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鉄と真鍮でできた指環 《4》 ~魔窟のエクストリーム~  作者: とり
 第2幕 芸術の都(みやこ)にて
25/66

25:いとしのミーコ


 ・前回のあらすじです。

『プリンピンキアの学園祭がくえんさいに来た和泉いずみが、生徒のカリオストロからメイド喫茶きっさの店員・レオナのペット探しをたのまれる』





 〇


 野外やがいのメイド喫茶きっさ昼食ちゅうしょくえて、そこで出会であった【学院がくいん】の女子じょし生徒、クララ・モリス・ビー・カリオストロに、茶代ちゃだいをはらってもらった和泉いずみたちである。

 さらに和泉は、彼女かのじょの知人のペット探しのお駄賃だちんとして、前払まえばらいで二千にせんリーラ(プリンピンキアの学内がくないでのみ使える、金券きんけんの単位だ)を手にいれた。

 昼食を配膳はいぜんしてくれた、レオナというツインテールの魔術師まじゅつしに、迷子まいごになってしまった彼女の使つか特徴とくちょうを訊く。

 ぽそぽそと、控えめな調子ちょうしでレオナが伝えたところでは、使い魔は。

名前なまえはミーコっていって。ねこ――で。……とらじまの……。小柄こがらなほうで……」

 とのことだった。

 正直しょうじき、聞き取れたのは部分的で、和泉もとらえきれていないことがある。

 だがレオナはペットの心配しんぱいりつめていて、とても無理むりを言って聞き返すことはできなかった。


 はらごしらえをすませてすぐ、和泉いずみは喫茶店をあとにした。

 校舎こうしゃない画廊ギャラリーをみにいくというカリオストロと別れぎわ、レオナのペットの逃げ込みそうなところを確認する。

 と。

人気ひとけのないところですわね」

 漠然ばくぜんとした答えだけが帰ってきた。


 〇


「手がかりは、ねこでトラじまでちっこい。ってことだけか」

「そんなのその辺にいっぱいいるじゃないか……」

 カレーをたらふくったクロが、ふくれたおなかをぽんとたたいて、主人しゅじんである和泉いずみよこから指摘してきする。

 彼の言うとおり、とらがらのねこは、野良のらでいくらでもかけることができた。

 屋台のテントぐんからはなれて、洋風ようふうの白い東屋あずまやや、植木のならぶ区画に和泉たちは移っていた。

 まわりには、焼きそばやたこ焼き、わたあめなどを手にしたまつきゃくらが、めいめい噴水ふんすいまわりのベンチや、こずえの下に陣取じんどって、それぞれの食べものにぱくついている。

 和泉たちも、キャンパスをかこうへいにめぐらせた花壇かだんに腰をおちつけることにした。

魔術師まじゅつし使つかってなら、野良のらとは簡単に区別つくだろ。ラッキーなことに、オレは嗅覚きゅうかくで魔術師と契約けいやくした動物かどうかが分かるからな」


「これだけあっちこっちからにおいが出ててもわかるもんなの?」

「……。……。……」

 クロの追及ついきゅうに、和泉いずみはグウのもでない。

 よほど対象たいしょうに近づけば、かぎわけることも可能かのうだろうが。

 いろいろな方角ほうがくから、種々(しゅじゅ)雑多ざったな食べもののかおりがただようなかでは、魔法まほうの匂いとそれ以外を区別くべつするのはむずかしい。

「よーっし。じゃあクロ。おまえが先遣隊せんけんたいをつとめてくれ。そらからキャンパスをまわって、それっぽいねこを見かけたら、オレに報告ほうこくに来るんだ」

 花壇かだんあしもとにすわりこんでいたクロは、「えー」とめんどうくさそうな声をあげた。

「マスターをんでるあいだに、きっと逃げちゃうよ。すばしっこいもん、あいつら」

「なにもしないよりかは可能性かのうせいがあるだろ。……あとでチョコバナナ買ってやるからさ」

「ん~。じゃあやる」

「よしっ。えらいぞ」

 不承ふしょう不承ぶしょうくちびるを尖らせながら立ちあがる少年しょうねんに、和泉いずみはうなずいてみせた。


 クロは、使つか唯一ゆいいつそなわっている魔法まほう能力のうりょく――変化へんげじゅつを使って、人間から、もとのすがたであるハシボソガラスへと形態けいたいを変える。

 ばさり。

 和泉いずみのとなりから、クロは蒼穹そうきゅうへと飛びたった。

 使い魔のったつばさによる風が、法衣ほうえをつけていない和泉の服をあおぎ、じゅう月のつめたさを、パーカーからのぞく地肌じはだに感じさせた。


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