6:懸念(けねん)
・前回のあらすじです。
『シロの主人と【賢者】の関係性についてせつめいする』
シロはノワールと和泉に教えた。
「どこからはなせばいいかな……。あのさ。ふたりは大陸中央部にある都市に、【フィレンツォーネ】ってあるの知ってる?」
「おっ。知ってるぞ。『芸術の都』だ」
「観光地で有名よね」
「うん」
いろめきたつ和泉と、おなじく顔色をよくするノワール。
ふたりを交互にみて、シロはうなずいた。
フィレンツォーネは、ここ中央大陸【パンゲア】のなかでも屈指の観光名所である。
絵画や彫刻などを専門とする学校がつどい、大陸内では『芸術の都』や、『芸術家の聖地』などとよばれている。
シロはふたりの反応に気をよくして語りだした。
「その町にある美術学校で、来週に『学園祭』があるんだけどさ。ちょーっとよろしくないうわさがあってね」
「うわさだろ? ほっとけよ」
和泉はとたんに目をうろんにした。
基本的には、うわさという出所不明な、あいまいな情報は信じないようにしている。
それがどれだけ無責任で、残忍で、人を侮辱することにのみ特化した悪意のかたまりであるかを知っているからだ。
「ほっといていいていどならね」
我が身をいだくように、学院長の使い魔は自身の肩に手を置いた。
「ちがうの?」
ノワールが片眉をあげてきく。
シロがこたえる。
「……【悪魔崇拝】」
「あら」
おおげさにくちをおさえて、黒猫の女はすっとんきょうな声をだした。