10:対価
・前回のあらすじです。
『ノワールが【悪魔】について補足する』
(『魂を喰う』、ねえ……)
古風な記録によると、『悪魔は契約した魔術師のねがいをなんでもかなえるかわりに、【対価】として術師自身の魂を要求した』という。
また、悪魔にとられた魂は、『死後彼らのもとで、永久にドレイとして使役されつづける』――。
らしい。
【表】の文献には、『悪魔の住む地獄へとつれていかれて……』というような表記もみられるが、和泉たちの住むこの世界こそが、【表】の住人にいわせてみれば『地獄』だった。ということだろうか。
(永遠にこきつかわれるのもいやだけど、食べられるのもいやだなあ)
つきなみな感想をうかべつつ、表情をにがくして、和泉は「たはは」と笑った。
まあ。【悪魔の召喚】なんてだいそれたこと、彼には無縁なのかもしれないが。
(ってゆーか。ひとの魂なんか喰ってどうするんだ? うまいのかな?)
もっとくわしく聞きたくて、ノワールを見る。
彼女は彼を知らんぷりした。
「はなしの腰折っちゃったわね。ごめんなさいシロちゃん」
「いいですよ。で――。どこまではなしましたっけ?」
「美術学校で、近々悪魔が召喚されるんじゃないかってとこ」
「あ――。で。ですねえ」
ノワールのとなりにすわっていたシロは頬をかいた。
ここからが本題であるらしい。