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契約その81 luckyのその先へ……!

 銃で撃たれてしまったユニは、どうにかしてその銃撃を防いだものの、チラシに足を取られて仰向けに転倒、そのまま気絶する事になってしまった。


 そのあまりの突然さに、現場には一瞬静寂が訪れたが、やがて自分の有利を察した男が笑い出す。


「ハハハハハ!かっこつけておいてこのザマか!マヌケめ。どうやら運はこっちの味方らしいな」


 男は、ユニに向けて銃を構えた。よく見てみると、それはあまりに素人感丸出しの挙動であった。


だが、ユニの身に危険が及んでいるのは間違いない。


「ダメだ!殺される!私の友達が!」


 ミズキは己の不幸を嘆いた。



 ミズキの運は、他人に伝搬する。萌絵がご利益を貰えたのも、そのミズキの幸運が萌絵に伝搬したからである。


だがそれは、「不運」もまた然りであった。



 ミズキは、"ラックチェッカー"を確認する。画面上には、「大吉」と書かれていた。


「これの、この状況の、一体どこが大吉だって言うの?今私の友達が殺されそうになってるっていうのに!」


 その時、かつてユニが言っていた言葉が、ミズキの脳裏に蘇ってきた。


「おれはさ、『幸運』も『不運』も全部心の持ち様だと思ってる」


 本当に?今の状況を「幸運」と取るか、「不運」と取るかは全て自分自身って事?


 気絶した友達が、今まさに銀行強盗に殺されそうになっている。


 これは間違いなく「不運」だ。


 では「幸運」と取るなら?


 ミズキは、男から脅威だと思われていない。自分に一番近い所にいる人間なのに。


 つまり、自分が上手くやれば、ユニを救う事も可能なのでは?


 もう、悩んでいる時間はなかった。


 ミズキはいきなり立ち上がると、男へ向かっていく。


「うわあああ!」


そして雄叫びを上げながら自分の足を思い切り振り上げ、男の股間を蹴り上げた。


「!………!!」


 不意に大ダメージを受けた男は、言葉にならない悲鳴を上げた後、銃を取り落としてうずくまる。


 ミズキは、それを見逃さなかった。


 銃を男の手の届かない場所へ蹴り飛ばすと、全体重をかけて男に馬乗りになる。


「みんなー!抑えてー!」


 ミズキは叫ぶ。


 その声に動かされた人質達は、一人、また一人と男を抑えにかかった。


 数人から押さえつけられた男は、瞬く間に動けなくなった。


「ぐっ……くそォ……」


 そうしてただ呟くばかりであった。


 銀行が占拠されてからここまで、わずか十分にも満たない時間だった。


 人質達が男を完全に取り押さえてから、パトカーのサイレンが聞こえてきた。


 やはり銀行員の誰かが「緊急通報ボタン」を押していたらしい。


 銀行強盗グループの男達は、駆けつけた警察官達に難なく逮捕され、こうして事件はスピード解決を迎えたのだった。


 この事件で唯一の負傷者となったユニは、すぐに病院へ搬送された。事件を聞きつけ、彼女達も病院へ駆けつける。


「ユニー!無事か!?」


 そう言いながら、ルーシーが病室に飛び込んできた。


「ああ、何とかな」


 ユニは、頭に包帯を巻いた姿で彼女達を迎えた。

 検査の結果、幸いにも後遺症などは残らないらしい。


詳細な検査をする為に数日は入院する必要はあるが。


「それで、事件の報道とかはどうなってるんだ?」


 ユニが聞く。


「えっとねー」


 アゲハが自分のスマホを見て確認した。


「とりあえずSNSのトレンドには上がってるっぽい。でもさすがに人質達の名前とかは公表されてない感じかな」


「成程な……」


 この事件の唯一の負傷者であるユニに、記者の一人も来ない事が何よりの証拠である。


「でも銀行の前とかは野次馬やマスコミがやって来てて、すごい事になっているみたい。ほら」


 アゲハがスマホのニュース画面を見せる。


確かに、野次馬やカメラやマイクを構えたマスコミが銀行前の道路にまで出てきているのがわかる。


さっきまで自分らがいた場所とは思えない程だ。社会的関心が高い証拠である。


「とにかく、退院するまで安静な」


 そうルーシーは言い聞かせるのだった。


 入院期間はすぐに終わった。


 晴れて退院したユニは、すぐに把羅神社を訪れる。


 そこでは、いつもの様にミズキが掃き掃除をしていた。


「こんにちは」


「うん。こんにちは」


 ユニはミズキの近くまで行くと、こう言った。


「ありがとう。殺されそうになったおれを、キミが助けてくれたんだろ?」


「こちらこそ。あなたの言葉が、私を奮い立たせてくれたから」


 ミズキは、"ラックチェッカー"を外しながら言う。


「それ……もういらねェか」


「運を測ってくれるなんてウソなんでしょ。わかるよ。幸運も不幸も、その人によって決まるものだもん。そんな簡単に測れるわけがない」


 その通りである。


「だから、紫音に返してあげて」


 ミズキは、ユニの手に"ラックチェッカー"を握らせ、その勢いのままその唇へ……キスをした。


「!?」


 あまりの突然の出来事に、ユニは"ラックチェッカー"を落としてしまう。


「でもね、ただ一つ、確信を持って『幸運』だって言える事があるの」


 キスを終え、ミズキは唇を離して言った。


「それは、あなたと出会えた事。あなたのお陰で、私は一歩踏み出せる。だから……」


 最後のその一言をミズキはゆっくりと、噛み締める様に言う。


「私と、付き合ってください」


 ユニの答えは、勿論イエスであった。



「えー!一緒に住まないの?」


 晴れてミズキが彼女になった事、そして自分達とは違って瀬楠家には住まない事に、先輩彼女達は驚いた。


「だって、神社の事があるし。神社を守るなら敷地内の家に住んだ方が都合いいしね」


 瀬楠家を訪れたミズキが言う。


「そっか……残念」


 彼女達は肩を落とした。


「でも、時たま遊びに来るし。泊まるし。だから大丈夫だよ」


 ミズキが言う。


「だからみんな、これからよろしくお願いします!」


 巫女らしく、ミズキは丁寧なお辞儀をするのだった。


 悪魔との契約条項 第八十一条

少なくとも、愛する人と出会える事は、幸運である。

読んで下さりありがとうございます。

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