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契約その9 部活動のtrainingをしよう!

 ようやく選手五人とマネージャー一人が揃ったユニ達「女子総合陸上部」は、早速グラウンドに集まった。


「これがユニフォームか。これ何て言うんだっけ。セパレート?お腹が空いてるな。水着みたい」


 ユニが思い思いの感想を述べる。


「女子は基本的にそのタイプなの。いずれ慣れるよ」


 そう言いながら屈伸運動をする七海。その度に長いポニーテールが揺れる。


「まずは準備運動から!ケガしない事が第一だから」


 それぞれで準備体操をしていくみんな。そこで、ユニはある事に気づき、七海に聞いてみた。


「そういやさ、この部活の顧問ってどうなってんだ?まったく顔出さないけど」


「あー()()()ね……」


 七海が呆れた様な顔をする。何か不都合があるというのだろうか。


「あの人?」


「たまたまどこの部活の顧問もやってなかった先生に、『せめて形だけでも』って頼んで顧問に就任してくれたっきり顔出してないの。今も形式上は『女子総合陸上部』の顧問って事になってるけど、たぶん関わらないんじゃないかな」


 あーそういう事か……とユニは納得した。だからあいつらが野放しにされてたのか。


「準備体操は終わった?まず確認なんだけど、私達が出場するのは『団体リレー』!ルールは……まあ説明しなくてもわかると思うけど……まあまずは50m走ってみようか。個人の足の速さも見てみたいし」


 七海はそう言うと、マネージャーの由理にストップウォッチを手渡す。


 まずは七海だ。


 ユニが合図をする。


「位置についてー!よーい……ドン!」


 やはり七海は速かった。月並みな表現だが、まるで地面を滑っている様だった。


 七海は、7.1というタイムでゴールを切ったのだった。


「へーすごい。やるな」


 ユニは素直に賞賛した。


「ありがとう。でも全然ダメだ。せめて七秒は切らないと」


 七海曰く、大会には六秒代を出す選手が大勢いるらしい。今回出場するのは団体リレーで、個人で走るのとは勝手が違う。


 とはいえ、個人の走力もやはり大事なのである。


 続いて、ユニ、アキ、アゲハが走っていく。


「すごいや。みんな七秒前半。初めてでこれはみんな才能あるんじゃない?」


 七海も素直に賞賛した。


「いやーそれ程でも……」


 口ではそう言っているものの、三人はホメられたのを素直に喜んでいた。


「じゃあ最後は……」


 ルーシーである。さっきから屈伸運動をしていてやる気は十分な様だ。


「よーし!()()出すぞ!」


「ちょっと待った!」


 そんなルーシーに、ユニが待ったをかける。そのままユニに遠くへ連行されるルーシー。ユニはルーシーにこそこそ話す。


「全力って一体()()()()全力なんだ?悪魔の?それとも人間の?」


「悪魔の方だ」


 きっぱりと言い放つルーシーに、ユニは呆れながら言う。


「それってどれぐらいのスピードなんだ?」


「そうだな……。だいたいマッハ4くらい?」


 それを聞いたユニは呆れ果てながら言った。


「それってmig-25(世界最速のジェット戦闘機)より速いじゃねェか。グラウンドで死者出す気か!?絶対ダメだよ!人間の規格に合わせる努力をしないと」


「わ……わかったよ……」


 そこまで言われては、ルーシーは従う他なかった。


 話が終わると、二人はみんなの元へ帰ってきた。


「一体何の話をしてきたの?」


 七海が聞く。


「いやー何と言うか……()()()()()()アドバイスをしてきた」


 ユニは頭を掻きながら言うのだった。


「では気を取り直して!位置について!よーい……ドン!」


 そのユニの合図で走り出すルーシー。ちゃんと人間に合わせてきてる様だ。そのタイムは6.5をマークした。


「速っ!日本記録に肉薄してんじゃん!どっかで陸上やってた?」


 現時点では何も知らない七海が聞いた。


「あーいやまあ……種族の違いというか何と言うか……」


 ルーシーは、何とも歯切れの悪い理由で誤魔化すのだった。


 みんなのタイムを測っている最中に、七海は走る順番を決めていた様だ。


「じゃあとりあえず私(七海)→アゲハ→アキ→ユニ→ルーシー(アンカー)っていう順番にしようか」


 そしてみんなでバトンパスの練習をする事になった。


「いい?バトンパスを制する者はリレーを制するって言われてるの。世界陸上において、日本が唯一強いって言われてる競技って何か知ってる?」


 ユニは知っていたが、あえて言わなかった。


「そう。リレーなんだ。つまり個々の走力では劣っていても、バトンパス次第でいくらでも逆転できるって事!時間もないし、今回はバトンパスを重点的に練習していこうと思いますっ!」


 成程、理に適った練習方法である。大会まで時間がない以上、練習メニューを一つに絞る事は、何らおかしな事ではない。


 七海は話を続ける。


「バトンパスには予めゾーンが決められているんだ。『こっからここまでの所ならバトンパスしてもいいですよ』っていうラインなの」


 みんなは早速バトンパスの練習を始める事にした。


「いい?渡す方は受け取る方にとって受け取りやすい位置にバトンを持っていくんだ。受け取った方は持ち変えて、また次が受け取りやすい様にする。それがリレーの必勝法だ」


 七海のアドバイスは非常にわかりやすい。そのお陰で、各々が有意義な時間を過ごす事ができたのだった。


 しばらくして休憩の時間に入る。木陰で休んでいるユニに、ルーシーは自動販売機で買ってきた水をユニの頬に当てた。


「わっ冷たっ!」


「へへっお疲れ様」


 ルーシーは歯を見せて笑った。


「こちらこそ。それにアンカーっていう大役だけど、大丈夫か?」


 ユニが心配して聞く。


「別にプレッシャーはないかな。何せこっちは千年生きてるんだから。『できなかったらどうしよう』なんて考えなくてもいいんだ。人生はやり直せる」


「そうか……杞憂だったな。ありがとう」


 ユニはそう言いながら、渡された水をぐいっと飲むのだった。半分くらいがなくなった。


「それにさ……」


 ルーシーが言う。


「お前……()()はしなくてもよかったのか?きっと今までの問題を全てクリアできたはずだ……」


 ルーシーの瞳が妖しく光る。久しぶりに見た表情である。


「それは代償があるだろ」


「おれがホレた女に……代償なんか取らねェよ」


 そんな事ありなのかとユニは思った。


「それにさ、七海は頑張ってんだ。それを邪魔しろって言うのか?」


 ユニは少し怒った。


「わかってるよ。冗談だ、冗談」


 ルーシーは、そんなユニを慌てて宥めたのだった。


「休憩終わり!練習を再開するよ!」


 七海の声かけが聞こえたので、二人はその元へ駆け出していった。


 その後もバトンパスを重点的に練習するユニ達「女子総合陸上部」。


 その成長も著しく、どんどん戦えるレベルにまで成長していくのだった。


 かくしてついに決戦の日。市内の総合グラウンド場を訪れる六人。部の存亡をかけた戦いが、いよいよ始まる。


 悪魔との契約条項 第九条

悪魔側が望まなければ、契約の代償を取らなくてもよい。

ただし、そんな事は普通あり得ない。

読んで下さりありがとうございます。

いいね、感想などをよろしくお願い致します。


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