4:ポプラのしたで。
・前回のあらすじです。
『ポストのまえでもめている【使い魔】たちのもとに、ひとりの【魔術師】がやってくる』
「ちゃお。和泉くん」
ひらりと手をあげて、ノワールは和泉にあいさつをした。
ぺこり。と和泉は白い頭をさげる。
義眼の両目――魔法の目玉のために、視認を可能とするが、調光がいまひとつ――のうえにかけた黄色いサングラスを押しあげて、ちらりと黒髪の女のとなりを見る。
「ども、ノワールさん。……で。シロ」
「ぞんざいだなー」
「おまえだってオレに対してテキトーだろ」
「そこは否定しないけどね」
シロは肩をすくめた。
和泉に対してはひつよう以上に気をつかう理由も、義理もないのだ。
「……と。おあつらえむきにかわりの魔術師も来たことだし。しゃべってもいっかな」
もったいぶって、シロは和泉を見あげた。
「はなし? べつにいいけど。ここ、ほかの人のじゃまじゃないか?」
ポストのまえにたむろしていた三人は、ほかの客がちかづいているのをみつけて場所をあけた。
ちかくのポプラの植木に移動して、木陰にはいってはなしをする。
落ち葉の載ったベンチをはらいもせずにすわりながら、シロが言った。
「実はうちのご主人とその妹が、まーた口論になってさ」
「またって……。そんなに頻度高いのかよ」
「妹のほうはあっちこっち旅してまわってるんでしょ? 【テレパシー】ででも戦りあってるわけ?」
スカートをととのえて横に腰かけるノワールに、シロは「まさか」と首をふった。