契約その64 ユニのobstacle race!
「メフィスト」による爆弾騒ぎは終わりを迎え、ようやく元の体育祭が帰ってきた。
しかし、休憩時間中拘束されていたルーシーは、休憩時間が終わる中、慌てて由理特製の弁当を食べていた。
「本当はちゃんと味わって食べたいのに!」
ルーシーの「メフィスト」に対する恨みは、更に増していくのだった。
午後の部一番最初の種目は、全体種目の綱引きである。
これはルーシーがいる以上ユニ達白組の圧勝であった。おそらくルーシー一人でも勝てただろう。
「腹ごなしの準備運動にはちょうどよかったかな……」
どうやら本人はまだ暴れ足りない様だ。
そしてその次は全体リレー。高校生のみの競技である。まあこれもルーシーが無双したお陰で圧勝だったわけだが。
「張り合いなくてつまらんな」
やはり少し「悪魔の力」を使っている様だった。
その後もダンスやそれぞれの個人種目などが行われ、体育祭は熱狂のまま続いていった。
点差も、白組が徐々に追い上げている様だ。
そしていよいよユニの出番がやって来た。
個人種目に参加する生徒は、出場種目の二つ前の種目、遅くとも一つ前の種目の時には入場門の前にいる事を求められる。
ユニは一応三つ前の種目の時に行動を開始したのだった。
そうこうしている内に、いよいよユニの出場種目が始まる。
「お!ユニが出て来たぞ」
ユニを含む出場者達は、堂々とした行進で所定の位置に来ると、その場で座る。
その直後、放送部によるアナウンスがなされた。
「これより、『借り物障害物競争』を始めます」
「借り物障害物競争」とは、その名の通り「借り物競走」と「障害物競走」を融合させた競技である。
跳び箱や麻袋、網潜り、飴食いなど、途中までは普通の障害物競走だが、最後が借り物競走になる。
「借り物」といっても、例えば「野球部の人」や「メガネをかけている人」などそれぞれのお題に沿った人を連れてくる事が求められる(「カメラ」などの「もの」が求められる事も多々ある)。
だいたい五人一組で走り、その中から順位が決まるのである。
ユニは最後のグループとして走る事になっていた。
ユニより前のグループが続々と走り出し、いよいよユニの番となった。
「位置について!よ〜い!」
「ドン!」という重い音と共にピストルが空に向けて放たれ、いよいよユニのレースが始まった。
最初は麻袋に入って飛び跳ねて移動する競技である。
さすがに悪魔程ではないにせよ身体能力が優れているユニは、他を圧倒する速さを見せつける。
「白組!速いです!」
放送席の実況が、ユニ本人の耳にも届いていた。
続く跳び箱も軽やかに跳び、網潜りも難なくクリアするユニ。
続いてスプーンにピンポン玉を乗せて運ぶスプーンリレーのゾーンに入る。
ユニはこの様なバランス系はあまり得意ではないのだが、これまで稼いだアドバンテージを生かして、ここまで一着でクリアしていた。
そして飴食いに入る。これも例によって、トレイに敷き詰められた小麦粉から飴を探すというものである。
ちなみに衛生上、小麦粉はその都度変えているらしい。
ユニは粉に顔を埋める事には抵抗があったが、意を決して顔を突っ込む。
十数秒程格闘した後、何とか飴を発見した。
飴を発見したユニの顔を見た瞬間、選手席の男子がなぜか色めき立っていた事を、ユニは忘れない。
ここでも一位をキープしていたユニは、いよいよ最後の関門である借り物競走に入る。
テーブルに置いた裏返しにしてあるカードの中から、たまたま進行方向にあったものを取り、表に返して内容を確認した。
「な……何じゃこりゃあ〜!」
その内容を見たユニは、思わず叫んでしまう。
その内容とは、「Gカップ以上の女子生徒」というものだった。
「一体どこの誰がこんなお題を考えたんだ!?」
文句を言っても仕方がない。目下の問題は、これをどう探すべきかという点である。
こんな公衆の面前で、「Gカップ以上の女の子はいますかー!」と叫ぶのか。誰も名乗り出ないだろう。
ではどうすればいいのか……。悩むユニの隣を、飴食いをクリアした生徒達が追い越していく。
もう時間がない。彼女達に頼み込めば何とか……そう考えたユニは、選手席に行こうとした。その時である。
ユニはカードに小さい文字が書かれている事に気づいた。
そこには「自分がお題に該当するなら、自分を"借り物"としてもよい」と書かれていた。
「……」
ユニはそのまま何も借りずに一着でゴールした。
ゴールしたユニには、当然審議が入る。ユニは黙ってカードを提示した。
「だってこう書いてあるだろ?『自分を"借り物"にしてもいい』って!あるんだよおれは!Gカップ!」
それを見たある女子生徒がユニに話しかけてくる。借り物障害物競走のスタッフである。
その女子生徒は、ユニの胸を唸りながらまじまじと見つめる。
そして目をギラっと輝かせたと思うと、「えいやっ」と自分の両手をユニの胸へと伸ばした。
「うわっ!?一体何を!?」
その女子生徒は、ユニの胸を揉む手を緩めずに決定を下す。
「むー、モミの観察眼によりますと……、これは確かにありますね。OKです!ゴールを認めます!」
こうしてユニは、一着でのゴールが認められた。
認められたのはいいが、スタッフの女子生徒は、なぜだか揉む手を緩めていない。
「ハァ〜♡ハッ!やめろ!もう……もういいだろ♡」
乳揉みに悶えながらユニは言う。
今まであまり経験した事のない感触であった。
そのまましばらく揉まれた後、ようやく解放されたユニは、水道で顔についた粉を落とし、ようやく選手席に戻ってきた。
「ねェ、お前のお題って何だったんだ?」
戻って来るなりユニはルーシーの質問を食らった。
ユニが何も借りずにゴールした事は、選手席から見える。
ルーシーが疑問に思うのも当然であった。
「いや、大した事ない。大した事ないから聞かないでくれ……」
ユニは赤面しながら答えた。
やがて騎馬戦も終わり、体育祭は大詰め、いよいよ最後の競技であるリレーが始まるのだった。
悪魔との契約条項 第六十四条
「契約者」は、己の願いを叶える代わりに、荊の人生を歩む運命を辿る事が多い。
読んで下さりありがとうございます。
いいね、感想などをよろしくお願い致します。




