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契約その92 遊戯!晴夢学園School Festival!

「お前を楽しませるゲームだと……?」


 ユニは戦慄する。


 ユニは、体育祭の時の「メフィスト」との戦いを思い出す。


 あの時は、誘拐と爆弾騒ぎの二本立てだった。


 まさかまたアレをやるというのか。


「何でおれ達がお前の遊びに付き合わなくちゃならねェ」


 ユニが言う。


「そうやって、もし断ったらどうなるか、わかりますよね?」


「メフィスト」がにっこりと笑いながら言う。だが目元は笑っていない。


「おれ達に選択肢はねェと、そう言いてェのか」


「ええ勿論。あなたにとって、自分の彼女を傷つけられる事は、自分が傷つくより耐え難い筈……。人間にしては聡明な、あなたならわかる筈です」


 彼女達を人質にされては、ユニは従うしかなかった。


「わかったよ。お前の遊びに付き合ってやる」


「うふふ……『契約成立』ですね……」


「メフィスト」は、ユニの髪をむしろうとする。


「ちょっと待て」


 ユニはその手を阻んだ。


「『契約』という事は、お前もおれの願いを叶えなくちゃならないだろ。『お前のゲームに参加する』事が契約の代償だとするなら」


 ユニの指摘を聞いた「メフィスト」は、しばらく考えてから言った。


「確かにそうですね。では私からの代償は、『私のゲームに参加して()()()』としましょう」


「わかった。じゃあおれの願いは、『その代償を払い次第、二度とおれとその彼女達に関わらない事』だ」


「うふふ……改めて、『契約成立』ですね……」


「メフィスト」はそう言うと、ユニの髪をむしって、口に含んだ。


「本当は一方的な契約で縛ろうと思いましたが、やはりうまくいかなかった様ですね」


「メフィスト」はぼやいたが、まだ余裕そうだった。


「しかし、一日目の文化祭はもう終わり……ゲームは二日目としましょう。私も準備をしなければならないので」


「わかったよ」


 とっとと去れというジェスチャーをするユニ。「メフィスト」は、ではごきげんようと言いながら去っていった。


 ユニ達の前から去った後、「メフィスト」はユニ達を惑わすある細工を施すのだった。


「晴夢祭」の一日目は、こうして盛大に幕を閉じた。


 宣伝効果もあってか、ユニ達のクラスは売り上げで二位に躍り出た。最優秀賞にも手が届く立場である。


 一日目が終わってからは、クラスごとに集まってミーティングをする。


 ユニ達のクラスは、より宣伝を活発にしていくという事になった。


 全てが終わってから、ユニは改めてクラスメイトの彼女達に「メフィスト」の事を話した。


「『メフィスト』……また懲りずに来たのか……」


 ルーシーは神妙な顔つきで呟いた。


「そうなんだ。それに、まだあいつの言う『ゲーム』が何なのかわからない。もしかしたら文化祭関係なく襲ってくるかもな」


 ユニが言う。


「でも、勝ったらもう二度とこんな事が起きる事もなくなるんでしょ?」


 七海が確認する。


「ああ。そういう契約だ。それに、一応対策もしている。情報は力だっていうだろ?」


 ユニはウインクしてみせた。


 それからしばらく経って、「メフィスト」は自分のお尻に何かがくっついている事に気づいた。


 外してみると、それは小さなご飯粒の様な盗聴器だった。


「まったく。()()()()()()呼ぶなんて、お粗末ですね」


「メフィスト」は、それを指で呆気なく潰したのだった。



 翌日。ユニ達は「メフィスト」に、二日目の準備で忙しい時間帯に呼び出された。


「さあ教えて貰おうか。お前の『ゲーム』の内容を」


 ユニは「メフィスト」に詰め寄る。


「はい。ゲームの内容は、『隠れ鬼』です」


「隠れ鬼……」


 ユニ達は復唱する。


「あなた方が鬼として、私を捕まえるゲームです。あなた達の勝利条件は三十秒間私を捕える事……二日目開始のチャイムがなった時が開始です」


「メフィスト」は一方的にルールを話す。


「じゃあさ……開始までずっとあいつを取り抑えておけばいいんじゃないの?そのまま三十秒持ち堪えれば私達の勝ちだし」


 ルーシーが言う。


 確かにその通りだ。ルーシーならば、「メフィスト」を三十秒間取り押さえておく事も容易だろう。


 だがその意見に、「メフィスト」はこう反論した。


「残念ながら、それは反則というものです。だって現時点では『ゲーム』はまだ始まってませんから」


 それも一理ある。


「二日目が終わるまでに、私を捕まえてみてくださいね」


 そう言って去っていく「メフィスト」を、ユニ達は見ている事だけしかできなかった。


 仕方なく、ユニ達はそれぞれのクラスへと戻っていった。


 できれば二日目も彼女達と文化祭を回りたかったのだが仕方がない。


 確かに仕方ないのだが、せっかくの文化祭という時間を潰された事実に、ユニははらわたが煮えくりかえる思いだった。


「もう隠れ場所のだいたいの目星はついてんだ。許さねェ」


 ユニはふつふつと怒りが増していた。


「どこを探すの?」


 ルーシーが聞く。


「じゃあ仮に、お前が『メフィスト』だったら、一体どこに隠れる?同じ悪魔だろ。何かわかるんじゃねェのか?」


 ユニが逆に聞き返す。


「そうだね……私だったら人混みに隠れるかも。一度隠れられると時間内じゃ見つけられないでしょ」


 ルーシーが言う。


「そうかな。そんな消極的な事、あいつがやるかな」


 ユニは懐疑的だ。


 時刻は八時五十九分。「晴夢祭」二日目開始まであと一分である。


 彼女達には、シフトがない限りはなるべく校舎内各場所に散って貰った。なるべく数の利を生かしたいからである。 


「これより、『晴夢祭』二日目を開始致します」


 アナウンスが鳴る。


「よーしじゃあ早速……」


 早速駆け出そうとするルーシーの腕を、ユニは強く掴んだ。


「ユニ?一体何をしてんの?今すぐあいつを捕まえに行かないと」


 動揺しながら返すルーシー。


 そんな彼女に、ユニは毅然と言い放つ。


「何をって……()()()()()()()『メフィスト』を」


「!?」


 言葉にならない驚きをするルーシー。


 ユニはにやりと笑って言う。


「なあルーシー。お前が『メフィスト』なんだろ?」


 悪魔との契約条項 第九十二条

悪魔は、人間を一方的な契約で縛る事が可能である。しかし、その行為は魔界ではタブー視されている。

読んで下さりありがとうございます。

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