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契約その71 キミはpresident以前に一人の女の子だ!

 定期テストを終えた翌日の土曜日。どれみは早朝から、自分の部屋でパソコンの前に座って定例会議に臨んでいた。


「では、定例会議を終わりにします。何か質問がございましたらよろしくお願い致します」


 特に質問はなかったので、定例会議は終わった。


 リモートの定例会議を終え、どれみは最後に部屋を出た。


「やはり、財亜グループの崩壊は日本経済に大きな影響を与えましたね……」


 財亜グループはトップの死亡に加えて各ハラスメントや詐欺行為、賄賂といった数々の不祥事によって、客と株主離れを起こした結果解体された。


 火殿グループと共に日本経済の双璧を成した財亜グループの崩壊は、国内外から日本経済に深刻なダメージを負わせると推測されていた。


 しかし、元財亜グループ傘下の企業を火殿グループが吸収した事で、その混乱は最小限に抑えられた。


 不祥事に関わったとされる一部の重役の解雇ないし降格、左遷は行われたものの、そのほとんどが財亜グループ時代と変わらず業務を続けていける事になった。


 結果的には火殿グループが財亜グループを乗っ取るという形になり、その結果火殿グループの権力はより強くなった。


 しかしそれは、火殿グループの人間として複数の会社の社長や代表取締役、筆頭株主を務めるどれみの負担が大きく増す事にもつながったのである。


 リモート会議が終わろうが、どれみの仕事は終わらない。


 資金繰りや経営計画の立案など、まだまだやるべき事はたくさんあるのである。


「わたくしが……やらなければ……皆さんの生活を守る為にも!」


 その時、突然どれみの視界がぼやける。


「あら?」


 反応する間もなく、どれみはそのまま横に倒れてしまうのだった。



 目を覚ますと、どれみは自分のベッドに横になっていた。


「よかった……気がついたんだな」


 枕元ではユニが風呂桶とタオルを用意していた。


「あ……わたくし一体何を……」


 どれみが起き上がると、おでこに乗せられていた濡れたミニタオルが布団の上に落ちた。


「わー!まだ寝てなきゃダメだよ」


 慌ててユニはどれみを抱き抱え、ゆっくりとまたベッドに寝かせた。


「タオルよりも冷えピタの方がいいかな?」


 ユニの質問に対して、どれみはそっちの方がいいと答える。


 ユニは、そばに置いてある体温計で体温を測る様に言うとどれみの体に響かない様に、走らずゆっくりと歩いて冷えピタを取りに行った。


 一旦一人になったどれみは、体温計を脇に挟んだ後、この状況を熱でぼーっとした頭で考え始める。


 どうやら自分は過労で倒れてしまった様である。


 どれみはふと枕元の置き時計を見る。時刻はすでに十六時を回っていた。


 ユニは冷えピタを持って再び部屋に戻ってきた。


 そのタイミングで体温計から計測完了の音が鳴ったので、ユニは脇から体温計を取り出した。


 体温計はデジタル表記で三十七度九分を表示した。


「軽い微熱でよかったな。いやよくはなかったな。ごめん」


 ここまでの一連の作業を、ユニは一人でやっていた。他の彼女達はみんな予定があって忙しいのである。


 こうしてどれみが倒れた事も知らないはずである。


「何で……こんな事になりましたの?」


 ハァ……ハァ……とどれみは荒く呼吸しながらユニに聞いた。


「朝ごはんにいくら呼んでも来ないから何事かと思って来てみたらさ、キミが倒れているのを発見したんだ。だからとりあえずキミをベッドに寝かせて……悪いとは思ったけどパジャマにも着替えさせて……それで今まで看病してたってわけ」


 体に響かない様に、ユニはゆっくりと小さな声で説明した。 

「とりあえず会社にはおれが連絡しておいた。風邪で少し休むと」


 それを聞いたどれみは、慌てて自分のスマホを取り出すと、会社に電話をかけようとする。


 そのスマホを、ユニは取り上げながら言う。


「ダメだよ。ちゃんと寝てなきゃ。会社の人も言ってたぞ。どれみは自分達の負担を減らす為に何でもかんでも自分でやろうとしてたって。今日ぐらいはしっかりと寝ないと。もっと自分を大切にしないと。頑張るのはいいけど、頑張りすぎるのはよくない。社長以前に一人の女の子なんだから」


 それを聞いたどれみは、再びベッドに寝転がる。


 ユニはどれみに布団をかけてやった。


「何か食べないとな。じゃあおかゆ作ってくるよ。インスタントだけど」


 ユニはそう言い残すと、部屋を出ていった。


 今日ぐらいは、甘えてもいいって事?


 熱で働かない頭を必死に働かせ、どれみはそんな結論に至った。


 しばらくして、ユニがおかゆを持って戻ってきた。


「インスタントでも意外と難しいモンだな。ハハ……。自分で食べられるか?それとも食べさせようか?」


「食べさせてくださいませ……」


 どれみは弱々しく言った。


 ユニはスプーンで少なめに掬ったおかゆを、どれみの口に持っていく。


 それを何回か繰り返し、一時間程かかって完食した。


「食器洗ってくるから安静にな」


 ユニはそう言い残すと、再び部屋を出ていった。


「頑張りすぎるのはよくない」


 また一人になったどれみの頭の中に、ユニのその言葉がよぎる。自分が頑張りすぎた事で、結局はユニや社員に迷惑をかけてしまったのである。


 自分は、もっと休んだ方がいいのかも知れないと思いながら、どれみはそのまま深い眠りに落ちていったのだった。


 その翌日。どれみは再び体温を測った。三十六度台の平熱が出る。


「よし、回復したな」


「ご迷惑をおかけしましたわ」


 どれみはユニに頭を下げた。


「いいさ、気にするな」


 ユニはグッとサムズアップして見せた。


 そんなユニに、どれみは聞く。


「今日は早めに仕事を終わらせますので……甘えさせて下さいませんか?」


 その言葉に、ユニは驚いた様な顔をしたが、その後すぐに快諾した。


 そして数時間後。自分で言った通り早めに仕事を終えたどれみは、ユニの部屋を訪れる。


 病み上がりだからと、社員達が一部の仕事を引き受けてくれた事も幸いした。


 ベッドの上に座って待っていたユニの隣に、どれみもまた座る。


「ふふ……よろしくお願いしますね」


 大きく頷くユニに、どれみはユニに寄っかかりながら言うのだった。


 悪魔との契約条項 第七十一条

例えば悪魔の体調が不調に陥れば、契約の効果も不全に陥る。

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