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鉄と真鍮でできた指環 《4》 ~魔窟のエクストリーム~  作者: とり
 第4幕 魔窟(まくつ)へ・・・
49/66

49:ぐぬぬぬぬぬ……。


 ・前回のあらすじです。

『ストーカー的な行為こういによって、和泉いずみが無事に、レオナたちとえる。……。……。……』




和泉いずみさん、」

 突然――と和泉は感じた。つよく名前なまえをよばれて、背すじをただす。

 レオナがブラウスのハイネックに隠れたのどをおさえて、声のトーンをさげた。

「どこに行けばいいか、おしえてくれますか。私、そのかたたちを手伝いにいきますので」

 ふてくされるアキラを横目よこめに、和泉はうなずいた。

「ああ。……でも。こいつの言うとおり、むちゃはしないようにな。反動はんどうとか怖いから」

 魔力まりょくのつかいすぎは、からだのほうにも影響えいきょうが出る。気をうしなうくらいならまだよくて、そのままたきりや、精神的な錯乱さくらん。ストレス性の内臓ないぞう疾患(しっかん)。部位の損傷そんしょうを引きおこすケースがあった。

「ええ」

 とレオナは心得顔こころえがおである。わりと本気ほんきでよゆうらしい。

「ミーコはどうする? 私といっしょにくる?」

 となりの少女しょうじょのあたまに手をいたまま、レオナは訊いた。ミーコはすこし考えて、主人しゅじんをあおぐ。

「ぬしさまは? どうしてほしい?」


 訊きかえされて、レオナはまよった。

 グレーの双眸そうぼうが、わずかなあいだだけ、和泉いずみの存在を確認する。

 和泉のとなりで、ふわあああと黒髪くろかみおとこがあくびをした。

「……私は。ミーコには、アキラと先に行っててほしいかな。そこで――ってて」

「うん。わかった」

 ミーコは満面まんめんみにして、レオナのたのみをうけたまわった。

「それじゃあ、アキラ。そういうわけだから……」

 みどりのかみ少年しょうねんを、すまなさそうにみやって、レオナは気持ちしょんぼりした。

 アキラはむねのポケットから、ちょろっとあたまを出したねずみ――アルバートをぽんとたたいてなかにひっこませる。

「わかった。じゃあ、あとでね。――絶対に来るんだよレオナ。……時間(じかん)までに」

 ミーコの手をひいて、アキラはかなり声のボリュームをおとして、最後のほうのせりふを言った。

 エントランスの出ぐちにいた和泉いずみだが、校舎内こうしゃないからきたレオナたち三人とは、そう距離きょりがあるわけではない。

 ……つまりは。さほどはなれていないにもかかわらず、アキラのささやきを、聞きとることができなかった。


 いたちの最後さいごとばかり。アキラはいぶかる和泉いずみに、ふんっ。とそっぽをむいてみせる。ミーコをつれて、みどりのかみ少年しょうねんは校舎を出ていく。

「私たちも行きましょうか」

 ――急ぐんですよね。

 とすぐそばまできたレオナにかおをのぞきこまれ、和泉はとおざかっていくなまいきな少年に、ぐぬぬぬぬぬ……。とわななかせていたこぶしをひっこめる。

 いち二歩にほたたらを踏んで、レオナからはなれる。

 衣料用いりょうよう洗剤せんざいか。化粧水けしょうすいか。よくわからないが、いいにおいがした。

「あのさ。邪魔じゃまだったら、そう言ってもらいたいんだけど――」

 ことわられた時のこころの保険ほけんに、自分からそう前置まえおきして、和泉いずみはレオナに許可きょかをもとめた。

「きみが魔法まほうを使うところ、オレそばでてていい?」

「いいですよ。そういえば、和泉いずみさんって魔術まじゅつ学校の先生なんでしたよね」

「ああ……。うん」

「クラリスがお世話になっているところというと――【学院がくいん】なんですよね。魔術師まじゅつし最高学府さいこうがくふじゃないですか」


「まあ。そうだね。なんだ……。知ってたのか」

 ここ、プリンピンキア美術魔法びじゅつまほう学校は、『おと』をかなめとする魔術まじゅつ――呪文型スペルタイプの魔術を傾向けいこうがつよい。

 てっきり、クラリス……カリオストロは、レオナに対して、どの学校にかよっているのかを隠しているかとおもいこんでいた。

 城のだいホールみたいなエントランスから、さおそらと、ひといきれにまみれた屋外おくがいへと出ていきながら、レオナが和泉いずみに、意識的にほがらかにした表情ひょうじょうをする。

「たしかに、画工がこう系の魔術師まじゅつしは、いろいろと言われることがおおいし……。そういう呪文じゅもん型のかたからのお小言こごともあって、反発はんぱつ的な態度たいどになってしまうかたもいます。けど。私はあんまり気にしませんよ。比較ひかく的には。ですけど」

「なんでもいいよ。こういうふうに、ふつーにはなしてくれるってだけでたすかる」

 内心ないしんでは、めちゃくちゃ攻撃にそなえていた和泉いずみである。

 しかしレオナに、あのみどりのかみ少年しょうねんにはあったような対抗心たいこうしんがないのを悟って、肩からちからをぬく。

 和泉いずみのうしろをついてきている、使つか少年しょうねんクロが、主人しゅじんがこっそりがまえていたのを見てとって、「そこまでビビるか?」というかおをしていた。

 レオナはフフっ。とちいさく笑ってながしてくれる。やさしい。

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