16:ららら空のたび
・前回のあらすじです。
『和泉とクロが、【魔法の絨毯】に乗って【フィレンツォーネ】に旅立つ』
〇
びゅーん。
と【魔法の絨毯】はきげんよく飛んだ。運転手の和泉と、その【使い魔】のクロをのせて。
【学院】のある山岳地帯を、いともたやすく飛び越えて、丘をすぎ、ふもとの【トリス】市もひとっとびして、平野部へとふたりをはこぶ。
「おーっ。らくちん、らくちん!」
歓声をあげて、和泉は先頭で身をのりだした。
十メートルしたに、みどりの草原がひろがっている。
一迅の風になった気持ちで、和泉たちは広大な原っぱの上空を通りすぎていく。街道を闊歩する乗合馬車に、「ごくろーさん」と手を振る。
「マスター。いまからいくフィレンツォーネってさあ」
「ああ。このはやさでいけば、二時間もありゃつくだろうよ」
魔法の絨毯は、【表】の世界でいうところの『乗用車』なみのはやさで翔けた。『高速道路』ではなく、一般道を走るくらいの時速。
クロは主人のへんじに不服そうだった。
魔法の絨毯が、下方で『関所』を越え、べつの領地にはいる。
「じゃなくってさー。飛行……」
ぴぴーっ!!
クロが言いかけたとき、甲高いホイッスルの音が鳴った。
ただでさえ耳にひびく笛の音が、【魔術付与】によっていっそう巨大に【拡声】されている。
「そこの絨毯、止まりなさい!」
空の旅を最前列で謳歌していた和泉は、したから飛んでくる声と、ふたつのひとかげにぎょっとした。
どちらも、すそのながいブルーの制服をはためかせている。
それに、服とおなじ色の制帽。
この土地を守る【自衛団】だ。
※一部の表現をなおしました。
・旧→『空の旅を最前列で謳歌して(中略)。どちらも、すその長い、グリーンの制服をはためかせている。(以下略)』
・改→『空の旅を最前列で謳歌して(中略)。どちらも、すその長い、ブルーの制服をはためかせている。(以下略)』