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鉄と真鍮でできた指環 《4》 ~魔窟のエクストリーム~  作者: とり
 第4幕 魔窟(まくつ)へ・・・
58/66

58:逆位置(ぎゃくいち)のペンタグラム






 ・前回のあらすじです。


 『和泉いずみが、ウォーリックとあかねおなじホテルにいたといて、うらやましがる』











『――おあつまりのみなさん。おたせいたしました』

 おぼろなエメラルドグリーンのともしびに、浮かぶひとりの黒ずくめ。

 拡声器かくせいきによって肥大化ひだいかした、若い男性のひくい声が、大広間おおひろまにいるすべてのものに降りそそぐ。

『我々のかげながらの活動のみかさねが、今日きょうようやくをむすぶこととあいなります。お越しくださった、わが秘密ひみつクラブ『魔王結社まおうけっしゃ』の会員がた。さあ。両手りょうてをあげ、神秘しんぴ言霊ことだまをご唱和しょうわください。大悪魔だいあくま――我らが魔王まおう・バフォメットさまを、この地に降臨こうりんせんがために!!』

(なに――っ!?)

 和泉いずみがおどろくもあらばこそ。

 薄暗うすくらがりになったホールのあちこちで、くろずくめたちがつぎつぎとうでちゅうに突きあげる。

 事前にしめしあわせていた挙措きょそのようで、どよりと何所からともなく生まれた呪詛じゅそが、さざなみのごとく人々に伝染した。

 やがておおきなうねりとなって、円形広間えんけいひろま内壁ないへきに、ねばっこく反響はんきょうする。

 ぼおおおっ。

 拡声器マイクを持つくろずきんのおとこのもとに、あかい光がほとばしる。

 五芒星ペンタグラムいた円陣えんじんが、虚空こくうに血の色できざまれていく。

 魔法陣まほうじんだ。


「うそだろっ。デマじゃなかったのか!?」

 となりのウォーリックを、和泉いずみいのる気持ちで振りかえった。あかね見立みたてはあまかったのか。

 ウォーリックはぼうぜんと、赤い逆位置ぎゃくいち五芒星ごぼうせいをあおぐのみ。

 呪文じゅもん合唱がっしょうは止まらない。

 もうもうと。魔法円まほうえん中心ちゅうしんから、白いけむりがあふれる。場内じょうない気温きおんが、急速きゅうそくに下がっていく。

 が。どこか陶然とうぜんとした黒ずくめたちは、逆に体温たいおんたかまりを感じているのだろう。声に、集団しゅうだんヒステリーにも似たねつっぽさがあった。

『さあ。いまこそおいでください。我らが異端いたんかみ。――悪魔あくまおうバフォメットよ!!』

 どうううん!!!

 広間ひろま前方ぜんぽう――ひとびとの注視ちゅうしする、黒ずきんのおとこのあしもとが爆砕ばくさいした。

 魔法陣まほうじんが、ひときわつよく、クリムゾンの輝きをしていく。

「……。……! ……。……?」

 とっさに和泉はをそらした。眼窩がんかにはまる義眼ぎがんは、【魔鉱石まこうせき】という魔法まほう物質を使うことでのう直接ちょくせつ光刺激(ひかりしげき)をアクセスし、外界の視認しにん可能かのうにする。

 一見いっけんゆめのような技術ぎじゅつだが、義眼(ない)の構造は「魔法まほういし」という便利べんりなものを介在かいざいしても複雑にすぎ、虹彩こうさいにあたる部分の調整ちょうせいがいまひとつ。実生活じっせいかつにおいては、サングラスさえかけていれば解決できるよわみだが、あまりつよい光――太陽たいよう光であったり、魔鉱石が反応はんのうしやすい魔法の光が強烈きょうれつだと、目のおくが焼かれるようないたみを感じる。

 ……の。だが。


が、そんなにいたくない?)

 ねんのため。黄色いサングラスをかけなおす。

 ざわざわ。

 ささやきかわすギャラリーたちと、おな方角ほうがくる。

 魔法陣まほうじんは消えていた。

 しゅううう……。

 機械がはっする、廃棄音はいきおんみたいなうなりをあげて、白煙はくえん爆発ばくはつのあった箇所かしょ淡泊たんぱくまくを引いている。

 あわいヴェールを突き破って、ひとつのぞう出現しゅつげんした。

 ねじくれた一対いっついつの。むくりとりあがったから、けもの前脚まえあしが持ちあがる。

 その存在自体がせりあがるように、異形いぎょうのすがたがゆっくりと浮上ふじょうし……。いや、異形いぎょうのあしもとの地面じめんが実際に上昇じょうしょうしているのだ。凸型とつがたに。下で装置そうちがはたらいているらしい。

 ほどなくして。あか色系統で統一とういつされた毒々しいあかりが、高みにのぼるシルエットを照射しょうしゃした。

 光は、魔法陣まほうじんを描いたのと同質のものだ。

 最初さいしょこそ和泉いずみ魔力光まりょくこうかとおもったが、ちがう。

 電気の光だ。

 ただの、スポットライトだ。






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