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鉄と真鍮でできた指環 《4》 ~魔窟のエクストリーム~  作者: とり
 第2幕 芸術の都(みやこ)にて
26/66

26:ばら園


 ・前回のあらすじです。

和泉いずみがレオナの使つかのミーコを、自分の使い魔にさがさせる』



 〇


 すーい。

 とクロは学園祭を俯瞰ふかんした。

 とり頭脳ずのうでどれほどのことが理解でき、実行にうつせるのかはわからない。が、魔術師まじゅつしと契約をかわした時点で、動物時の使つかには、あるじの力量りきりょう付随ふずいするだけの知能ちのうがあたえられる。

 きん栗色くりいろあかがねや黒、グレー、銀、白……。

 まれにあおみどり、ピンクの色をした頭髪とうはつが、ひろい前庭まえにわ奥庭おくにわで、わいわい賑っている。

 そのうえを、まるいをこらしてクロは探した。目的のものを。

 おっ。とおもうものを、いくつかみつける。

 滑空かっくうして、近づいて、「これは確かだ」と感じたものから、主人しゅじん報告ほうこくしにもどる。


 〇


 和泉いずみはクロを飛ばした場所ばしょから動かなかった。

 校舎の豪奢ごうしゃなエントランスにほど近い、高いへいのまえである。

 かろやかに上空じょうくうをすべって、からす一羽いちわやってくる。

 あまったるいコーヒーみたいな――コーヒーあめのようなにおいの魔力まりょくは、自分の使つかつねにまとっているものだ。

 とはいえ。これは和泉が普段、コーヒーを愛飲あいいんしているというわけではない。

 使い魔の持つ固有こゆうの匂いに、「主人しゅじんとなる魔術師まじゅつし魔力まりょくとおなじ波長はちょう」という以外、これといった法則ほうそく性はない。

 また、蛇足だそくだが、和泉はコーヒーよりもココアのほうがきだった。ミルクとお砂糖さとうがたっぷりの。

「かあ!」

 からすが、和泉のそばに停まる。

 だけになったつつじの花壇かだんすわって、研究手帳けんきゅうてちょうのメモを整理していた和泉は、帰ってきた烏に気がついた。

 すぐさまそらいあがった黒いとりって、彼――クロが発見はっけんしたターゲットのもとへとむかう。


 〇


 第一だいいちの「ミーコ」候補こうほは、校舎の裏手にひろがる庭園ていえんにいた。

 前庭まえにわばいはあろうかという面積めんせきに、おしみなくはな低木ていぼくを植えたこの奥庭おくにわは、その圧巻あっかんをして「花園はなぞの」もしくは「花畑はなばたけ」としょうししてもいい景勝けいしょうだ。

 通路をあるきながらてみると、養成ようせいしているのはすべ薔薇ばら科の植物しょくぶつだった。

 あかや白、黄やあおの、大小だいしょうさまざまな花を育てた薔薇ばらえんには、前庭にいたような、食べものをたのしみながらの観光客はすくない。

 ていねいに世話をされた植物に、美化びかいのちをかけたような潔癖けっぺきな空間を、人々はゆるりゆるりと散歩さんぽしながら堪能たんのうしていた。

 クロのつけたねこは、この奥庭のかたすみにいた。

 学校の生徒にたんまりとづけされているのか。でっぷりと太った成猫せいびょうである。


「こいつはちがうなあ……」

 があうなり、とら模様もようの全身の毛を逆立てて、「ふーっ!!」と警戒もあらわにうなるねこおろして、和泉いずみはつぶやいた。

 どうみても、体格からしてレオナの言った条件じょうけんとはちがう。

 ぼよよおンとたるんだぱらに、子犬こいぬほどのおおきさもある全身は、猫として「小柄こがら」とよべるものではない。

「かあ!」

 文句を言いたげにクロがいた。つばさをひとうちし、つぎの場所ばしょへと和泉をまねく。

 つぎの候補こうほも、この薔薇園ばらえんにいるらしく、クロは花畑はなばたけのうえを飛んでいった。

 和泉は花々(はなばな)をよけてかよう通路をたどっていく。

 空を横切よこぎってショートカットするクロを見失みうしなわないよう、苦心くしんしながら案内あんないにならう。



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