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【完結】竜殺しのリザードマン 〜竜に支配された世界で自分だけ“竜殺し”の力を手に入れて“劣等竜リザードマン”になった男の逆襲物語〜  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第3章 帝王竜ファフニール編

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第73話 コロの人間観察1・衣服

 コロは、北西の秘密の隠れ家で井守(いもり)爬竜ニュウトの死体を処理し終わったところだった。


『ふぅ、疲れたべ。……さて、ようやくお楽しみの時間だべ』


 口角を上げて歯をむき出しに(おり)の中の人間二人を見つめる。


「ひぃ」


 女が檻の奥まで後ずさる。男は緊張で体を強張らせ、顔が青ざめていた。ついに食べられてしまう時が来たのだと勘違いしていた。


『ほぉら、服だべよ』


 竜教から貰った穴が三つ空いた白い布を広げた。


 二人は、(いぶか)しんだ顔で竜と布を交互に見る。


「……これ、もしかして服?」


「まさか。俺達を喰うためにする前掛けだろ」


 コロは、瞳を輝かせながら檻の隙間から布を差し入れる。その行動に戸惑う二人。


「……もしかして、くれるの?」


 女が警戒しながらゆっくりと近付く。


「おい、気をつけろ……! 爪から血を送り込まれて眷属にされるぞ……!」


 そう言われても女は動きを止めず、ナメクジのような速度でジリジリと距離を詰め、ついに布の端を掴む。急いで握力を込めて奪うとゴキブリのごとく後ずさる。


 コロは、その光景に驚くでもなく、ニコニコ、というよりニチャニチャと笑って両者を見つめ続ける。


「見てる、すっごい見てるよ……! どうするの……!」


「くっ、とりあえず着てみるしかない……! ゆっくりだぞ、刺激すればたちまち餌だ……!」


 二人は恐る恐る、ヤギにでも食い千切られたような汚い穴に頭と袖を通した。お化けの仮装(かそう)のようになった両者。


 直後、コロが(ひも)を足元に投げる。


「ひいぃ! 蛇だぁ!」


「何言ってるの……。ただの紐だよ?」


 男は顔を赤らめる。


「じ、冗談だよ。蛇と紐を間違えるわけないだろ。つーか、これを巻けばいいのか……?」


 照れを隠すように紐を拾って腰に巻く。服というにはお粗末だが、見た目だけは貫頭衣(かんとうい)のようなものになった。


 コロは、満足げに眺め、早く交尾を開始しないかとワクワクして見続ける。


「……まだ見てるよ? どうしたらいいの?」


「し、知るか。踊ってみたらどうだ」


「え、でも私、運動音痴だよ?」


「そういう問題じゃないだろ……。いいから機嫌を取るんだよ!」


 いきなりタコのように踊る男。女も申し訳程度に手をヒラヒラさせて追従(ついじゅう)する。キラキラ目を輝かせるコロ。地獄である。


『おぉ、これが交尾! いや、流石にないべか? うぅむ』


 それから、謎のやり取りが小一時間ほど続いたのであった。



 外に出ていたリンドウは、帝王竜ファフニールが東へ飛び去ったのを目視していた。


『おんや、ファフニール様がお出かけとは珍しいべなぁ』


 人間を観察するのを一旦辞めたコロが、隣でコウモリを(かじ)りながら呑気(のんき)に言った。


『いつもあそこから動かないのか』


『そうだべな。よっぽど寝床がお気に入りなのかあんまり動かないべ』


 コロがしみじみと頷く。


(となると今が敵の戦力を削る好機か)


 今の内に衛竜四頭のどれかを倒しておきたい。


『そうだリンドウ。人間のことなんだべが、せっかく服を与えたのに変な踊りをするばかりで交尾する気配がまったくないべよ』


 それもそのはず、服職人がいるわけもなく、適当に穴を開けた布にヒモを付けただけのおよそ服とは呼べない何かで安心するはずもなかった。


 しかし、踊りとは一体なんだ、と思ったが言及しなかった。


 仕方なく次の策を講じる。


『そうだな……おいしい食事を与えてみたらどうだ。お前も腹が(ふく)れている時の方が元気だろう?』


『……たしかに! さすがリンドウ! 人間博士だべ!』


 相変わらずチョロい。これでまた時間が稼げるだろう。


(……ん? これは……!)


 リンドウが安堵したのも束の間、地面から異質な音がするのを尻尾と足裏で感知した。何かが暴れている気配。おそらくは戦闘。


『少し出かけてくる』


 嫌な予感がしたリンドウは、音のする方へ向かった。

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