表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】竜殺しのリザードマン 〜竜に支配された世界で自分だけ“竜殺し”の力を手に入れて“劣等竜リザードマン”になった男の逆襲物語〜  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第5章 地王竜トラルテクトリ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

139/216

第139話 地王竜戦1・開幕

 黒狼(こくろう)団ダークウルフ一行と、その他数十人の精鋭達は、リンドウ達が衛竜を引きつけている間に部隊を分けて北側から火山へ潜入していた。


 そして、そのシトラテペト山の火口で地王竜と対峙(たいじ)する。


 ——地王竜トラルテクトリ。四足歩行で、色とりどりの宝石のような鱗に包まれた城塞(じょうさい)のような巨躯(きょく)に、巨人の外套(がいとう)のごとき極大(きょくだい)な六枚の翼を持つ。土や石を操ったり、生成したりする“大地魔法”を使う——


 コモドゥの言っていた通り、頑丈そうな土の鎧を(まと)っており、所々から宝石のような鱗が飛び出ている。


「ヒッヒッヒ。団長ォ、殺してもいいんだろォ?」


 サイコが言った。


「ああ、構わないぞ。出来たら酒をたらふく()ませてやる」


 ジャンヌ達がやるべき事はポレオン軍が爆弾で鎧を()がすまでの時間稼ぎだ。軍が火口上部に陣取るまで注意を引く。


「ギギギギ」


 地王竜が暗黒の瞳で眼下の人間達を(にら)む。逃げる様子はない。


「ふん、まだまだ余裕そうだな。だがいつまで持つかな」


 大きく息を吸うジャンヌ。


「全員突撃! 翼を優先的に狙えっ!」


「うおおおお!」


 彼女の号令を合図に一斉に散開する。


「ギ、ギギ」


 敵の体が発光する。大地魔法により、鎧の(いた)る所から竜の手型の土が生えた。それらが触手のようにうねり、精鋭達を握り殺すべく迫る。


「美人の腕以外、抱かれてあげないよ」


 黒狼団おしゃべり役の女好きヨクスがキザな台詞を吐きながら回避。曲剣を振り下ろし、指を切り落とす。だが敵はすぐに土を補給して再生した。


「ヨクスくん、喋ってると舌噛んじゃうよん」


「ヒサメちゃんが手当てしてくれるならそれも悪くないさ」


「言うこと聞かない悪い子には、手当てしてあげませーん」


 べっ、と舌を出して(おど)ける愛人顔ヒサメ。深海色の兜から出るポニーテールが扇情(せんじょう)的だ。そんな彼女が、しなる紅い(いばら)の剣、“薔薇(ばら)(べん)剣・紅蓮(ぐれん)”を地王竜の脇腹に叩きつける。


 土鎧を削り、表出した肉体。そこをヨクスが曲剣で斬りつけた。


「ギィ!」


 地王竜が痛みに叫ぶ。すぐさま土触手でヒサメ達を殺しにかかる。


「一旦、距離を取るよん」


「はいよ。お嬢さん」


 無理はしない。時間稼ぎなのだから。


 一方、本と酒好きのサイコは急所を狙うべく、敵の頭部に回っていた。


「ヒャハハハ! 小回りきかねぇなぁ!」


 ハエのように飛び回るサイコに地王竜のイライラが溜まっていく。


「吹き飛びなァ。芋野郎ォ」


 頭に砲撃。しかし。


 敵は急激に体を横回転させ、巨木のような尻尾を()ぎ払う。


「ヒャハ! やれば出来んじゃねぇか!」


 サイコは動揺一つ見せず跳んで回避した。


「ひっ、ぎゃあ!」


 代わりに仲間がミンチになった。


「オイオイ、ひでぇ奴だなァ! ギャハハ!」


「……あまりやり過ぎるなよ」


 跳んで無防備になっていたサイコを斧好きハルバドが手投げ斧で援護した。


「ググググ!」


 地王竜は仕留めきれない獲物に(ごう)を煮やし、攻撃に変化をつける。体の側面にクレーターのようなものができ、そこから火山の噴火のごとく岩石を飛ばした。


「あ」


 叫びをあげる間も無く、一人の精鋭の頭が消し飛んだ。


「ぬわぁぁ!」

「クソッタレ——」


 四方八方に放たれる砲撃に猛者(もさ)達が死んでいく。


 だが、黒狼団だけは無傷だった。いくつも死線を乗り越えてきた彼らにとってこの程度の攻撃、難所ですらない。


「ヨクス、サイコ。(すき)を作れ」


 ジャンヌが二人に小さく(つぶや)いた。


(おお)せのままに」

「ヒヒヒ、任せなァ」


 二人は横殴りに降る砲弾の雨をくぐり抜けながら接敵(せってき)する。次々と“海泡(かいほう)鉱竜の鱗”を(ふく)らませ、浮遊する泡の足場を作っていく。


 ジャンヌがそれらに器用に飛び移り、容易に敵の背中へ登った。


「図体がでかいというのも考えものだな」


 皮肉を口走りながら、六枚の翼のうち右半身の一枚を斬る。


「ユユユユユ!」


 地王が奇妙な叫びを上げながら、背中に生えた土の鞭でジャンヌを殺しにかかる。


「ふっ、少しはやる気が出たか? だがこんなヒモでは私は殺れんぞ」


 ジャンヌは土の触手をなぎ払いながら、一度、距離を取る。敵は宙に浮いた彼女を逃すまいとさらに土の腕を伸ばす。


「おねぇ様には触れさせないよん」


 ヒサメが鞭剣で援護。


「その通り。彼女に触れていいのは俺だけさ」


 ヨクスも曲剣を投げて援護。


 何事もなく無事に着地したジャンヌ。連携は相変わらず完璧だ。


「チチチチチチ!」


 地王竜は気に食わないのか、またしても奇妙な叫声(きょうせい)を上げる。すぐに首を持ち上げ、(ほお)(ふく)らませると上空に岩を吐き出した。それが天高く昇り、空中で破裂。破片が隕石のごとく降り注ぐ。


「う、うわあああ!」


 また一人の精鋭が死んだ。


 土の触手の追撃もあり、場は混沌と化していた。実力のないものから命を落としていく。


「耐えろ! 回避に集中!」


 黒狼団も必死に避け続ける。誰がいつ死んでもおかしくない状況。連携も取れず、ただただ我慢の時間が続く。


 地獄のような時が過ぎ、隕石の雨が止む。だが、落ちた隕石が土人形に変わっていく。あっという間にそこら中が地王竜の作りし兵隊で埋め尽くされた。


「ふん、まだまだ楽しませてくれそうだな」


 終わりの見えない死闘が続く。



 黒狼団が地王竜と戦っている隙にポレオン軍は慎重に、だが素早く火口の(ふち)に陣取ろうとしていた。


「おい、見ろよ。黒狼団つえー!」

「個人の判断力もさることながら連携も完璧だ」

「俺ならすでに五回は死んでるな」


 感心しっぱなしの野次馬を見て、ポレオン軍の指揮官は肩を(すく)めた。


「まったく、お前達。観光じゃないんだから感心してないでキビキビ動く。我々が作戦の(かなめ)なんだぞ」


 その時、背後にヒヤリとしたものを感じた。急いで振り返ると、山を駆け上がってくる一頭の毛鱗(けうろこ)に包まれた銀眼の竜が目に入る。


 それは、銀狼獣竜フェンリルだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ