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【完結】竜殺しのリザードマン 〜竜に支配された世界で自分だけ“竜殺し”の力を手に入れて“劣等竜リザードマン”になった男の逆襲物語〜  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第3章 帝王竜ファフニール編

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第72話 竜達の不穏な動き

 ファフニール帝国の北側で家守(やもり)爬竜ゲッコーは深刻な顔をしていた。仲間の井守(いもり)爬竜ニュウトを探していたが、一向に消息が掴めない。いつも居る水場や寝床にも姿はなかった。


『おかしい。俺に何の連絡もなく消えるわけがない』


 ここでは、竜が一頭くらい消えるなんて日常茶飯事だが、ニュウトが簡単にやられるとは思えない。ゲッコー共々、指示待ち竜とは違って上位の竜に目を付けられないよう(したた)かに立ち回ってきたつもりだ。


『ありえねぇ。ったく、世話がやける』


 文句を垂れつつも、もう少し北を捜索しようと翼を広げる。その瞬間、背後から細長くて巨大な竜が()い寄って来た。


 ——巨蛇(きょじゃ)爬竜アナコン。徒竜。蛇型で手足がなく、深緑系のまだら模様の体表を持つ——


 アナコンが信号を飛ばす。


『どうかしたか?』


『ニュウトが行方不明だ』


『そこら中にいるだろう』


 徒竜に固有名がないため出た発言だ。


『そうじゃない。頭に格子(こうし)状の傷がある奴だ』


『うーむ、知らんなぁ。それより腹が減ったよ』


 デクの棒が、とゲッコーは内心悪態をついた。


『探すのを手伝え。俺の予想では北側にいるはずだ。アイツはジメジメした場所を好むからな』


『腹が減っては動けんなぁ』


 大きなアクビをするアナコン。やる気が感じられない。


『ちっ、うるせー。後で俺の眷属竜分けてやるから今だけ頑張れ』


『よーし、頑張るぞぉ!』


 ゲッコーは、単純な奴と見下す。ただ、欲望に忠実な奴は(ぎょ)(やす)いとも思っていた。指で、行くぞと合図する。


 返事もそこそこに、二頭は帝国のさらに北側へと飛んでいった。


 少しして、ファフニール帝国の北北西にたどり着く。移動中も上空から北側をくまなく探していたが、残念ながら今のところ有力な手がかりはない。


 着地して探し続けていると、同行者のアナコンが何かに気付き、ピクリと動く。


『妙な反応があったぞぉ』


『本当か!? どこだ?』


『……地面の下から複数の気配だぁ』


『地下か? なぜそんなところに』


 にわかには信じ(がた)かったが、ゲッコーはとりあえずアナコンを信じて穴を掘ることにした。間違っていたらボコボコにするつもりで。


 しばらくゲッコーが穴を掘ると巨大な地下空間に出た。


『……なんだここは?』


 そこは、一部の竜達が楽園と呼ぶ場所だった。



 聖女ドゥエは、竜教教祖ウーノに死体のことを報告するためドラテオン神殿の奥へ歩を進めた。扉の隙間から食事をとっているか確認して、恐る恐る入室する。


「どうしたドゥエ」


「おとうさ、じゃなかったウーノ様に報告ですぞ」


 ぺろっ、と舌を出しておどける。


 ウーノはそれを(とが)めることもなく優しく微笑(ほほえ)んだ。二人は義理の親子という間柄だ。といっても国の承認を得たものではなく、二人の合意のもと自然な流れでそうなっていた。それにこの時勢に承認を得るのは難しい。


 五年前、竜が現れた時に二人は出会った。竜が暴れているどさくさに(まぎ)れてウーノが牢獄から脱獄した時、偶然見かけた恐怖でうずくまっている白髪の少女がドゥエだった。


 彼女は、家族が離れた場所におり、合流できなかったようだった。そこをウーノが声を掛けて一緒に迷宮へと逃げたのだ。


 この時、彼はすでに竜教再興を(くわだ)てており、ドゥエを利用しようと考えていた。子供は洗脳しやすいし、女子供の駒がいた方が何かと便利だと思ったのだ。


 そういう(よこしま)な気持ちで助けたのだが、一緒に竜教を復権させる過程で徐々に信頼関係が築かれていった。


 そしてドゥエは、いつしか彼を公的な場以外ではお父さんと呼ぶようになった。ウーノにもまだ人の心はあったのか、悪い気はせず娘のように可愛がった。


「そうか、神殿内で死体が出たと。ファフニール様に報告しておいた方が良さそうだな」


「では、誰かに言伝(ことづて)を頼みましょうか」


「いや、私が行こう」


「ですが、危険では?」


 竜も所詮(しょせん)は獣。気まぐれで(かじ)られたり、そのまま食べられたりしてしまう場合もなきにしもあらず。そのため余程のことがない限り、上層部は接触を避けていた。


「よい。たまには謁見(えっけん)しておかねば、忘れられてはかなわん」


 ウーノは死なないという自信があった。彼は死に関する嗅覚が鋭く、これまでの人生で何度も紙一重で死を回避してきた。それは当然魔法ではなく、第六感とでもいうべき人間の生存本能からくるものだと本人は自負している。


 重い腰を上げて立ち上がる。のっしのっしと象のように歩いて出口に向かう。


 ドゥエは、ニコニコと眺めていた。白い服で丸々としているので雪だるまに見えてカワイイと思ったのだが、言うと怒られるので自分の中だけで楽しむことにしたのだった。



 ファフニール帝国中央塔最上部。ウーノは、翼付きの人型になった通訳の“マタマタ二号”に(かつ)がれて最上部に到着した。


 中心には帝王竜ファフニール。光に照らされ、白く発光しているように見えて神々(こうごう)しい。真紅の瞳でウーノを見下ろす。


『何用だ』


 マタマタ二号が、緊張した面持ちで翻訳した。


 ウーノは汗を垂らしながらそれを聞き、発言する。


「我らがファフニール帝国周辺を荒らし回っていた(やから)の正体が判明したのでご報告を。それから神殿内に死体が出たのでそれについても小耳に挟んでおいて貰いたく」


『ほう、ネズミの名は?』


「賊の名は“紅鷲(あかわし)団ブラッドイーグル”。赤い外套(がいとう)が特徴の軍隊です」


『所在は(つか)んだのか?』


「もちろんでございます。ここに地図が。つきましては衛竜様にお力()えいただけないでしょうか。賊は相当な手練れであり、下位の竜様では力不足と存じます。ゆえに上位存在たる竜様の力が必要と判断いたしました」


 その言葉にファフニールは死神のように(いびつ)に笑う。


『面白い。待つのは飽きた。(われ)、自らが(おもむ)いてやろうではないか』


「え、なっ!」


 ファフニールは、ウーノとマタマタ二号を鷲掴みにして羽ばたき一閃、飛び上がった。


『レザバク、帝国は任せる。些事(さじ)を解決しておけ』


 近くにいた亀風の衛竜に告げた。


 ——長亀(おさがめ)爬竜レザバク。衛竜。亀のような甲羅と、それを突き破るように生えた四枚の翼が特徴——


 レザバクはファフニールを見上げて白いヒゲをさする。


『ふむ、お任せくだされ』


 帝王竜はその返事に満足してウーノに視線を移す。


『さっさと案内しろ』


 顔面蒼白のマタマタ二号が懸命に翻訳する。


「ひ、東でございます!」


 ウーノは、逆らうべきではないと判断し、せめて血圧が上がらないよう祈るしかなかった。


『クックック。さぁ狩りの時間だ』


 ファフニールは、口角を上げ、嬉々(きき)として東へ飛んでいった。


 残った長亀(おさがめ)爬竜レザバクは、ヒゲをさすりながら考え事をしていた。


『さて、些事(さじ)をどうするかのう』


 些事とは、神殿に死体が出たことについてだ。帝国では“事故”がつきものだが、放置するわけにはいかない。


 面倒とは思いつつ、レザバクは動き出した。

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