表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】竜殺しのリザードマン 〜竜に支配された世界で自分だけ“竜殺し”の力を手に入れて“劣等竜リザードマン”になった男の逆襲物語〜  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第3章 帝王竜ファフニール編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/216

第74話 雑魚狩り1・極彩蛙爬竜ヤドク戦

 地下楽園に着いた家守(やもり)爬竜ゲッコーが警戒しながら歩みを進めていると、首を上下にビヨンビヨン動かす亀型の素知らぬ竜が姿を現した。


『お、新入りかぁ!? 楽園へようこそ!?』


『楽園? てめぇらこんな地下で何してやがる。ファフニール様の許可取ってんのか?』


『取ってないぜぇ? いいから、お前も一緒に遊ぼ——』


 首が飛んだ。


 ゲッコーの茶色い体は鋭利な刃に包まれており、それをすれ違いざまに当てたのだ。自身の体か物体を刃に変える“刃魔法”だ。


 背後からゲッコーの味方の巨蛇(きょじゃ)爬竜アナコンが()い寄ってくる。


『おいおい、殺していいのかぁ?』


『構わない。ファフニール様の許可なく楽園なんて作る方が悪い。ま、八つ当たりも入ってるがな』


 仲間探しでイライラさせられた腹いせだ。二頭は、悪魔のごとく笑い合う。


「ぐ、グォォォォォォ!(に、逃げろ!)」


 様子を見ていた他の竜が()えて仲間に危険を知らせた。その叫びに楽園の竜達は蜘蛛(くも)の子を散らしたように一斉に逃げ出した。


『逃がすかよ』


 ゲッコーは、狭い通路をうまく飛翔して首を()ねていく。


『ぐへへ、食っていいよなぁ?』


 蛇型のアナコンも同じく暴れ、竜をほぼ丸()みにしていく。


 小一時間狩り続け、気付けば楽園はがらんどうになっていた。ゲッコーは何事もなかったように涼しい顔で腕を組んで考える。


『何頭か仕留め損なったか。まだまだ居そうだし、俺達だけじゃキツイな』


『どうするぅ?』


 (ふく)れた腹に満足げなアナコンが首をもたげて問うた。


『ファフニール様に報告だな。恐らく楽園潰しが始まるだろう。今のうちに顔を売っておけば俺達の立場も良くなるはずだ』


『いいねぇ。んじゃ報告してくるよぉ』


『俺はヤドク共を連れて西を潰していく』


 二頭は一度地上へ戻った。


 数刻後。帝国北西にて。


 ゲッコーは、仲間の到着を待っていた。待つのが嫌いな彼は足を貧乏ゆすりさせながらイライラしていた。


 その時、背後から数十頭のカラフルなカエル型の竜が現れる。


 ——極彩蛙(ごくさいあ)爬竜ヤドク。徒竜。イチゴ柄、(しま)模様、まだら模様など様々な柄と色を持つ(かえる)型の竜——


『おう、ヤドク共来たか。ちょっと掃除に付き合えよ』


『断る』

『命令すんな』

『死ね』


 見た目のかわいさとは裏腹に口の悪いヤドク達であった。


『ファフニール様の命令だぞ』


 正確にはまだ許可を得ていないが、ヤドク達はバカだから問題ないだろう。


『よし、やろう』

『当然だな』

『ファフニール様バンザイ!』


 単純な奴ら、と、ゲッコーは大きく息を吐いた。


 そして竜達は、ゾロゾロと北の楽園から西へ移動した。途中、帝王竜に報告に行っていた巨蛇(きょじゃ)爬竜アナコンと合流する。


『ファフニール様に報告したか?』


『いんやぁ、居なかったからレザバク様に言っといたぞぉ。後から合流するから先に楽園を潰しとけだとさぁ』


『居なかった? (めずら)しいな』


 ゲッコーは、中央の塔を眺める。たしかに姿が見えない。


『まぁいい。俺らだけでも十分だしな……よし、着いたぞ。手筈(てはず)通りに行く。ヤドク達は西から攻めろ、俺とアナコンは東からだ。(はさ)むぞ』


『うーい』


 まだら模様のアナコンが尻尾を上げて気だるげに返事をした。


『うるせぇ』

『命令すんな』

『勝手にやるぜ』


 ヤドク隊は文句を垂れつつも西へ向かった。それを見送ったゲッコーは東側から例のごとく穴を掘り、楽園へ向かう。



『ヒャハハハ! 死ねぇ!』

『ファフニール様の邪魔をするものは消えろぉ!』


 ヤドク隊は西から回って、ゲッコーから逃げてくる竜を殺していた。小型だが、実力は申し分ない彼らに次々となすすべなくやられていく。


 その時、ゴッゴッ、と一定間隔に壁を叩く音が耳に届く。


『なんだぁ?』


 ヤドクの一頭がゆっくりと壁に耳をそばだてた瞬間だった。壁が勢いよく破壊され、“リンドウ”の貫手(ぬきて)がヤドクの腹を貫いた。


「ゲ、ゲゴォ……」


 ヤドクは断末魔の叫びを上げるまもなく、事切れた。リンドウの【蛇眼(じゃがん)】は使用し続けたおかげで成長し、薄い壁なら透過できるようになっていた。


 残りのヤドク達が警戒しながら穴の空いた壁を覗くが、リンドウはすでにいなかった。彼は敵の数も魔法も未知数なので慎重に一撃離脱戦法を取ることにしたのだ。


 その後も神出鬼没(しんしゅつきぼつ)に現れてはヤドクを減らしていく。


『チキショオ! どうなってる!?』


『第三ヤドク隊の信号途絶!』


『落ち着け。固まって戦えばどうということはない』


 (しま)模様の体が特徴の第四ヤドク隊隊長が部隊をなだめる。固まりつつ移動を開始。程なくして、通路にリンドウの尻尾の先が見える。


『!! 頭隠して尻隠さずだぜぇぇぇ!』


『ヴァカ、よせ!』


 一頭のヤドクが飛びかかる。


『なっ!?』


 完全に捕らえたと思ったそれは尻尾ではなく、尻尾の脱皮殻(だっぴがら)だった。


 両爬の力(ハープタイル)の一つ、【脱皮】の応用“部位脱皮”を使ったのだ。手先や尻尾など一部のみを脱皮する技で、こうすることで他の大部分の皮は残り、一日一回しか使えない脱皮の節約にもなるのだ。


「ゲコッ……?」


 完全に(きょ)を突かれたヤドク。気付かぬ内に首が飛んでいた。


『ヴァカ野郎が……だが!』


 首を切った後、リンドウの腕に粘液がこびり付いていた。


(……! これは)


 驚くリンドウ。ヤドクの“粘液魔法”だ。隊長がこうなった時のために部下の一頭に粘着させておいたのだ。


 リンドウがそれを振り払おうと腕を振るが()がれず、死体が重石(おもし)のようになってしまう。


『好機!』


 ヤドク隊長の広範囲信号と同時、隊が動き出した。小型の竜である彼らは、体格を生かして縦横無尽に地下水道を跳ね回る。


『早いな。猫よりは』


『ふん、(いき)がるなよ雑魚竜風情(ふぜい)が!』


 ヤドクが四方八方から飛びかかる。対してリンドウは、動かない。そのまま敵の餌食になるかと思われた瞬間、鱗が(とげ)状に変化する。


 鱗変化応用【鱗変化・反撃型】。敵の攻撃に反応して鱗が自動で棘状に変化する技。


「ゲコァ!」

「ゲギョ!」

「ゲア!」


 飛び掛かってきた全てのヤドクの体を貫いた。棘状の鱗が収縮し、元に戻るとヤドクの死骸から血が噴き出し、血の雨が降った。


 間を置かず、粘着している左腕を鉤爪(かぎづめ)ごと部位脱皮して粘液の拘束を解くと、まだ息のある敵に血入りの(つば)を吐きかけて頭を消しとばした。


 一頭だけになった縞模様のヤドク隊長は、目を見開き、(おのの)いていた。


『ヴァカな……オマエ本当に徒竜か……!?』


『見た目に(だま)されないことだ』


 直後、敵の体は真っ二つになった。


 静寂がリンドウを包む。


(カエルはあらかた片付いたか)


 ふぅ、と息を吐き、琥珀(こはく)色の鉤爪を拾って装着し直した。


 ひとまず人心地(ひとごこち)がついたと思った、が。壁を突き破って大蛇型の竜——巨蛇(きょじゃ)爬竜アナコンが襲い来る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ