表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄と真鍮でできた指環 《4》 ~魔窟のエクストリーム~  作者: とり
 第4幕 魔窟(まくつ)へ・・・
60/66

60:おどる学生たち。






 〇前回のあらすじです。


 『地下でおこなわれる悪魔崇拝あくますうはいを、のあたりにした和泉いずみたち。それは、新時代の偶像アイドルをおまねきしてのライブのことだった。……。ごめんね。しょーもなくて……。』













「それより。だ。ウォーリック」

なんでしょうか」

「……オレたちがってた、『悪魔崇拝あくますうはい』だの『召喚しょうかん』だのってのは、つまり。これのことだったんだな。……できることなら、ちがうと言ってほしいんだけど」

かなうことならわたくしも否定ひていしたいのですが」

 肩にさげていたショルダーバッグから、【学院がくいん】の関係者に配布はいふされる研究手帳けんきゅうてちょうを、ウォーリックは取り出す。

 和泉いずみがのぞきこもうとすると、ざらついた彼のほおしかえし、よこをむけさせる。

事前じぜんにあつめた情報じょうほう――と言っても。『召喚時刻(じこく)が十三時』だとか、会場かいじょうにはいるには『魔窟まくつへ…。』という合言葉あいことばがいる。とかですが――から照合しょうごうするに、これしかないかと」

「そうか。まぎらわしいことしやがって……」

 こういう人畜無害じんちくむがいなイベントが開催かいさいされるだけでしかない。といちはやく気がついて、あかねはさっさとおひらきにしたというわけだろう。


 ほねぞんのくたびれもうけ。

 絶大ぜつだい魔術まじゅつのちからを持つ、【悪魔あくま】なんてものなど、出てこないにこしたことはないのだが。

 気持ちのおさまりがつかず。和泉いずみは、白熱はくねつする無辜むこ演奏家えんそうかたちにをやった。うたにも。もちろん。

『――じゃあ。つぎは、みんなのリクエストにあったきょくッ。【にゃんにゃん魔王まおう降誕祭こうたんさい】! いっくにょお~!!』

『イエアあああああああああ!!』

 熱狂ねっきょうに沸きかえる地下会場(かいじょう)のなかで。

 ひとりしずかに、和泉は片手をまえにかかげた。

 バフォメットのバックにいる、ベースやドラムのメンバーが、ずんどこずんどこかなでる重低音じゅうていおんが、ヤギの悪魔あくましたファッションのヴォーカルを、ゆかいな旋律せんりつへといざなう。

『きゅおーんっ。にゃあにゃあにゃにゃん! 土日どにちなんて。定時ていじなんて。来世らいせでも無縁むえんのこのじんせ、』

「――くさむらをぐ、トカゲの息!」

 魔術まじゅつ威力いりょくを高めるために、【学院がくいん】では、一般いっぱん教養きょうよう科目はもちろん、呪文じゅもん発声はっせいも訓練させられる。

 若手わかてとはいえ、和泉はその【学院】で、教鞭きょうべんを取る立場たちばである。

 その役職やくしょくじない、研鑽けんさんを積んだ肉声によるのろいの言葉ことばは、ライブ会場かいじょうをつつむ歌声も、おどりくるうくろずくめたちのいのき消して――。


 どごおおおおおおおおッ!

 地下のだいホールに、あか火炎かえんりゅう爆誕ばくたんさせ。

 コンクリートの天蓋てんがいを、紅蓮ぐれん火柱ひばしら景気けいきよく突き破る。

 さわやかにれ渡った、あおそらがみえた。


 〇


「うわあーっ」

「おかあさん。みてー。きれー」

「そうねえ。派手はでなパフォーマンスねえー」

 宮殿きゅうでんまえの広場ひろばで。しくも――というのは語弊ごへいがあるが――おみこしをかついだパレードが、観客かんきゃくたちのあいだを行進していた。

 荘厳そうごんな校舎の裏手うらてから、赫赫(しゃくしゃく)たる熱波ねっぱ尖塔せんとうが、うずきながら立ちのぼる。

 それは、幻影げんえい妖精ようせいや、小動物しょうどうぶつたちをまとわせておどっていた絢爛けんらんな仮装の一団いちだんを、神々(こうごう)しく演出えんしゅつした。

 なにも知らない、ダンサーをつとめる学生たちは、一瞬いっしゅんパレードを中断ちゅうだんしそうになったものの。彼らはくばせひとつなく、「……アドリブでなんとかするか」と阿吽あうん呼吸こきゅうで伝えあうと、元からこの緋色ひいろ間欠泉かんけつせん予定よていみこまれていたかのように振るまった。

 きらびやかな衣装いしょうに、てんをつらぬく灼熱しゃくねつのバーミリオン(朱色)がえる。

 華々(はなばな)しく。あざやかに。豪胆ごうたんに。ダイナミックにびまわり、回転かいてんし。フェスティバル・パレードは、プリンピンキアの学祭がくさい最終日さいしゅうびめくくったのだった。













 〇つぎは最終回さいしゅうかいです。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ