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ステージ:1~3

 どういうわけか、俺は再び目が覚ました。


 ……意識が戻った?


 意識が戻るとともに、疑問が浮かび上がった。なんで?と。


 反射的に記憶からその答えを探すと、直前の記憶を思い出してしまった。


 骨や身体がとんでもない重量に押されて、ぐちゃぐちゃになる。嘔吐感が体内から押し出され、視覚の情報も赤く染まっていく。次第に、黒くなる。


 それは、死の恐怖がだんだん迫ってくる記憶。それは、自分が死んでいく記憶……その感覚は、今にも体中に残っている。


 うっ!もう思い出すのはやめよう……


 身体の震えが止まらないが、俺はなんとか自分の注意力を別のことに集中した――周りのことを観察し、思考する。


 そう。思考することによって、恐怖心を和らげる。


「ひっ、ひぁあ……」


 そして、幸いというべきか、一人の女性の声が分散させてくれた。


 俺は声の方向に注視すると、そこに虚ろな目になって、精神恍惚な女性が床に座り込んでいる。全身の震えが止まらなくなり、ただただ空虚な空間を見つめている。


 女性の顔はちゃんと覚えている。あの優しそうな女性だ。その様子から察するに、彼女は俺と同じ、記憶が残っているだろう。


 でも……変だ。


 俺は間違いなく見ていた。


 頭が風船のように膨れ上がって、彼女が死んでいく様……


 しかし、どういうわけか、俺たちは「死んでいない」。死んでいないうえに、生きている。


 俺はここでぶっ飛んだことを思いついた。


 恐らく、俺たちは「生き返った」らしい。変な結論だが、今はこういう結論しか出せない。


 可能性を潰せば、残るやつはどれだけ荒唐無稽でも、それは答えになる……が、あくまで「考えつく」可能性としての話だ。元々視野が広くないなら、どんなに可能性を潰せても、最後に残るやつは答えにならない。


 当然催眠療法とか、精神疾患とか、今の時代では心理的な知識がだんだん重視されていたと聞いていたが、俺たちの場合はどうにも違う気がする。


 それに、俺は精神的な治療を受けたことがない。何より、そう言った治療は「手術を施す必要がある」って聞いていた……


 催眠とか、精神的な病とか、俺にはないものだ。


 つまり、今の段階では、どんなに仮説をしても、結局「俺たちは生き返った」という結論しか戻れない。


 情報が少ないとこうなるもの。


 だから、正直、俺は彼女に色々聞きたいことがあるが、ここはひとまず彼女のことは後にしよう。


 何せ、気になることが多すぎて、優先順位を付けなきゃいけない。それに、精神を落ち着かせるためには時間も必要だ。彼女が落ち着く時間を待つ時、俺は色々調べたい。


 ……


 ……


 でも……一応彼女が下手に暴れ回らないよう気を付けながら行動するか。もしまた“何か”を触って、嫌なことがあると、今度こそ耐えられそうにない。


 俺は彼女のことを注意しつつ、周りを観察し始めた。


 すると、すぐ一つに気付いた。


「“お人形ちゃん”がいない……」


 ぬいぐるみだけでなく、メッセージも消えていた。注意深く見ていても、どこにもいない。残されたのは舞台劇みたいに地面に照らすスポットライトの光と道だけだった。


 それに、それが光というか、目に見える範囲というか……とにかく奇妙な光景だ。


 シンプルな10メートル長の歩道は、どういう原理か、あるいは暗闇だからだろうか、浮いているように見える。


 あの時、慌てていたから、細かく見れないけど、でももし、俺は足を踏み外したら、断層に飛び越えられなかったら、きっと同じく……


 心の中から不安の感情が湧き上がった瞬間、俺はすぐ首を横に振って、自分の気持ちを抑え込む。


「そういうのを考えるな……」俺は何とか感情を調整しつつ、更に他のものに注目する。


 そういえば――俺は彼女の方に一瞥した後、すぐ金髪男が立ったところに見始めた。


 死体はもう跡形なく消えていた。血の一滴も。


 そして、未だに落ち着いていない彼女の噴出した血塊もなくなった。


「都合の悪いものが消えるのか……?」納得はできないものの、こう仮定するしかない自分がいる。


「はぁ……他には――」


 こうやって、俺は少し彼女のことに気にかけつつ、自分が観察できたこと、思いついたこと、仮説を整理していた。


 ・メッセージは消えていた。ぬいぐるみも消えていた。他に死体や亡骸なども同じ。舞台の場所だけが残っている。


 ・俺と彼女は生き返ったが、なぜか不良(金髪男)は生き返っていない。


 ・まだ確認できていないが、彼女はたぶん俺と同じ、記憶が残っている……


 ・ジャンプ台らしいところに立ってみれば、ここは長方形の空間が見える。ざっとみ、面積は映画館のスクリーンくらいの大きさ。中の広さも大体同じ……でも、ジャンプ台と同じように確認したところ、なぜか三箇所に見えない壁がある。


 ・ここの断層の距離は約3メートル。俺なら簡単に飛び越えるが、やはりリスクがある。また、上から見た感じ、高低差の距離も約3メートル。


 ・木の板もいつのまにか消えていた。他の物はない。


 ……


 うーん、大体こんな感じか。


 一旦脳内に整理してみたものの、見当らしい見当がつかない。メッセージのことも合わせて考えても、あまり――「いやっ」


 待って……


 そういえば、メッセージではそれぞれの単語には引っかかっている内容がある。


 その一つ一つは、“ステージ”、“お人形ちゃん”、“画面越し”という。


 この三つの単語で、俺は何となく一つの仮説を立ててみた。


 俺たちは、もしかしたら「映画」の中にいる?


 しかし、自分が立てたというのも変だが、この仮説にはどうにも腑に落ちない。


 なぜなら、映画は伴奏がつくものだ。


 もし音楽家が伴奏してくれたら、確信は幾分増してくるが……未だに伴奏がない。


 つまり、「俺たちは映画の中にいる」というのは、やはり可能性として低いであろう。


 何より、今まで見ていた別のメッセージに、こういう単語もあるし。


 “ゲーム”、“残機数”


 正直、この“ゲーム”というのはたぶん俺と知っていたゲームとは全然違うだろう……いいや、絶対違う。


 その証拠は、「会話を主体にする」テーブルトークロールプレイングゲームは、こういう仕様ではない。


 そもそも、その“残機数”一体は何なんだろう……キャラクターが一度死んだら、普通に生き返れないはずだ。


「ふぅ……」一回深呼吸をしてから、俺は自分の頬をペシペシと叩く。


 とりあえず、考えるのはここまでにしよう。少しずつ自分の先入観に囚われている気がする。


 先入観と偏見に頼らず、情報を判断するのが探偵の役目だ。


 それに、


「……」彼女はどうやらだいぶ落ち着いたらしい。


 目がまだちょっと死んでいるような感じなんだが、体の震えはだいぶ治まった。特に俺は周りを調べていた時、何度も目が合った。


 でも、目が合う時、彼女は会話したがっている気がするが、精神がやられたからだろう。ずっと自ら話しかけてこずに待っていた。


 今はもう色々調べたので……それに、このまま放置するのも良くないと思う。


 俺は彼女に近づき、「落ち着きました?」と話しかけてみた。


 彼女は一回俺と視線に会って、「うん」と返事したら、うつ伏せになった。


 その目は、やはり生気が宿ってない。


「今、色々聞きたいことがありますが……無理やり聞くつもりはありません。でも、他愛のない話でもいいので、少し、交流してもらえませんか?」俺はなるべく親切な笑顔を作り出して、優しい声で話す。


 いくら苦手とは言え、酷なことはしたくない。無理やりしっかりさせるより、こうしたほうが一番適切な方法だろう。


 すると、彼女は少し反応を示してくれはいたが、返事がない。


 この反応に、俺は付け加えるように、「人は交流していくうち、恐怖心が和らげますよ」と言った。


 そして、この言葉が心に響いたのだろう。


 彼女はすぐ目尻に涙を堪えて、膝を抱えながらこう言った。


「怖いよ……」と。


 同調した方がいいのか、それともしっかりさせたほうがいいのか、人によって方法が違う。でも、過去の経験則によって、ここは――


「……そうですね。俺も怖いと思います。」――同調した方がいいと判断した。


 たぶん、仲間を見つけた安心感だろう。彼女はようやく頭を仰ぐ、俺に面と面を向かってこう言った。


「ねえ……ここは一体、何なんですか?」


「さあ……知りません。さっき調べたところ、わかるところも少ないですし。今の段階では、“不思議なところ”、としか言いようがありません。」


「そうですか……」


 彼女は俺が調べるところを見たから、俺が言うことは何となくわかっているはずだ。だから、深く追求しないつもりだろう。


 しかし、このままではダメだ。会話が途切れてしまう。気まずい雰囲気に流されて、何も話せなくなる未来が見えてしまう。


 何より、彼女は間違いなく「最初」に起きていた人間のはずだ。


 だって、金髪男の性格、言動からして、わざわざ彼女を起こして、「約束」をする意味がない。


 あの切羽詰まった雰囲気からして、早く「ここから出たい」、あるいは「ここから何かが得られたい」という願望のほうが一番しっくりくる。


 でなると、金髪男は俺を起こさない、「彼女も起こさない」というのが道理である。


 なのに、彼女は起きている……起きている上、「約束」をしていた。


 つまり、他の情報がなければ、


 優しそうな女性→金髪男→俺


 と、この空間に先に起きていた人の順番はこれで間違っていないはずだ。


 故に、ここで会話が途切れると困る。


 色々聞きたいことがあるから。


 ……とりあえず、無難なところから始めよう。


「そういえば、自己紹介がまだでしたね?俺は、田中太郎と申します。」


「田中、太郎……」納得できない表情。


「もしかして、仮名だと思っていますか?」


「い、いいえ!そんなこと――」


「まあ、本当に仮名ですけどね。」


「う……」


「でも、苗字は本当です。どうぞ、好きに呼んでください。」


 正直、こういうのが場合によってはもっと気まずい空気になるが、この異常事態では、彼女の精神状態からも含めて、逆に――


「……ふふ。ありがとう。田中さん。」――効果がある。


 彼女はちょっと楽しそうに笑った。たぶん、精神もこれである程度の余裕ができたはず。


「それで、そういうお嬢様の名前は?」


「ふふ……お嬢様って、今時そんな言葉を使う人がいませんよ?」


「そうなんですか?」俺は心底に疑問を浮かぶ。でも、普段ナンパしないから、そうかもしれない。


「ええ、まあ……大事なことじゃないですけど、あまり思い詰めなくていいと思います。」と彼女がそう返ってくると、俺が返事しようとする次の瞬間、彼女は続いて言った。


「それで、私は小早木こばやぎ さやかと言います。」


 小早木 彩……うーん。聞き覚えがないし、顔も当然見た覚えがない。この線で考えるのがおかしいか……


「じゃあ、小早木さんと呼ばせていただきますね?」


「はい、是非!」彼女は若干嬉しそうに言っていた。


 うん?この反応……名前に複雑な感情でも――というわけじゃなさそうだ。


 ……


 あ!もしかして……


「……さては、小早木さんの反応からして、『彩』が仮名ですね?」


「ふふん。バレましたか。なんか田中さんは探偵みたいですね。」


 さっきの仕返しというわけか。


「いや、みたいではなく、探偵ですから。」


「え!?そうなの?」


「……そうは見えませんか?」ちゃんと自分の身嗜みが整えていると思っているが……


「ごめん……むしろ、ホームレスとかに似ています。」彼女は申し訳なそうに言っていた。


 ホームレス……


「ああ、浮浪者ですね……って、そんなにですか?」予想以上の感想に、俺は思わず自分の服を見つめる。


 茶色のコードと、適当に見繕ったシャツにボロボロの短パン……


「うーん、ズボンは家の服だから適当なのは認めるが、浮浪者は言い過ぎませんか?」


「ええ……?」まただ。納得できない反応。


 でも、今回はちょっと腑に落ちない点がある。


 そういえば、さっきちょっと聞きたいこともあった。案外、アレとこれは関係があるかもしれない。もう一度に試してみるか……


「じゃあ、“お嬢様”には俺の様子がどんな風に見えていますか?ちょっと教えてくれませんか?」


「いや、田中さん。だからそのお嬢様という言い方が古いですよ。」たぶん俺がまたふざけているだろうと思って、小早木はこう笑いながら言った。


「すみません。ふざけるつもりはないので、教えてほしいです。」


「え……?あ!」と、彼女はたぶん俺が何を調べたいということに気付いてくれたようで、「うそだよね……」とボソッと呟いた後、恐る恐る感じに俺の様子を形容し始めた。


 すると――


「やはり……」彼女が言った様子に、俺は静かに最後まで聞いていた。そして、この言葉しか出てこなかった。


 認識の齟齬。そう。俺たちには、お互いに対して認識の齟齬がある。


 つまり、お互いが自分と想像した様子は全く違う。


 どうやら、彼女は俺への認識とは全然違ったらしい。全ては使い古びた服装、まるで浮浪者のような存在だということらしい。彼女もこのことに気付いていた。


 それに、俺の言葉ですぐこういう風に気付いたのは、彼女は案外察しが悪くないということが俺は気付いた。


「ね、ねえ……田中さん。あなたからは、私はどんな風に……」


「大丈夫ですよ。俺からすれば、小早木さんはごく普通の優しそうな成人済みの女性だと見えますが……」


「成人済み……私、高校生なんです。」


「……そうですか。」


 もうこうなると、認識を改める必要がありそうだ。


 ここを出るために、謎を解くために、俺一人の力はきっと足りないだろう。


 正直、俺の推測が間違っていなければ、ここはもしかして――こう考えながら、俺は少し周りの空間を一通り見て、最後はあの金髪男がいたところに見つめた。


 ――ここは、もしかして三人の力が必要なのかもしれない。


 そのためには、


「どういうわけなのかわかりませんが、小早木さん。」


「は、はい……」


「ここを出るために、協力してくれませんか?」彼女との協力が必要だ。

文章を分けるの下手です。

すみません。


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