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【完結】竜殺しのリザードマン 〜竜に支配された世界で自分だけ“竜殺し”の力を手に入れて“劣等竜リザードマン”になった男の逆襲物語〜  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第1章 ガーラ大迷宮編

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第16話 白獅子団2・不穏

 リンドウの尻尾が半分ほど再生した頃、三区に到着した。


 道中、地図にはない壁“偽壁”を見つけた。迷宮に住む人々は、竜やその他の獣、悪党などから身を守るためこのような偽物の壁や罠を張ったりするのだ。


 特に一区は大陸への出入口がいくつもあり、侵入者(お客さん)が来るので多く設置されている。


 リンドウは周囲にある多数の足跡を観察していた。人だけではなく馬のもある。


 程なくして、密かに偽壁の隙間から潜入していた相棒コバコが蛇のようにニョロニョロと這いながら戻ってきた。


『にんげんいっぱい』


 地面に文字を書き、触手を大きく広げてアピール。


(この辺りは全滅していてもおかしくないと思ったが、白獅子が善戦したか)


 コバコはさらに続ける。


『しろいの、すくない』


 白獅子団員の数が少なかったらしい。


(周囲に無数の足跡、少ない白獅子。市民を残して行軍か。……恐らく総力戦だろう)


 長期戦では人類が不利なのは自明の理だ。合理的判断と言える。足跡は一区の方へ続いていた。


 コバコがタコみたいにウネウネした後、体内から羊皮紙を出す。紙には白獅子団が立案したであろう作戦概要が書かれていた。ちゃっかりしているコバコを撫でて褒めてやり、文にひと通り目を通す。


(……やはりこの作戦にすべてを賭けるようだな)


 最後の備考に気になる一文があった。


 “ティラノの能力は複数の目撃証言から物体を浮遊させる能力と推測。なお、判断材料不足のため過信は禁物とのこと”


 少しでも情報があるのは助かる。ある程度現状は理解した。気がかりなのは三区に入って竜を見ていないことだ。一区の巣の防衛に向かっていると思われるが、もしくは——。


(急いだ方が良さそうだな)


 リンドウは二区へ行く予定を変更して一区へ直接向かった。



 一区の北側。三区側から進軍しているのは金髪の副団長デプティー率いる白獅子団第二部隊だ。


 一般団員は竜器ではない白い鎧で全身を覆っている。兜には半透明のレンズが嵌め込まれており、これで目や耳から竜の血が入らないようにしている。


 竜器は、素材が手に入りにくく、さらに加工も難しいことからここでは位の高い者にしか渡されない。そのため、隊長クラスの役割は指揮だけでなく直接戦闘においても非常に大きいものとなっている。


 そんな白い集団は行軍を順調に続けていた。が、途中で違和感を覚えるデプティー。


「おかしい。眷属竜しか会っていないぞ」


「……確かに。妙ですね。ですが、周囲の哨兵からの異常報告はなしです」


 先頭を進む馬に乗ったデプティーと配下のメガネ男(兜に付いたレンズに度が入っている)サンボが(いぶか)しむ。


 いくつか広間を通ったが徒竜以上は見かけていないし、さらに眷属竜も思ったより相対していない。嫌な予感はするものの、予定を変えるわけにはいかず、行軍は止めない。


 その時、進行方向から振動。通路から竜の首が見える。大人二人分の高さで二足歩行の徒竜だ。


「チッ、音竜かよ」


 ——音凶竜パラサウロ。頭部にヘチマのような筒が付いており膨らますことで音の波動を出したり、遠くの仲間に声を届けたりする——


 ようやく徒竜が現れたと思ったら面倒なタイプだ。高音を出して仲間を呼んだりする。


「散開! サンボ、奴の注意を引け! オレが首を獲る!」


 その怒号に一斉に散り、副団長は一気に距離を詰める。まだ、警戒度が低い音竜へ接近。


 気付いた音竜がブレスを吐こうと頭部の筒を拡げた——玉響(たまゆら)、それを矢が貫いた。


「させませんよ。あなたの倒し方は心得ています」


 竜器の弓を引いた当人サンボがメガネの代わりに兜をクイッと上げ、したり顔で言った。


「ウロロロ!」


 出鼻を挫かれた音竜は怒り狂う。怒ったら視野は狭くなるもの。


 それを理解していた副団長は隙をつき、馬を踏み台に敵の真上に跳んでいた。


 竜の素材で作られた装備“竜器”には、竜の筋繊維でできた“竜衣(りゅうい)”という身体能力強化用肌着がある。


 デプティーは“飛蝗蟲(ひこうむし)竜の竜衣”を使い、足を強化して音竜の上を取ったのだ。空中でうまく体をひねり、脊椎目掛け“鍬形蟲(くわがたむし)竜の顎曲(あごきょく)剣”を振り下ろした。竜の首は木の枝でも折るように軽くへし折れた。


「さすがです副団長」


「お前達のおかげさ」


 デプティーは肩をほぐすように回した。


 “竜衣”は身体能力を上げるが体への負担が大きい。子供や老人、鍛えていない男女は肉体が耐えられずしばしば骨折する。また、加工も竜器の中で一際難しく、並みの職人では作れない。


 ゆえに職人の少ないガーラ大迷宮では希少であり、白獅子の中では信頼のある幹部しか装備することを許されていないのだ。


 デプティーは体に異常がないことを確認して移動を再開する。が、その時だった。


「ウロロロロロッ!!」


 四方から音竜の鳴き声が(とどろ)いてくる。それを合図に火竜や頭岩竜などの徒竜が続々と姿を現した。


「なっ!? 囲まれている!? 歩哨(ほしょう)はどうした!?」


「わ、分かりません!」


 何らかの方法でこちらの位置を把握して気付かれないように立ち回ったのか。デプティーの額から汗が流れる。


「全員南へ! 作戦は続行する! ティラノの巣へ向かうぞ!!」


「応ッ!」


 デプティーが馬に乗り、進撃を開始しようとした時だった。


「副団長危ない!!」


 気付くと低空飛行し接近していた火竜が大口を開けていた。完全に不意を突かれ、デプティーは反応が遅れる。


(こんなところで! ……くそッ、すまねぇ、リダ)


 走馬灯が流れる。彼は死を覚悟した。が、その刹那(せつな)。竜の首が音もなく落ちる。砂煙の走る先、何かが立っていた。


 黄金の瞳、漆黒の爪と鱗。翼のない竜。


 ——リンドウだった。

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