目をかけて貰えば、少なくとも雑魚竜に難癖をつけられることはなくなると思ってな』


 レザバクは、白く長いヒゲをさすりながらリンドウを値踏みする。


『なるほどのぉ。ふむ、参加は許可しよう。じゃが、要求を飲むのはこれからの働き次第じゃの』


『ああ、それでいい』


 とりあえず(くさび)は打った。あとは、隙を見て衛竜達の寝首をかくだけだ。


 その時、辺りを突風が吹き荒れる。リンドウに影が差した直後、大岩のごとき巨躯(きょく)に四枚の翼を(たずさ)えた大竜が降臨した。


 ――殺鰐(さつがく)爬竜ギュスタブ。衛竜。赤い鱗のワニ型の竜。殺しが大好き――


 背後に立つギュスタブは、リンドウの四倍ほどあり、並のものなら威圧感で萎縮(いしゅく)してしまうであろう外観だ。


『グッグッグッ! 面白そうなことしてんじゃねぇか』


『うるさいのが来たのぅ』


 レザバクはわざとらしく大きなため息を吐いた。


『楽園潰し、オレにもやらせな。地下にいる奴は皆殺しでいいんだろ?』


『そうじゃのう。太陽が真上に昇るまでに地上にいない竜は夕餉(ゆうげ)にする方向でいくかの』


『おいおい、わざわざ猶予(ゆうよ)与えんのかよ。逃げたもん勝ちじゃねぇか』


『勘違いするでない。モグラには(みずか)ら出て来てもらった方が叩きやすかろう?』


『ハッ、そういうことかい。相変わらず悪りぃ奴だな』


 二頭の衛竜は悪徳貴族のように怪しく笑った。


『では、お主は北と西、わしは南と東を担当する。他のものも各自別れよ。四半刻後、音蛇(おとじゃ)爬竜を使って音と信号で告知、地下から出て来たものを問答無用で殺すのじゃ』


 衛竜の会話が途切れたのを見計らいリンドウが信号を飛ばす。


『俺は北側に行かせて貰う。そっちの方が地理に明るいからな』


 その高圧的な態度が(かん)(さわ)ったのかギュスタブが(にら)みつける。


『おい、チビ。オレの邪魔すんなよ。下手に近づいたら殺すぜ』


 空気が張り詰める。殺戮(さつりく)を好むギュスタブは、気まぐれで竜を殺す問題児だ。ファフニール以外の言うことは聞かず、直情的に行動する。リンドウとしては早めに倒しておきたい相手だ。


『しない。ただ、(ねずみ)は追い詰められたら噛みつくぞ。気をつけるんだな』


『抜かせ。畜生(ちくしょう)がオレに傷つけられるかよ』


 ギュスタブは笑いながら地面に(つば)を吐いた後、西へ飛んでいった。


『ほう、ギュスタブに物怖(ものお)じせんとは、中々の胆力(たんりょく)を持っておるのぅ。じゃが、鋭気(えいき)は実力が(ともな)ってこそよ』


 レザバクは、感心と卑下(ひげ)を混ぜた表情でリンドウに訓告(くんこく)した。


『期待に(こた)えられるよう善処(ぜんしょ)する。先に行くぞ』


 リンドウは帝国北西方向へ足を早めた。


 緊張が解けた他の竜達も散り散りに移動を開始した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ