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鉄と真鍮でできた指環 《4》 ~魔窟のエクストリーム~  作者: とり
 第2幕 芸術の都(みやこ)にて
18/66

18:音系(おとけい)


 ・前回のあらすじです。

 『和泉いずみが【自衛団員じえいだんいん】に【50000円】はらう』




権力けんりょくとは……。もろいものだな」

「そりゃー持ってる人がしょぼいからねー」

 しれっ。とかえした使つか少年しょうねん――【クロ】に、和泉いずみは「んだとごるああああ!!」とつかみかかった。

 十才じゅっさいほどのおとこかおを、両手りょうてでわしづかみにする。クロのくちが、タコみたいなかたちになるように、ぐいぐい絞めあげる。

「いたいっ。いたいよーっ。マスタあ~!」

「おまえがなまいき言うからだろ」

「えーん。えーん」

 和泉に解放かいほうしてもらったものの、両目りょうめに手をあててクロはいた。

 和泉は顔をあげる。

 ふたりはまちのいりぐちに立っていた。【フィレンツォーネ】の『北西門ほくせいもん』である。

 自衛団員じえいだんいん罰則ばっそくのおかねをしはらったあと、馬車ばしゃでの移動に切り換えて、ふたりは旅行りょこうをつづけたのだった。


 かかった時間は、空での移動よりすこしおそいくらい。

 【魔法まほう関所せきしょ】(地域間をワープする魔術まじゅつが仕込まれた特殊とくしゅ施設しせつ。設置と維持いじ費用ひようが掛かるため、おおくの関所は『ふつう』のものである)をとおる路線をつかったので、予定よていよりいち時間ほどおくれての到着となった。

十二じゅうに時すぎか。……ひるめしどうする?」

 腕時計をみて、和泉いずみはクロに訊いた。クロはきやんで提案ていあんする。

「おまつりのとこで食べよーよ。あっ。そういえば『学園祭』って、どこのガッコでやってるの?」

「【プリンピンキア美術びじゅつ魔法まほう学校】だな」

 事前に「ほいっ」とノワールにわたされていたパンフレットを、ズボンのしりポケットから取り出して、和泉はにがにがしく笑った。

 ピンク色のプリンをキャラクター化したマスコットが、かわいい笑顔でのたまっている『注意ちゅうい書き』に、不穏ふおん予感よかんがしたのだ。

 『※注意ちゅうい

 【音系おとけい】の魔術師まじゅつしのかたは、入場にゅうじょうしないことをおすすめします。

 命がしければ。ふふふ……』

「って。なんじゃこりゃ?」

 この世界の【魔術師】は、一般いっぱん的に【呪文じゅもん】を媒体ばいたいにして【魔術まじゅつ】をはなつ。

 未熟みじゅくなうちや、あたらしい魔法まほうの試験のさいには、補助ほじょとして【魔法陣まほうじん】を用いるが、じゅうぶんに術者じゅつしゃが魔法をつかえるようになった時点で、魔法陣は不要ふようになる。


 この【魔法陣まほうじん】とは、もとは『音階おんかい』であったものを、『ルーン文字』をつかった理論に書きかえたものである。そのため『楽譜スコア』ともよばれている。

 魔術師まじゅつしが、魔法まほうをまんぞくに――呪文じゅもんだけで――発動はつどうできるようになるというのは、『おとなみ』と『理論』を、全身にたたきこんだ状態じょうたいのことを意味いみした。

 なのでこの世界での魔術教育まじゅつきょういくは、基本きほん的にスコアをあたまと身体になじませるために、楽器や声をつかった『音楽おんがく』の演習えんしゅうを、カリキュラムに組み込んでいる。

 そうでない学校もあるにはあるのだが、基盤きばん強化きょうか無視むししたとき、『呪文型じゅもんがた』の魔術は、中級ちゅうきゅう上級じょうきゅうの技の習得しゅうとくだんちがいにむずかしくなる。

 和泉いずみがふだん使用(しよう)し、かつ熟知じゅくちしている【魔術】のたいはんが、この『おと系』とパンフレットに書いてある魔術である。

 逆にそれ以外の魔術については、【魔鉱石まこうせき】という特殊とくしゅな石や、【魔術付与エンチャントメント】をほどこした【魔法道具マジックアイテム】をつかう以外、よく知らない。

(音系って……。呪文をつかう魔術のことだよな? それを敵視てきししてるってことは……【美術びじゅつ系魔術】って、じゃあ。どうやって魔法発動(はつどう)させてるんだよ)

 よもやみんながみんな、『無詠唱むえいしょう』で魔法がつかえるわけでもあるまい。

「マスター。はやくー!」

「ああ……。とりあえず荷物にもつおいてからに行こうか」


 和泉いずみは考えるのをやめた。

 魔法まほう絨毯じゅうたんいてくくりつけたトランクをかかえて、かってにさきに行っていたクロにかってあるいていく。


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