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鉄と真鍮でできた指環 《4》 ~魔窟のエクストリーム~  作者: とり
 第4幕 魔窟(まくつ)へ・・・
48/66

48:マセガキ


 ・前回のあらすじです。

和泉いずみ探査たんさ魔術まじゅつをやりなおし、レオナの使つか・ミーコをみつける』



 〇


 荘重そうちょう西洋風せいようふう宮殿きゅうでん造りの、プリンピンキア学校校舎。

 その広々とした正面しょうめんエントランスに、和泉いずみ薔薇園ばらえんから移動した。

 ちょうどやってきたレオナとミーコ。それに、彼女かのじょたちの友人ゆうじんらしい少年しょうねんと、出入でいりぐちで鉢合はちあわせる。

 少年――みどりのかみの、つなぎすがたのおとこが、和泉をるなり声をあげた。

「ああっ。ぼくのアルバートを食べようとしたヘンタイだ!」


 開口一番かいこういちばん言いがかりをつける少年しょうねんに、和泉いずみ前髪まえがみに隠れたひたいに青筋あおすじを浮かべる。

「え……。和泉いずみさん。ねずみを食べるんですか?」

 と。少年とあるいていたツインテールの少女しょうじょ――レオナ・フォックスが、一歩いっぽあとずさりする。

 彼女のヒキっぷりはこの際無視(むし)して、和泉はきっぱり少年に答えた。

「だからちがうっつーの。勝手にめちゃくちゃなこと捏造ねつぞうすんな」

「めちゃくちゃなことだから捏造するんだよ。ねえ。気をつけなよレオナ。きみってばカワイイから、こんなやつにえつけられたら、ストーカーされるのまちがいなしだよ」


「失礼だよアキラ」

 はい色の両目りょうめ非難ひなんの角度にして、レオナは自分のメイド服のそでをひっぱるおとこ――アキラに注意ちゅういした。

「そんなこと、しませんよね?」

 と信じる微笑びしょうをむけられ、和泉いずみはあいまいにかおを引きつらせる。

 本人ほんにん無断むだん魔術まじゅつをつかって追跡ついせきをかけた以上いじょう、「ストーカー的(つきまとい)行為こうい」については否定できない。

「えっとお。それよりレオナ。きみに来てほしいっていう人たちがいてさ。おもてのほうで、みせを出そうとしていた人たちなんだけど」


「またかよー!」

 とさけんだのはアキラである。

 レオナよりすうセンチ低い体をくるりと彼女かのじょのほうにふりむけて、アキラはぎゅっとブラウスからはみだした少女しょうじょの手を握る。

(このマセガキ……)

 めざとくアキラのスキンシップを見咎みとがめるも、和泉いずみだまってふたりの反応はんのうった。

 アキラがわめく。レオナに。


「行くことないよレオナっ。あさっぱらから、あっちいったりこっちいったりしてさあ。屋台やたい組むのがどんだけ大変か、わかってないんだよあいつら。無理むりしたら死んじゃうよ」

 アキラはつばを飛ばしてまくしたてた。

 絵の魔術まじゅつにうとい和泉いずみでも、アキラの理屈はわかる。

 ここの学生が言っていたことを信じるなら、たとえ簡素なものであっても、建物たてものをつくる魔法まほうは高度な技術ぎじゅつなのだ。

 高位の魔術は威力いりょくによらず、ただそれを行使するだけで結構な体力たいりょく消耗しょうもうする。【建築けんちく】の絵魔法えまほうも、その例にもれないのだろう。

 心配しんぱいする友人ゆうじんに、ゆるくレオナはかぶりを振る。

「私はだいじょうぶ。アキラがおもってるほどは、つかれてないから」


 レオナの腰のあたりから、黄色いかみをおだんごにしたおんなが、主人しゅじんたる魔術師まじゅつしあげた。

 レオナの使つかのミーコだ。

「でもぬしさま。あちらのほうは? カフェの店番みせばんもあるのに……。まにあうの?」

 おさない、色黒のかおをかたむけて問うミーコを、ぽんとレオナはでた。

 和泉いずみはその所作しょさを、なんとなく「だまらせた」ようにおもった。



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