契約その78 私はunlucky girl?
ミズキが、初日からわざわざ目立つ様な事をやったのには、当然わけがある。
それは、神社における信者増加の狙いがあったからである。
しかしそれは、ミズキ自身が決めたというわけではない。
日本における神道の、さらに言えば宗教自体の信者は年々減っている。
それを重く見たミズキの両親は、信者の獲得を自分の娘に求めた。
つまり本当は目立ちたくないけど、仕方なく目立つ様なマネをして信者を獲得しようと画策したのである。
実際つかみはよかったらしく、転入生というもの珍しさもあってか、ミズキの席の周りには多くのクラスメイトが多数やってくる様になった。
「巫女さんなの本当なの?」
「キツネとかにはならないの?」
「どうしてそんなに運がいいの?」
ミズキはその質問の一つ一つに真摯に答えていったが、次第に追いつかなくなってきて、トイレに行ってくるという名目でその場を後にした。
トイレに行く最中、ある少女がミズキに話しかけてきた。
「昨日ぶりだな」
ユニである。
ユニは、今日の転入生が昨日神社で会った少女だった事に気づいていた。
だから親睦の意味も兼ねて、ユニはミズキに話しかけたのである。
「昨日ぶり……?あっ……」
ミズキもようやくユニの事を思い出した様だ。
「昨日ウチの神社に来てくれた人でしょ?わざわざありがとう」
ミズキは丁寧に礼を言う。
「いやいや、構わないよ」
「いやむしろ!お礼を言うのはこっちの方でありますっ!」
萌絵が会話に入ってきた。
「把羅神社でお祈りした結果、目当てのグッズを引き当てる事ができましたからね!」
神社を出た二人は、その後近所のコンビニで一番くじを引いた。
その結果今回の目的である一番いいA賞に加えてラストワン賞も手に入れる事ができ、まさに大勝利といった形になったのである。
その結果を、神社にお祈りしたからだと思った萌絵は、学校からの帰りに神社へお礼を言いに行こうとした。
しかし、いきなり転入生としてその神社で働いていた巫女さんが学校に来た事に驚き、一言お礼を言おうとしたのである。
「まさかこんなに早くご利益があるとは思わなかったでござる。ありがとうございます!」
萌絵はそう言いながら深く頭を下げた。
「いえいえ、別に私がご利益を与えたわけではないですし……」
口ではそう言っているが、ミズキは自分の運が影響を与えた事を知っていた。
どこかの宗教家が「信じる者は救われる」と言っていたが、まさにその通りである。
「だからお礼を兼ねて……」
放課後。萌絵はユニと一緒に「把羅神社」を訪れた。
生憎他の彼女達は予定が取れなかったが、よろしく言っておいてくれとの事である。
奥には樹齢千五百年とも言われる「大カヤの木」が植えられている。
確実な資料を見ても、千三百年前の奈良時代まで遡る事ができる大木で、国の重要文化財にも指定されている。
一説には、把羅神社が建立されたのも、この木を守る為だとされている。
「八百万の神がいる」とされている日本においては、この大木も神様なのである。
二人は、どうしても手伝うって言うのなら……と廊下の雑巾がけを命じられた。
「ほらこうやって、バケツの水で雑巾を濡らしてこの廊下を雑巾がけしてほしいんだ。五往復でいいから」
ミズキはそう言い残すと、境内の掃き掃除をしに外へ出て行った。
その後ろ姿を見送り、萌絵が聞く。
「そういえば、ユニさんは何で拙者の『恩返し』に参加してくださったのでござるか?」
ユニはバケツに雑巾を浸けながら言う。
「彼女達の喜びが、おれの喜びだからさ。みんなが幸せになるのが一番いいんだ」
ユニは、雑巾がけするぞ!と言うと、萌絵を急かした。
その様子を、ミズキは箒で掃きながら聞いているのだった。
数時間後、拭き掃除と掃き掃除は終わった。
外はもう真っ暗になっている。秋になって日が落ちるのが早くなった様である。
「今日は助かったよ。ありがとう」
礼を言うミズキに、萌絵は恩返しのつもりだから大丈夫だと言う。
「じゃあね。また明日学校で」
「うん。また明日」
「また明日ー!」
去っていく二人の後ろ姿を、ミズキは見えなくなるまで見送った。
もっとも外は暗がりで、見えなくなるのにそう長く時間はかからなかったが。
「瀬楠ユニちゃんか……」
例によって、淡い恋心がミズキの中に宿ったのだった。
翌日。ミズキは学校に遅刻した。
「寝坊した」
「何か事件に巻き込まれた」
「人助けをしていた」
などの様々な憶測がクラスの中で飛び交っていた。
その本人がようやく現れたのは、実に二時間目になってからだった。
「すみませーん……」
現れたミズキに、クラスのみんなは絶句した。
ミズキが全身泥だらけで、頭や肩にかけて白いペンキがかかっている、変わり果てた姿だったからである。
「一体どうしてそんな姿に……」
ユニが聞く。
「まず車に泥を浴びせられて、その後に塗装業者のペンキを被せられて、ハトのフンをニ、三発浴びて……」
彼女が語ったのは、実に凄惨な旅路だった。
それを聞いたクラスメイト達は、ミズキに心からどう
「どうやら運の埋め合わせが起こったみたいです……」
ミズキは、今にも泣き出しそうな声で言うのだった。
悪魔との契約条項 第七十八条
どんな幸運にも、必ず埋め合わせが起こる。
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