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契約その57 真夏のhomework!

 八月も下旬に入り、夏休みもそろそろ終わりが近づいてきた。


 夏休みが終われば、こうしてみんなで集まって朝食を食べられる時間も取れなくなるだろう。


 だから、こんななるべくみんなが揃う時間をくいなく過ごそうとユニは思っていた。


 ……思っていたのはいいものの、ユニはある事が気になったので、朝食の時にみんなに聞いてみる事にした。


「夏休みに遊びまくるのはいいんだけどさ、キミ達宿題は大丈夫なの?」


 一瞬、一部の娘の箸が止まった。


「え?まさかやってないって事は……」


「忘れてたー!」


 七海、アゲハ、藤香の三人が頭を抱えて叫ぶのだった。


「というわけで、今から全員の宿題の進捗を聞くわけだが……聞くまでもない者もいるみたいだな」


 ユニは三人の方を見る。夏バテを疑う程に、三人の顔には生気がなかった。


「あの……大丈夫?」


 ユニの問いかけに、三人はただ力なく首を横に振った。


「手もつけてない!」


「ワークのニ、三ページ程なら……」


「ワークだけは終わった」


 口々に言い合う三人。


「大丈夫?終わる目処ついてるの?


 ユニが聞いた。


「大丈夫なわけないだろ!」


「だからこうして慌ててるんじゃん!」


 心に余裕がないからか、語気が強い。


「わかったわかった。じゃあ宿題を持ち寄ってみんなでやろう」


 そうユニは提案した。


 数十分後、ユニ達は宿題を持ち寄ってリビングに集合した。

 ユニと紫音は手ぶらだった。


「もう終わってるの!?」


「一体どんな手を!?」


 全員、特に三人に問い詰められる二人。


 その答えは、


「毎日コツコツとやってたら八月上旬には終わった」


「中学生の夏休みの宿題なぞ七月中には終わらせられる」


 というものだった。


 七月も八月上旬もすでに過ぎてしまった彼女らにとっては、まったくもって役に立たない情報である。


「じゃあ、三人はとりあえずおいといて、みんなの宿題の進捗を聞いていこうか」


 ユニが言った。


「おれは二週間入院してたな」


「私はアイドル活動で」


 それぞれ免除して貰えると答えるのはルーシーとルアである。


 ルーシーはともかく、ルアは時間を見つけてやっていたとの事だった。


 そしてまだ大きなものが残っているというグループ。


 由理、アキ、どれみ、メイの四人である。


 四人とも「作文」だと答えた。


 そして前述の「まったくやってないグループ」の三人である。


 こうしてユニ達は四つのグループに分けられた。


「ホラホラ、おれ達も手伝うからやるぞ!」


 ユニはやってないグループの尻を叩くのだった。


 晴夢高校の夏休みの宿題は以下の通りである。


 国数英理社のワークが十ページ程、あとは読書感想文かレポート(自由研究)、そして小論文のいずれかを書く事になっている。


 調べものが多いレポートを選ぶ者は少ない。


 だがユニと紫音はそのレポートを選んだらしい。


「まあわし達は調べ物得意じゃし……」


 紫音が言った。


 かくして、お互いのグループに分かれて宿題をやる事になった。


「おれはどのグループに入ればいいんだ?」


 ルーシーがユニに聞く。


「免除されるって言ってもある程度はやらないといけないだろ? だから『やってないグループ』に入れて貰うといい」


 ユニがアドバイスをする。


 そのやってない組は、五教科を手分けしてやり、後で移して貰うという形を取ったらしい。


「作文だけグループ」は、さすがに写して貰うわけにはいかないので、個人でやるらしい。


「どれみは何の本の感想文を書くんだ?」


 アキが聞く。


「経済評論家による学術書ですわ。タイトルは『AIの発展により消滅する職業について』。それに対するわたくし自身の考えを述べようと思いますの」


「あ、そうか……うん……」


 微妙な反応をするアキ。


 面白そうなタイトルなら本を貸して貰おうと考えていたアキだが、諦めた。


「私の貸そうか?」


 由理は、「源氏物語」の「若菜」を差し出した。


「『源氏物語』か……」


 読んだ事はなかったが、どれみの本よりはマシに思えた。


「わかった。借りるよ。ありがとう」



 アキには、由理が救いの女神に見えたのだった。


「頼むルーシー!私達と契約してくれェ!」


「やってないグループ」では、追い詰められた三人がルーシーに契約を求めていた。


「ダメだ。おれの『悪魔の力』はまだ回復し切ってないんだから!契約には『悪魔の力』が必要なんだぞ」


 ルーシーが断った。


「そんなあ……」


 肩を落とす三人。


「それに、高校の夏休みの宿題なんかに使うものでもないんだから。地道にやるしかないよな」


 ルーシーが言う。


「でもまあ、確かにアメは必要だよな……」


 その様子を見ていたユニは、決心した。


「わかった!じゃあ宿題終わったらおれの事()()()()()()()()()……頑張ってくれ!」


 一瞬、みんなのペンが止まる。


「好きにしていい?」


 それを聞いたみんなは一心不乱に宿題を始めた。


「現金じゃな」


 紫音が呆れる様に言った。


 だが、それはそれとして、紫音が不満そうに言う。


「わしに権利ないじゃないか」


 みんなに呆れつつも、結局紫音もその権利が欲しい様である。


 そんな紫音に、ユニが言う。


「もう終わってんなら自由にできるだろ」


 それを聞いた紫音は、早速紫音はルーシーに飛びかかったのだった。


「手加減ナシだな!?」


 しかしユニも、紫音の全てを受け入れるのだった。



 そしてやって来た夏休み最終日、全員が何とか夏休みの宿題を終わらせたのだった。


「まさか本当に終わらせるとは……ルーシーも含めて」


 目の前に出された宿題を見ながら、ユニは驚く。


「じゃあ、決まってるよな?約束だ」


 ルーシーが言う。


「うん!」


 全員が笑顔で返す。


「あ、やっぱり?」


 ユニは、自分の発言を少し後悔したが遅かった。


 目を爛々と輝かせながら、一斉にユニに襲いかかる彼女達。


 ユニはその日一日中、彼女達に好きにされるのだった。



 ユニ達の一年目の夏休みは、こうして幕を閉じた。


 悪魔との契約条項 第五十七条

悪魔との契約には、「悪魔の力」が必要である。「悪魔の力」がなければ、契約はできない。

読んで下さりありがとうございます。

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