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鉄と真鍮でできた指環 《4》 ~魔窟のエクストリーム~  作者: とり
 第3幕 学園祭、二日目(ふつかめ)
40/66

40:ウソでもうれしい


 ・前回のあらすじです。

和泉いずみがノワールと水晶玉すいしょうだまはなしをする』




 ぼうぜんとセリフを反芻はんすうしている和泉いずみに、ノワールがなにかの気配けはいさっして告げた。

『っと。ごめんなさいね、和泉いずみくん。あるじさまがきちゃったから、私、もういかなきゃ。あの子きのうのばんからなーんにも食べてないうえに、徹夜てつやで調べものしてたのよね』

「あっ。そうなんですか」

『ええ。ってなわけで。私もちょっとはなにか、くちに入れさせてやりたいわけ。あなたのちからになれないのはわるいんだけどお』

「いえ。おいそがしいところすみませんでした。あと、ちからにはなってもらえたとおもいます」

『そう? ウソでもうれしいわ。あーそうそう。言いわすれるとこだったんだけど、』

「はい?」

『フィレンツォーネに、【学院がくいん】からもうひとり魔術師まじゅつしが行ってるはずなのよ。和泉くんにたのんだ翌日よくじつくらいに声をかけたのね。その子はすぐに出発しゅっぱつしたから、ひょっとしたらあなたがくるよりずっとまえにまちについてたかもなんだけど』

「えっと、合流ごうりゅう――。したほうがいいんですか。オレと、そのひと」


「ううん。べつにそーゆーわけじゃないのよ。ただ、あなたのほかに悪魔あくまについてぎまわってる魔術師まじゅつしがいても、びっくりしないでねってだけ。ああ。もちろん、和泉いずみくんを見限みかぎってその子をやったわけじゃないから。そのへんも気にしないでね』

 【学院】から来ている魔術師というと、カリオストロしか和泉いずみにはこころあたりがない。

 確かめておこうかとも考えたが、ノワールの主人をづかうような視線のそわつきをみてしまうと、引き留めるのはくるしかった。

「わかりました。それっぽい人にったら――なるべく情報じょうほう交換とかできるようにしてみます」

『たのもしい返事でよかったわ。それじゃ。ひきつづきおねがいね』

 スパゲッティとお茶をのせたトレイを片手にお別れを告げるノワールに、和泉もまた水晶すいしょうの外から会釈えしゃくをかえす。

 通信をこちらから切る。

 使つか魔術まじゅつが使えないため、魔術師のほうでマジックアイテムの調整ちょうせいをするしかないのだ。

わったの。マスター」

 よこからクロが声をかけてくる。

「うん。つっても。レオナに言えるようなことは、あいかわらずなんもいけどな」

 和泉は水晶玉すいしょうだまを持って、受付のほうにあるいた。

 窓口まどぐちのわきにある返却台に、ソフトボールサイズの球体きゅうたいく。

 貸してくれた事務員じむいんにおれいを言って、そのをあとにした。


「……【学院】から来たほかのやつって、だれなんだろうな」

「どしたのきゅうに?」

 いくあてもなく廊下をすすみながら、和泉いずみあたまのうしろに手を組んだ。聞きかえすクロに、ため息まじりにつぶやく。

「ノワールさんが言ってたんだよ。名前なまえは聞きそびれたけど。できそうだったら、っとこうかなって」

「クラリス以外では、いまんとこいないよね。むこうも法衣ほうえとかマントはずしてるだろうし。つけるのはむりそうじゃない?」

「だよなあ」

「ってゆーかさあマスター」

 クロは、天をあおぐ主人しゅじんにあわれむようなをむけた。

「たよりにされてないんだね」

 ふふん。と和泉はほこったみをクロにかえす。

「ばーか。ノワールさんも、そこはきちんと言ってくれたぞ。見限みかぎったわけじゃないから気にするな。って」

「そのていどの腹芸はらげいするくらいの社交性はあるよ。あいつは」

「くっ……。う、うるへえ!」


 あきれた半眼はんがんをして、首までよこに振るクロに、和泉いずみ両手りょうてでつかみかかった。

 ノワールの心の内はべつとして、この少年しょうねん態度たいどがあんまりにもなまいきだったので、首をしめておく。

「よーし。そこまでいうなら、オレの本気ほんきをみせてやるよクロ」

「べつにみたかないけどさあ。むしろ、本気じゃなかったときってあるのかな。マスターっていっつもよゆうない感じなんだけど」

(いちいち痛いとこついてきやがる……!)

 クロはみょうなところでするどい。

 けほけほとせながらもにくまれぐちをたたく少年に、和泉いずみ反駁はんばくしようとした。

 が、のどまであがってきていた言葉ことばを、「ごほん!」とせきばらいしてのみこむ。

「まあてろって。とりあえずは――あれだ。有力ゆうりょくなネタをつかんでるかも知れないし。【学院】からきてるって魔術師まじゅつしをあたってみようぜ。もちろん、こっちはこっちで調べつつな」

「けっきょく他人まかせなんじゃないか」

「たすけを求めるのも能力ちからの内だ!」

 やけくそになってクロにわめいて、和泉いずみはそれ以上いじょうのくちごたえはゆるさんとばかり。あてもないままはしりだした。

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