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鉄と真鍮でできた指環 《4》 ~魔窟のエクストリーム~  作者: とり
 第4幕 魔窟(まくつ)へ・・・
46/66

46:くろずくめ


 ・前回のあらすじです。

和泉いずみが、レオナ・フォックスをさがす魔術まじゅつをつかうため、露店ろてんだらけのエリアからはなれる』




 人のすくない場所ばしょをもとめていたら、奥庭おくにわにある薔薇園ばらえんにきた。

 まだきょうのまつりははじまったばかりで、見物客のおおくは宮殿きゅうでん前庭まえにわにならぶ屋台にひきつけられている。

 学祭がくさい初日しょにちひるには、いこいのとして機能きのうしていた花園はなぞのも、いまは閑散かんさんとしていた。

「ここならおもうぞんぶん、魔術まじゅつをつかえそうだな」

「だからってちっちゃい子みたいに大声おおごえでさけばないでよ。マスター」

「するかよっ」

 わきから肩をすくめて注意ちゅういする、なまいきな少年しょうねんクロに、和泉いずみはゴツンとげんこつをおとした。

 手ごろな花壇かだんをみつけて、レンガのふちに腰をおろし、ちついた姿勢で探査たんさの魔術を構成する。

 ターゲットは――。

「あれっ。ねえ、あれ。クラリスじゃない?」

 そばにすわろうとしていたクロが、和泉のパーカーをひっぱってあらぬ方角ほうがくゆびさした。

 いままさに呪文じゅもんとなえようとしていた和泉は、くちをざし、自分の使つか注目ちゅうもくするほうをむく。


 薔薇園ばらえんと、ちいさな洋館ようかん仕切しきる鉄の門がある。

 おととい、レオナの使つかであるベンガルトラのミーコを発見はっけんした場所ばしょだ。

 黄色いレンズしに、和泉いずみは洋館のへいのまえを凝視ぎょうしした。こそこそと動く影がある。

 魔法まほう義眼ぎがんでかりそめの視認しにん維持いじしている和泉だが、はけっしてよいほうではない。近眼といっても過言かごんではない視力しりょくであり、そのため動いている人影が、クラリス――クララ・モリス・B・カリオストロかどうか、わからなかった。

 立ちあがって、和泉はちかづいてみる。

 へいにへばりついて、きょろきょろしながら慎重しんちょうにすすむ人物は、クロの言うとおり、金髪きんぱつのボブショートにかざりのついたカチューシャをつけた、ゴスロリ調ちょうのドレスのおんな――カリオストロだった。

 和泉は黄色いレンズのおくで、さらに目をらす。

 カリオストロは、かれんなかおをだいなしにするように、黒くてまるいサングラスをつけていた。くちもとも、おおきなマスクでおおっている。さらに、体格さえごまかすつもりか、フードつきのローブで、小柄こがらな全身をすっぽりとつつんでいた。


「おーい。クラリス。どこいくんだ?」

 気になって気になって。和泉いずみはたまらず少女しょうじょに声をかけた。

 はッ。とカリオストロの黒いサングラスがこちらをる。

 それから、ずりちてもいないマスクを引きあげて、これで変装を『かんぺき』にもどした。と言わんばかりに、カリオストロはこそこそうつむいて、洋館ようかんの門に駆けていってしまった。

 格子状こうしじょうのアーチもんをあけて、なかにはいっていく。


 がしょん。

 と、鉄の門が、和泉いずみたちの視線のずっとさきでまった。

「逃げてっちゃったね」

 クロがつぶやく。ぼんやりと。

「よくわからんが……。またなにかからぬことをたくらんでんじゃないだろうな?」

 カリオストロには前科ぜんかがある。今年の新学期直前(ちょくぜん)に、魔力まりょく増幅ぞうふくするマジックアイテムをつかって、【学院がくいん】の関係者や近所きんじょ住民じゅうみんに多大なめいわくをおかけしたという罪状ざいじょうが。

いかけてみる?」

 クロもまた、カリオストロを不審ふしんおもっていた。彼女かのじょの過去もそうだが、さきほど見たくろずくめのかっこうは、いかにもあやしい。

 はーッ。と和泉いずみは息をついた。

「いや……。ほっとこうぜ」

 カリオストロについては、どれだけしんぱいをしても仕切れない。ほどほどのところでうたがうのをやめにした。

「それよりレオナだ」

 すわりなおすのもめんどうになって、立ったまま和泉は舗装ほそうされた地面じめんに手をかざした。呪文じゅもんとなえる。

万象ばんしょうる、玉座ぎょくざ喧騒けんそう


 ぴん。とピアノせんるような、するどく硬質な感覚が、和泉いずみ脳裏のうり交錯こうさくする。

 仮想の――術者じゅつしゃである和泉本人(ほんにん)にしか認識できない、ターゲットの位置いち情報じょうほうが、半透明はんとうめい図面ずめんになって、足もと(あし)のタイルに視覚化される。

 不特定ふとくてい多数たすうのなかから、捜査対象そうさたいしょうの人物だけを、名前なまえや性別、身長しんちょう体重たいじゅうから、あるていど割りだすことは可能かのうだった。

 フォックス。という苗字みょうじはそうあるものではないので、氏名と性別さえはっきりと意識すれば、レオナがどこにいるかは分かる。

 そうおもって、和泉いずみ魔術まじゅつを展開したのだが。


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