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【完結】竜殺しのリザードマン 〜竜に支配された世界で自分だけ“竜殺し”の力を手に入れて“劣等竜リザードマン”になった男の逆襲物語〜  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第5章 地王竜トラルテクトリ編

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第137話 分断2・金鉱竜ゴルド戦

 リンドウは、シトラテペト火山の南東で黄金の体を持つ金鉱(きんこう)竜ゴルドと対峙(たいじ)していた。


 地対空の状況。周囲に高地(こうち)はほぼない。下手に傷を負わせれば逃亡するだろう。(ゆえ)に一撃で仕留めるか、少なくとも翼の半分をもぎ取らなければならない。


容易(ようい)じゃないな)


 だが、それはいつものこと。今までも不利な状況から勝利してきたのだ。今更、(あせ)ることもない。


『来ぬのなら、こちらから行くぞ』


 ゴルドの両手が発光すると同時、液体になった魔法金が溢れ出した。波打つ鞭となってリンドウを狙う。


『つまらない攻撃だな』


 リンドウは、足に力を込めて難なく避ける。さらに間髪を()れずブーメラン状の鱗を投げた。


『それが面白い攻撃か?』


 首を軽く横にずらし回避された。だが、伊達(だて)にブーメラン状な訳がなく、孤を描きながらゴルドの背中に迫る。そのまま首を切断する、と思いきや、空中で破裂。中に仕込んでいた竜殺しの血液の雨が降る。


『ふん、雑魚ほど奇策(きさく)に頼る』


 冷笑するゴルドは一瞥(いちべつ)もせず、羽ばたいて回避した。


『ゴルル! 竜殺しの血とは厄介(やっかい)よな。が、手品はタネが分かればどうということはない』


『さすがだな。カラスよりは頭がいいようだ』


『ガハハ! そうだろうそうだろう……ん? 褒めているのか?』


 一拍(いっぱく)考えるゴルド。あまり頭は良くない。


『まぁいい、さっさと死ねぃ!』


 再び両手が発光して黄金の波が顕現(けんげん)した。それがリンドウごと大地を飲み込む。下には、金の湖が出来ていた。


『ゴルルル! この程度で死ぬ貴様ではなかろう! さっさと出てくるがよい!』


 反応はない。


『……ま、まさか、居ない!? また逃げおったか!?』


 ゴルドが地上を(くま)なく探していたその時、背後に気配。見ると、金色の物体。


『なっ! いつの間に!? だが!』


 一瞬の隙もなんのその、背中から黄金の槍を飛ばし、それを貫いた。しかし、それはリンドウの【脱皮(だっぴ)】した皮だった。本体はその裏にいた。


(掛かったな)


 まず、リンドウは黄金の波が襲いかかってきた時に、死角が多いのを利用して一瞬で穴を掘り、身を隠して移動。その後、大跳躍で敵の上を取ったのだ。


 【体色変化】で金色にしたのは敵に見つけやすくさせるため。ゴルドは死角を補うため自身の体に反射したものを(とら)えていた。なので背後の攻撃を知ることが出来たのだ。


 リンドウは、それをブーメラン型鱗を投げた時に見抜き、体を金色にして光を反射することでワザと見つけやすくした。そうすることで敵に一手使わせることに成功。


(まずは一撃……!)


 リンドウは、脱皮殻(だっぴがら)を足場にゴルドへ接敵、翼を一枚噛みちぎった。


『グゥ、やりおる!』


 敵は一度、距離を取るべく羽ばたく、が。


 リンドウは体に付いている(とが)った鱗をクロスボウのごとく射出した。筋肉を急激に収縮させることで発射したのだ。これで投擲(とうてき)動作を省略して相手の(きょ)を付ける。


『ぬぅ! 芸が細かい……!』


 ゴルドは若干の(あせ)りを覚えるが、体を液体にしてどうにか(かわ)す。


 しかし、間を置かずリンドウは残しておいた足の皮を“部位脱皮”した。それを泡のように弾けさせ、足場にして強襲。


『まだまだ!』


 ゴルドは体を器用に畳んで避ける。バカとはいえ衛竜。簡単には倒せない。


 このままでは、落下して形勢逆転だろう。だが、リンドウには最終兵器——コバコがいる。


 その相棒が急激に膨張(ぼうちょう)、岩のような球体となった。リンドウは、それを足場にまたしても跳躍。体勢を崩している敵へ一直線に向かう。


『ぬ! やらせぬっ!』


 ゴルドが翼を引っ込める。が、リンドウの狙いは。


『翼を守っている場合か?』


 直後、鉤爪(かぎづめ)一閃。


『なぬっ……!?』


 敵の首を切断した。一撃目で翼を狙っていると思考誘導し、翼を(かば)ったところを本命の首を狙ったのだ。全ては布石。リンドウに接近を許した時点で勝負は決まっていた。


『ぬうぅ! ……見事っ!』


 落ちる首。その顔には悔いのない清々(すがすが)しい表情が浮かんでいた。


(よし、次だ)


 ここまでは順調。リンドウは周囲の戦況を瞬時に把握(はあく)し、次の衛竜へ向けて大跳躍した。

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