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鉄と真鍮でできた指環 《4》 ~魔窟のエクストリーム~  作者: とり
 第4幕 魔窟(まくつ)へ・・・
43/66

43:アクシデント



 ・前回のあらすじです。

 『レオナの元にやってきた、みどりのかみ少年しょうねんアキラ。彼が【降臨こうりん】について、レオナに伝える』




 〇


 晴天せいてん

 学園祭の三日()――最終日さいしゅうびは、の覚めるような秋晴あきばれにめぐまれていた。

 開場かいじょう時刻である午前九時から、和泉いずみとクロはプリンピンキア美術魔法びじゅつまほう学校の門をくぐる。

 前日ぜんじつあめ影響えいきょうか。まつり最後の日とあってか。

 校舎こうしゃまで延々(えんえん)とのびる前庭まえにわには、すでにみせびらきをしている露店ろてんもあるものの、準備中じゅんびちゅうであるところも目立めだった。

「……? みせ、出せないのかな?」

 和泉は首をかしげながら、テントもその材料ざいりょう――骨組ほねぐみやズックの屋根やね――もない、学生たちだけがたむろしているスペースをのぞきこむ。

 あたまに手ぬぐいをまいた背の高いおとこが、もどってきた仲間なかまに「どうだった?」と聞いていた。

「だめだ。どこにもいないよ」

 眼鏡めがねの、やせた男が息を切らしながら答える。

喫茶店きっさてんのひとにも聞いたけど、だめだった。準備をしたあと、すぐによそに引っぱられていったって」

「よそお? どこの店かくらいわかっただろ」


おしえてもらったさ。で、あっちこっちでたらいまわしさ。おかげで学校(じゅう)はしりまわったけど、つけられなかった」

 息をととのえて、めがねの青年せいねんは肩をすくめた。

「やべー」

「どーすんだよ。もうはじまってんだぞ」

 幻影げんえい妖精ようせいがひらひらう校庭をみて、いらついた声を出すほかのおとこたち。

 彼らの視線のさきには、徐々(じょじょ)に増えつつあるまつきゃくらのすがたがあった。

 たいていの通行人は、なにもない――みせの出る気配けはいもないその空間を素通すどおりしていくだけだが、何人なんにんかは立ちまって、「あれ。とりやらないの?」と学生たちに訊いている。

 和泉いずみは、そうしてむらがりつつある人垣ひとがきのむこうから、石畳いしだたみだけが敷かれた出店しゅってんスペースをのぞきみていた。

「くそー。やっぱサークルないに【建築けんちく】までできるやついないと、むりだったか」

「んじゃあ。今日きょうはもうあきらめる?」

材料ざいりょうもったいないだろ。なまものだぞ?」

「マジもんの建材けんざい持ってこようぜ。どっかにあるだろ」

校内こうないにはないよ。業者ぎょうしゃとかに言ったらしてくれるだろうけどさあ。あんなもん、ふつうは何日なんにちもまえに連絡つけとくもんだろ」


 総勢そうぜい十名じゅうめいほどのおとこが、けんけんがくがく。あーでもない。こーでもないとはなう。

 彼らから時折ときおり聞こえてくる【建築けんちく】という単語に、和泉いずみ一般的いっぱんてき用語ようごではないニュアンスを感じた。

(……どうしたんですか。って訊くのは……できないこともないけどさあ)

 これはウソだった。和泉にはできない。

 知らないひとに気楽きらくに声をかけられるほど、彼はコミュニケーション能力のうりょくんではいない。

 ましてや、あいての男たちは、遅々(ちち)としてすすまない準備じゅんびに怒りのボルテージを上昇じょうしょうさせていっているのだ。


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