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鉄と真鍮でできた指環 《4》 ~魔窟のエクストリーム~  作者: とり
 第2幕 芸術の都(みやこ)にて
19/66

19:妖精(ようせい)


 ・前回のあらすじです。

和泉いずみとクロが【フィレンツォーネ】の町につく』




   〇


 フィレンツォーネのまちは、ひとことで言えば「ややこしい」つくりの街並まちなみだった。

 メインストリートにはいった瞬間しゅんかんから、天空を縦横(じゅうおう)にわたるはしが目についた。

 建物たてもの広場ひろばからのびた大・ちゅうしょうの階段をのぼって、それらのはし住民じゅうみん野良のらの動物、商売人しょうばいにんなどが往来おうらいする。

 旅行客用りょこうきゃくようのホテルは、和泉いずみたちがはいった北西門ほくせいもんからかなりおくまったところにあった。

 フィレンツォーネの、人工的に段々(だんだん)にしたまち形状けいじょうを、「ウエディング・ケーキ」とたとえたなら、和泉たちが取った宿は、その中間ちゅうかんあたり。

 三層()の【パブロ・ディエゴ・以下略いかりゃくどおり】というところにあった。

 宿をさがしているときに、小路こみちをきょろきょろしつつ「なんだよ。……『以下略・通り』って」ととおりの名前なまえに和泉が首をかしげたのは、なんらおかしなことではない。

 ほかの通行人のなかにも、ストリートの名前にくすくす笑うものはいたし、団体のツアー客らしきひとびとが、はたを持ったガイドさんの説明せつめいを聞いて、「うーむ」とうなるすがたもあった。


 宿に荷物をいた和泉いずみは、のこり『二円にえん』になった財布と使つかのクロとともに、【プリンピンキア美術魔法びじゅつまほう学校】に行くことにした。

 ロビーのホテルマンにたずねて、まちの『観光マップ』をもらい、あかペンでしるしをいれてもらいながら、銀行と学校へのわかりやすい案内あんないを受けた。

 また「そちらの法衣ほうえは、はずして行かれたほうがいいですよ」と注意ちゅういももらった。

 和泉いずみのつけている【黒い法衣ほうえ】は、美術魔法びじゅつまほう学校いわく『音系おとけい』の魔術師まじゅつし総本山そうほんざん・【学院】の制服で、ホテルマンの告げるところによれば、『画工がこう系』の魔術師は、音系の魔術師に対してつよい反発心はんぱつしんを持っている――とのこと。

 和泉も、いたずらにあいての反感はんかんを買いたくはない。

 だが魔法まほうに対する耐性たいせいを持つ法衣を、ず知らずの土地で手のとどかないところに置いておくのは抵抗があった。

 なので、あたかも「あきもののコートを持っているだけ~」のごとく腕にひっかけて、有事ゆうじさいにはいつでも装備できるよう、そなえておくことにした。


   〇


「マスター。きっとあそこだよね」

 『住宅街じゅうたくがい』と『特別学区』――ここにフィレンツォーネの学校やりょう集中しゅうちゅうしている――のさかいにあたる陸橋りっきょうをわたると、円形の広場ひろばに、ひらひら光るものが飛んでいた。

 あかや、黄色や、みどりの幻想的な燐光りんこうをまとって飛ぶそれらは、さらにむこうにある宮殿きゅうでんめいた建物たてものからきらびやかにい、空に打ちあげられた色とりどりの花火はなびとあいまって、はいるまえからあらゆる観光客をおまつり気分にしてくれる。

魔鉱石まこうせき破片はへんとかじゃないよな。ん?」

 すぐよこをとおりすぎた光を、和泉いずみおもわず二度見にどみした。

 オレンジの輝きのなかに、とんぼのはねをはやした、ちいさなかわいいおんなのすがたがあったのだ。

「よ……っ。妖精ようせい!?」

 和泉は小人こびとサイズの、その光の少女しょうじょをつかまえようと手をのばした。

 が、ゆびさきはするりと少女の身体をすりぬけて、空中くうちゅうをひっかくにわる。

 妖精らしき少女が、和泉の無作法ぶさほうに気をわるくしたらしく、振りむいて「べーっ!」と舌を出した。


 そして彼女かのじょは、ふっと消える。

「どうなってんだ……」

 あんぐりと和泉いずみはくちをあけた。クロもまた、和泉のそばで小人サイズのおじいさんをおっかけまわしている。

 おじいさんは、必死によちよち逃げている。

妖精ようせいって……にみえないんじゃなかったのか?)

 あぜんとする和泉いずみのそばを、ツアー客がとおりすぎていった。

 中高年ちゅうこうねんほどの男女だんじょ一団いちだんが、わかい女性じょせいガイドさんの誘導ゆうどうにならって、のんびりと【プリンピンキア美術魔法びじゅつまほう学校】のキャンパスに行進していく。



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