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【完結】竜殺しのリザードマン 〜竜に支配された世界で自分だけ“竜殺し”の力を手に入れて“劣等竜リザードマン”になった男の逆襲物語〜  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第4章 リザードマン殺し編

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第103話 樹竜戦

 コバコと合流したリンドウが国境跡の地下から外に出ると、あいにくの豪雨だった。


(恵みの雨であればいいがな)


 視程(してい)が悪くなり、リザードマンには有利と思えるが、こちらも感知が効きにくくなるためあまり良い状況とはいえない。とはいえ、良い状況なんてのは、一刻も早く迷宮へ逃げ込むことだけだが。


 弱った体に(むち)を打ち、水音(みずおと)を立てながら()ける。少し進むと、眼前にチチュウ湖と呼ばれる対岸が見えないほどの巨大な湖が現れた。


(くっ、思ったより西に来すぎたか)


 リンドウの目的地である“ドレミ村”は、湖を挟んで北東にある。


(雷王がいつ来るか分からない状況で湖を横断するのは無謀(むぼう)か)


 水上を走るにしても(もぐ)るにしても、雷使い相手に水場は危険すぎる。


 となると、迂回(うかい)するしかない。右か、左か。


(少し戻って右のほうが早い、が)


 リンドウは、左回りを選んだ。戻れば大量の竜が待ち構えている可能性が高い。急がば回れだ。それに策を成就(じょうじゅ)させるためには少し時間を使いたいというのもある。


 だが、こちら側はアマゾ大森林にも近い。雷獣と接触するかもしれない。


『ハッケンハッケン!』


 突然、上空に鳥らしき何かが現れた。


 瞬間、更に上から雨雲を割って巨躯(きょく)の竜が降下してきた。


 ——砦樹(とりでじゅ)竜ハイペリオン。徒竜。大山(おおやま)見紛(みまが)うほどの巨大な体躯(たいく)を持つ竜。自身や物体に空間を作る“空間魔法”を使う——


 胸部に開いた穴から一頭の樹竜と大量の鳥型魔法体が出てくる。


『ようやく、ようやく見つけたぞ! リザードマン!』


 ツルが巻き付いた鳥型樹竜が、鬼のような形相(ぎょうそう)でリンドウを見下ろしていた。


 ——鳥花(ちょうか)樹竜バードパラダイス。徒竜。鳥型の魔法体を生む鳥魔法を使う——


『貴様が殺した骸樹(がいじゅ)竜様と天樹(てんじゅ)竜様を覚えているか?』


『知らないな。薔薇(ばら)の奴ならかろうじて覚えているが』


 もちろん、すべて覚えているが敵の求める回答はしてやらない。


『聞いていた通りのクズだな。あれだけ仲間想いの方達を殺すなんて許せぬ。貴様をここで()たせてもらう! 地獄で後悔しろ!』


 刹那(せつな)、敵が両腕を広げたと同時に色とりどりの鳥型魔法体が放射状に放たれる。


 それらが(たば)となり、リンドウに迫る。


 リンドウはギリギリの間合いで(さば)きながら反撃の機会を(うかが)う。


 が、いきなり鳥の一体が視線をリンドウに向けると口を開いて炎を吐いた。


(なっ、この魔法体……じゃない!)


 リンドウは少し余っていた皮を【脱皮(だっぴ)】することにより(なん)を逃れる。煙を出しながら見上げた先に二頭の竜。


『キキキ、器用だねぇ』

『ギギギ、器用だねぇ』


 ——朱鷺(とき)樹竜トキソウ。徒竜。薄紅色の鳥型の竜。火魔法を使う——


 ——(さぎ)樹竜サギソウ。徒竜。白色の鳥型の竜。水魔法を使う——


(くっ、こんな単純な偽装も見破れないとは)


 普段なら簡単に見分けられるが、思った以上に疲れが出ていたようだ。視力も感知能力も低下している。


 間髪(かんはつ)()れず、敵が動く。


『ハイペリオン!』


 信号を聞いた(とりで)樹竜は、自身の腹に巨大空間を開けた。


 中から、背中に筒型の突起がある竜が数十頭出てきた。


 ——砲樹(ほうじゅ)竜テッポウウリ。背中にある筒から魔法を飛ばす“砲撃魔法”を使う——


『撃てぇぇぇぇ!』


 合図と共に砲撃が開始された。轟音(ごうおん)と共に魔砲弾が放たれてリンドウを襲う。


『休む(ひま)を与えるな! 物量こそが正義だ!』


 鳥花(ちょうか)樹竜の命令により、砲撃の雨が降る。(ほとり)に穴を開けて湖に水柱が上がった。


(ッ、息が切れる……)


 リンドウは必死に回避に(てっ)する。だが、砂礫(されき)土塊(つちくれ)が肉体を(けず)り、爆音が精神を(むしば)んでいく。


 肩で息をしだしたリンドウに、休む間もなく次の命令が下る。


『次だ! ハイペリオン!』


 ハイペリオンの巨大な口から、全身樹皮のような茶色い肌に黒い(とげ)が密集して生えた爆樹(ばくじゅ)竜ダイナマイトツリーが降下してくる。フラズグズル姉妹がアマゾ大森林で戦った自爆魔法を使う竜だ。


『やれ! 爆樹竜!』


『お任せあれー!』

『お任せあれー!』

『お任せあれー!』


 躊躇(ちゅうちょ)なくリンドウに突撃して自爆する。


(趣味が悪いな)


 リンドウは、回避しながら敵を自爆させないように魔臓(まぞう)を潰していく。


 鳥花(ちょうか)樹竜は、爆樹竜の献身的な行動に涙を流して天を(あお)いでいた。


『すまないな同胞(どうほう)達。お前達の(とうと)き犠牲は奴の首を差し出して(むく)いよう』


 敵は感傷(かんしょう)に浸りやすいタイプだった。


(頭は良くなさそうだな)


 爆煙で見えなくなったリンドウは、密かに湖底に潜っていた。そして、勢いを付けて水上に飛び出す。


『キッ?』

『ギッ?』


 一瞬でトキソウとサギソウの首が飛んでいた。砲撃により上がった水柱を【水上歩法(すいじょうほほう)】で駆け登って上を取ったのだ。


『な、いつの間に!?』


 鳥花樹竜は、動揺するが、瞬時に切り替えて鳥の魔法体を飛ばす。


 それをリンドウは【デスロール】で空中回転し、血入りの鱗を飛ばしてかき消した。


『チッ!』


 鳥花樹竜は、自身の側にも飛来した鱗を懸命にかわす。どうにか数ヶ所(けず)られただけで済んだ。


 だが、リンドウが狙ったのは、さらに上に居る砲樹竜だ。


「ギィ!?」


 砲樹竜の目や翼を切り刻んで(ひる)ませた。そして、一頭の竜が、上に向けて砲撃。


 誤爆。


「グォォォォォォ!」


 腹に砲撃を受けた(とりで)樹竜が激痛に叫びを上げる。


『ハイペリオン! 貴様、よくも!』


 下に降りたリンドウは、すでに陸地に上がっていた。


『デカブツってのは、邪魔になりやすいな』


『何を——』


 突如として鳥花樹竜に影がさす。上空を見上げると、砦樹竜が落下してきていた。


『ば、ばかな! ハイペリオン! どうした! 今のでやられるはずがない! 応答しろ!』


 すでに死んでいる砦樹竜は、白目を()き、そのまま自由落下で鳥花樹竜の真上へ。


『う、うわあああああ!』


『叫んでいる場合か?』


 (あせ)る敵が落ち着くのをリンドウが待つはずもなく、距離を詰めると喉を喰い破った。


「ぐげ」


 ()抜けた声を上げて鳥花樹竜は死んだ。


 程なくして、巨大隕石が激突したかのごとく、湖に砦樹竜が突っ込み、大津波を起こして雨を降らせた。


 そして、絶命したハイペリオンの上には、水飛沫(みずしぶき)の雨に打たれるコバコ。リンドウが、戦闘のどさくさに紛れてぶん投げておいたのだ。上手く砦樹竜を殺してくれたようだ。


(……アイツは)


 相棒の横には見知った人間の女。深海のような深い青の全身鎧を着て、衛竜の頭部を左手に持っている。


「神様、お久しぶりだねん。英雄ヒサメさんの登場だよん」


 現れたのは、フラズグズル姉妹のお守り役で黒狼(こくろう)団新団員ヒサメ・オキクルミだった。

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