5:あつれき
・前回のあらすじです。
『シロが【和泉】たちに事情をせつめいしはじめる』
シロの主人――学院長の魔術師は、名前を『史貴 葵』というわかい女性だ。
みための麗しさもさることながら、【魔術】の使い手としても卓越した才女だが、そのちからと外見の水準に対して、人望にはめぐまれていない。
一部熱烈なファンはいるものの、『学院長』としてみた場合、その器があるのかないのか。たよりのないところだ。
この史貴学院長には、四つほどとしのはなれた妹がいる。
彼女もまた、姉とはタイプこそちがうものの、やはりなかなかの器量よしで、名を『史貴 茜』といった。
【魔術師】の世界である、ここ【裏】では、妹である茜のほうが名が知られている。
というのも、彼女は魔術のない世界――【表】とよばれる領界の出身でありながら、おさないころに、すでに生粋の魔術師たちをも凌駕する知識と魔法の技術を身につけ、十才になるころにはすでに魔術師最高の栄誉にして最強の称号・【賢者】の名と資格をあたえられていたからである。
姉妹そろって傑物なのはちがいないのだが、他をよせつけぬ力量をそなえた茜の存在によって、葵のほうはかげにかくれてしまっている。
その圧倒的な、魔術師としての才覚の差が、ふたりのあいだに『軋轢』をうむこともしばしばあった。
葵の【使い魔】であるシロは、よくそうしたふたりのいさかいに巻きこまれていた。
今回もおおむね、そんなところだ。