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終に至るまで  作者: piccle
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終わりを求めて

 これは、とある1人の男の物語

 その昔、あるところに、<最強>の名を欲しいがままにする男がいた

 彼の進む道を拒む者は存在せず、たとえ神ですら彼には敵わなかったという 

 これから語られるのは、そんな男の英雄譚




 などではない!!!


「はぁ…」


 男は、生まれながらに最強であった

 誕生した瞬間にすでに最強だったのだ!

 あまりに強すぎたのだ


「つまらんなぁ」


 男は退屈していた

 強すぎる己という存在に退屈していた


 改めて言おう これは英雄譚などではない

 これは、最強に生まれた男の自殺譚だ




「ここが冒険者ギルドか。なんというか…普通だな」


 パッと見はどこにでもありそうな酒場、年季も入っていて古くさい建物だとすら言えるが、他とは一つだけ決定的に違うところがある

 建物の正面上 入り口のすぐ上にデカデカと貼り付けられている 冒険者ギルドの看板

 この文字がこの酒場こそが世界中からありとあらゆる能力を持った人間が集まる冒険者ギルドであることを物語っていた


 そして、そんな冒険者ギルドに俺がきた理由 それは


「すいません、依頼を頼みたいんですけど」


 依頼をすること 俺が冒険者になるなんてことはないだろう。中をざっと見渡したが、その誰もが鋼の筋肉を身に纏っている 鍛えてない俺じゃ到底無理だ

 魔法使いですらそこら辺の一般人よりかは鍛え抜かれてる 冒険者とは戦闘のエリートなのだ


「…よし、書けた。お願いします。」

「はい!…うん!記入漏れはないね!猫の捜索依頼受注しました。」

「はい、お願いします」


 今日俺が依頼しにきたのは猫の捜索、と言ってもこの猫は俺の家の猫ではない 俺の雇い主 ライト家のご令嬢 ライト・シルヴィアの猫だ

 目を離した隙に外に逃げたのだそう 放っておいても勝手に帰ってくるとは思うが、猫の捜索に金をかけるなんて貴族の考えることはよく分からない


「それにしても僕、見たところ10歳ぐらいに見えるけどもう字が書けるんだね」

「勉強したので」


 まぁ、したというよりもさせられたの方が正しいだろう 俺の両親は代々ライト家に使える執事の家系だ 俺には忠誠心というものはないが、両親は違うようで 幼い頃からライト家の役に立つようにとさまざまなことを教えられた 文字もその一つだ


 さて、やることはもう終わったし露天でも覗いて帰るか まだ夕食まで時間あるしなんか軽く買ってくか


 そう思い受付のカウンターから離れ、歩き出したところ


「テェメ!いい度胸じゃねぇか!」


 大きな男の背中に前を塞がれた


「俺の女に手を出しやがって!どうなるか分かってんだろうな!」

「誰がお前の女だって!?ミアハは僕の恋人だ!お前こそミアハに付き纏うのをやめろ!」

「なんだとぉ!」

「やめて2人とも!私のために争わないで!」


 …何これ


「おいおい、またか。これで何度目だ?」

「あの2人、前はめちゃくちゃ仲良かったのにな。同じ村から出てきた親友とかで、半月前には誕生日を祝ってたのによー」

「あのミアハって女が来てからだ。アイツらがおかしくなったのは」

「アイツらだけじゃねぇ あの女が来てからいくつものパーティーがバラバラに瓦解していった それも全部あの女を取り合ってのこと まさしく<傾国の美女>ってやつだ」

「まぁ、傾けてんのはパーティーの仲だけどな」


 ふーん、なるほど…ねぇ

 まぁ、他人が困ってようが俺には関係ないし帰るか


「おまえぇ!」

「この野郎」


 気付けば殴り合いが始まっていたが、そんなものは無視して出て行こうとした その時だった


「危ない!」


 そう誰かが叫んだ


 なんだ?と、大きな声のした方を見ると

 再び眼前に男の背中が迫っていた さっきと違うのは現在進行形で迫ってきているということだろう


 危ないって、俺に対して言ってんのか でも、

 俺はゆっくり、自分に対して迫る背中に合わせた速度でゆっくりと手を這わさ、次の瞬間には


 ストッ


「?    ?」

「………は?」

「……へ?」

「「「…なにっ?!」」」

「やるなぁ〜あの小僧」



 殴り飛ばされた男を静かに床に立たせていた

 今行われたことの凄さに気づいていないのはただ1人


「はぁ〜 だるっ」


 齢10歳にして、すでに天賦の才は露見し始めていた




「ずいぶんと遅かったじゃない。寄り道でもしてたんじゃないでしょうね?テンム」

「…シルヴィアか。」

「シルヴィア様でしょ?」


 俺がライト家の屋敷に着いてすぐ、人目につかないよう陰を歩いたところ、1番厄介な女に見つかった

 ライト・シルヴィア 俺を雇っているライト家の令嬢であり、今は


「テンムは私の専属執事なんだから常にそばにいなさいよ!」


 俺を無理やり専属執事にした強引な女だ


「じゃあ俺を使いに出すなよ。変なのに絡まれてめんどくさかったんだぞ」

「! なになに?変なのってどんなやつ?」

「あ〜 めんどくせぇ」

「なによ!もったいぶらず話しなさいよ!」

「しょ〜がねぇなぁ」


 これが、俺の人生で最期の、人間のシルヴィアと笑い合っていた日の記憶だ


「…残念ですが、お嬢様は」

「そんなっ…昨日までは!」

「いつ死んでもおかしくなかったのです テンム殿、あなたがいなければもっと早く死んでいたでしょう むしろシルヴィア様がこんなに長く生きれたことを誇りにもちなさい シルヴィア様もきっと感謝していると思いますよ」

「感謝なんて…」


 ライト・シルヴィアは生まれながらに身体が弱かった ここ数年は寝たきりの状態が続いていてさらに衰弱が進み、いつ死んでもおかしくないと言われていた

 俺が昨日まで話していたのはシルヴィアの霊体 身体が動かなくとも魂だけは生きられるように そして、そんなシルヴィアの魂を見つけられるのは俺だけで


「楽しかったよ」


 この日俺は、シルヴィア家から抜け出した

 なんでそうしたのか それは俺にも分からない


 ニャー〜!


「おまえは…一緒に行くか?」

「ニャ!」


 この日から1人と一匹の生活が始まった



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