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【完結】竜殺しのリザードマン 〜竜に支配された世界で自分だけ“竜殺し”の力を手に入れて“劣等竜リザードマン”になった男の逆襲物語〜  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第2章 懸賞首狩り編

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第38話 遠征出発前・謎の女ヒサメ

 懸賞首狩人(かりゅうど)集会所ギフト。遠征部隊の面々が集合する中に遅れてフラズグズル姉妹が到着する。


 彼女達を赤毛の大男ヴェステンが(にら)む。


「おせぇぞクソガキ」


「時間には間に合ったでしょ。それに女子は時間がかかるもんなんだよー」


「オシメでもすんのか? ブハハハハ!」


 からかわれたアガウェーは、ヴェステンの(すね)を蹴っ飛ばす。が、残念ながら鎧を着ているので効いておらず鼻で笑われる。


「つーわけで全員(そろ)ったな。事前に言った通り三十人を均等に三部隊に分けて行動する。目的は酸樹(さんじゅ)竜と巨樹(きょじゅ)竜の討伐、ついでに樹王竜の巣も探す。いいな?」


「おうっ!」


 荒くれ者達が声を張り上げて了承した。


「細かいことは部隊長に聞け。大勢で出ると目立つ、俺らの部隊は先に行っとくぞ」


 ヴェステンが真っ赤で角付きの兜を被る。彼の全身鎧“闘牛竜鎧(とうぎゅうりゅうがい)”は真紅に染まっており、誰よりも目立つ。


 わざわざそんな鎧を着込む奴は、余程のバカでイカレ野郎だ。だが、実力が(ともな)っていればそれは象徴となり、畏敬(いけい)憧憬(しょうけい)を生む。


 ヴェステンはギフトで一、二を争う実力を持っており、その竜鎧を着ていても誰もバカにしない。そんな派手さと豪胆(ごうたん)さを兼ね備える彼は、賊を(まと)めるにふさわしい男と言えるのだ。


 そして、彼は威風堂々(いふうどうどう)たる歩みで肩を(いか)らせながら部隊員と共にギフトから出ていった。


 残るは二つの部隊。


 一つは、金のサラサラした髪に琥珀(こはく)色の眼をした優男“リンクス”がリーダーの部隊。


「我々はもう少しゆっくりしてから行きましょう。彼の尻を見たくないですからね」


 内輪(うちわ)で笑いが起こる。ヴェステンの派閥とは敵対関係にあり、事あるごとに揉めているのだ。


 リンクスの竜器は、二種の黄系色の線が入っている麒麟(きりん)竜鎧、それと蜂蟲(はちむし)竜の針槍(しんそう)を背中に背負っている。時折(ときおり)、ギフトの従業員の女性“レフティ”と視線を交えていた。姉妹は目ざとくそれを見て恋仲(こいなか)だと確信する。


 そんな彼の饒舌(じょうぜつ)な喋りに部隊の面々は夢中になっていた。さすが三大派閥の一つのリーダーで商業区を(まと)めるだけはある、とアガウェーは思った。


 それから、折りをみてリンクスの部隊も出て行った。


 残った最後の部隊は、他と同じく皆十頭以上の竜を倒している猛者(もさ)だけあって、歴戦の勇者を思わす厳しい顔の者や筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)な男ばかりだった。


 ただし、三人を除いて。


 その内二人は、もちろんポンコツ姉妹のアップルとアガウェーだ。鍛冶師キュクロに貰ったいつもの(さび)色に加工された竜鎧“(さい)獣竜鎧”を着ている。獣竜の素材はケイオスでは手に入りにくく高価だが、キュクロが護身用にこっそり二人に渡したのだ。もちろん出世払いで。


 そして、もう一人の二十歳前半くらいの女が姉妹に歩み寄る。氷のような青い瞳と長いポニーテール。髪色は黒かと思いきや光が当たると深海を思わす暗い青色を覗かせる。鎧も同様に深い青色だ。


「やぁ、私が君達の隊のリーダー“ヒサメ”だよん。よろしくね」


「初めまして! アガウェーですっ! こっちはお姉ちゃんのアップル!」


 姉が軽く頭を下げて挨拶する。


「アップルです。以後お見知り置きを」


 アガウェーが一歩前に出てヒサメを(あお)ぎ見る。


「ヒサメさんって美人ですね! 絵画から出てきたみたい!」


 ヒサメは(せき)を一つして口を開く。


「うーん、美人なんて竜の前では何の役にも立たないよん。奴らは人を見れば平等に食い殺そうとしてくるし。その点では人間より(ぎょ)(やす)いかもね」


 否定はしないんだ、という台詞を辛うじて飲み込むアガウェー。


「でもおかしいなー、これだけ綺麗なら一回くらい会ってても良さそうなのに」


「私はあまり竜を狩らないし、外の哨戒(しょうかい)任務ばかりだからね。今回は偶然帰還してたからキュクロに頼まれて引き受けた次第だよん」


「あっそっかぁキュクロさんの派閥だもんねー……ということは、キュクロさんの愛人だったり!?」


 その言葉にアップルが(あせ)る。


「お、おいそんなわけないだろ! まずキュクロさんは未婚だぞ! それを言うなら恋人だろ! 愚妹(ぐまい)が、す、すみません!」


 アガウェーの頭部を掴んで姉妹揃って深く頭を下げる。


「いや……気にしないでいいよん……」


 この時ヒサメは、自分は愛人顔なのか、と内心傷付いていたのはまた別の話。



 犯罪迷宮都市ケイオス第三出入口。そこから少し離れた森の奥にヒサメの部隊が集まっていた。


「基本陣形は三つの部隊を三角形になるように配置するよん。魚鱗(ぎょりん)の陣に近い感じ。ヴェステンの部隊が先行して、リンクスは右翼、私達は左翼を担当する。目的の竜以外は戦闘を避けるよん。無駄に体力を削るわけにはいかないからね」


 みんな黙って頷く。アップル、アガウェー姉妹も真剣な表情で耳を傾けている。


「もし、やむを得ず戦うことになったら数名で速やかに処理。不可能ならば私と他の部隊に合図を送ること。各々判断力が試されるからね。一人の軽率な行動で部隊が瓦解(がかい)しかねないことを(きも)に命じておくんだよん」


「おうっ!」


 全員が返事をした。


 移動は一斉に行うため他の隊の合図を待つ。


 姉妹もソワソワと体を動かしながら待機していた。そこに灰色系のマダラ模様の鎧を着た汚らしい()せぎすの男が近寄ってくる。


「あっしらの足を引っ張んねぇでくれよ。お嬢ちゃん達。ゲヘヘ」


 以前、姉妹に爆樹竜を押し付けた男“ドライツェン”だ。


「それはこっちの台詞だよ! また竜を押し付けて逃げないでよねっ!」


「何の話っすかねぇ。あっしは寝たら過去を忘れるんでさぁ」


「都合のいい頭だねー。それなら寝る前に蹴っ飛ばすのが良さそうだね」


「ひっひっひっ、威勢がいいねぇ。遠征は長い。いつまでその虚勢(きょせい)が持つかねぇ?」


 ドライツェンは不気味な笑みを浮かべながら、違う人間の元へ去っていった。


 それから各々緊張した面持ちで待機していると、他の部隊から光の合図が送られてきた。


 そして、遠征が始まる。

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