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鉄と真鍮でできた指環 《4》 ~魔窟のエクストリーム~  作者: とり
 第4幕 魔窟(まくつ)へ・・・
44/66

44:マテリアライズ


 ・前回のあらすじです。

『プリンピンキアの学園祭の最終日さいしゅうび屋外おくがい会場かいじょうにやってきた和泉いずみたちが、出店しゅってんできていない学生たちをみつける』





「マスター。あの人たちなんかもめてるみたいだけど」

 よこからクロが、和泉いずみのパーカーのすそを引いてくる。

 大声おおごえで相談しあうおとこたちをゆびさす少年しょうねんを、和泉は肩をたたいていさめた。

 このをはなれようとする――。

探査系たんさけいは? 使えるやついねーの?」

 タオルをあたまいた男が、仲間なかまの学生たちをみまわしながらきいた。

「ばか言えルノ。あんなむずいのできるやついるかよ」

「そこまでできるやつだったら、『』に転向てんこうしてないって」

「おいおい。みくびるなよ。両立りょうりつしてる人だっているぜ。――たぶん」

 やいの。やいの。

 言いっていた男たちが、さっそく探査系魔術(まじゅつ)をつかえる術者じゅつしゃ手配てはいしようとする。

 さっきはしってきた眼鏡めがね青年せいねんが、またひとっぱしり行かされるようだ。

 ほかにも数人すうにんよそをあたるようで、自分がいく方角ほうがくを、指さししてそれぞれに伝えている。

 【探査系魔術たんさけいまじゅつ】と聞いて、和泉はいてもたってもいられなった。自分は使えるからだ。ただひとつ、問題がある。


 人垣ひとがきおくから、和泉いずみおとこたちのほうにみだした。

「あのー。誰をつれてくればいいんですか?」

 ちいさく挙手きょしゅして、男たちに近づく。

「ああ?」

 と。てぬぐい(タオル)の男――仲間なかまには「ルノ」とばれていた――が和泉いずみおろす。

 部外者ぶがいしゃがくちをはさんでくんじゃねーよ。と言わんばかりの眼力がんりきに、和泉はがすくんだ。

「いや、えーと。その~」

 徐々(じょじょ)に声のトーンをとして、和泉はルノに言いつのる。

「オレが知ってる人かも知れないし。ここに来るまでに、見たかもしれないんで……」

 ルノは、和泉が腕にひっかけている黒い上衣うわぎをちらりと見た。それは【学院がくいん】が、教員きょういん魔術研究者まじゅつけんきゅうしゃ支給しきゅうしている法衣ほうえである。

 もっともルノには、ただのコートが引っかかっているふうにしか見えないが。

 声をかけてきた白髪はくはつの青年が、学園祭がくえんさいの客とさっして、ルノは全身からただよっていたけわしい空気をぬいた。

「あー……。すんません。みせのほうは、まだちょっと出せなくて……」

探査たんさ系のじゅつがつかえる人が必要ひとなんですよね。その、とおりすがったときに、聞こえてきたもんで」


 和泉いずみ意味いみもなくぺこぺこしながら取りった。

 ルノのほうも、こちらに他意たいがないとわかったようで、なるべく気軽きがるに接してくれる。

「んーっと。まあそうなんだけど。どう説明せつめいしたもんかな」

「あ。じゃあおれが言うよ。ちょっとやすんでおきたいし」

「わりいな。ホガート」

 胃のよわそうな、やせこけた眼鏡めがねの青年ホガートは、ほおに影のできたかおを、こまったふうにゆがめて和泉いずみに告げた。

「えっと。この校庭に出てるみせは、ぜんぶ実物じつぶつではなくて、魔法まほう具現化マテリアライズしたものなんだよね」

「具現化……。幻影げんえいじゃなくてですか?」

 和泉は内心ないしんで、声を出した以上いじょうにおどろいていた。

 魔力まりょく具現化ぐげんかするじゅつは、和泉も使ったことがある。だがみだせるのは「武器」のみ。しかも、術師じゅつし固有こゆう種類しゅるいのものしか出せず(和泉の場合ばあいは「剣」である)、それ以外のものをつくることはできない。


 和泉いずみの質問に、ほねばった肩をすくめて、眼鏡めがね青年せいねんはつづけた。

「あんまり言いたくないんだけど。まぼろしになっちゃうのは、技術ぎじゅつ未熟みじゅくってことなんだ。そりゃあ【ミラージュ】っていう分野はあるけど。いまは時間がないから、割愛かつあいでいいかな」

「はい。――それで。絵を具現化できる人は、この学校ではかぎられている。ってことでいいんですか?」

「そう」

 先へとはなしをうながす和泉いずみに、ホガートはおおきくうなずいた。


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